第1622回 チャンピオンズリーグ グループリーグ中盤戦(2) ズラタン・イブラヒモビッチの活躍でグループ首位に
一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■ポルトガルリーグを追うフランスリーグ
ライバルのマルセイユがドイツのボルシア・ドルトムントに0-3と敗れた翌日にパリサンジェルマンはポルトガルのベンフィカをパルク・デ・プランスに迎える。マルセイユの敗戦をパリサンジェルマンのファンが喜び、逆にマルセイユのファンはパリサンジェルマンの敗戦を祈るという構図を想像される読者の方は少なくないと思われるが、必ずしもそうではない。マルセイユのチャンピオンズリーグでの成績はUEFAインデックスと言われるフランスリーグのランキングに影響する。このランキングが落ちるとフランスリーグからのチャンピオンズリーグへの出場チーム数や参戦するステージが決まってくる。欧州5大リーグの末席だったフランスリーグだが、現在はポルトガルリーグに抜かれて6位の座にある。したがってこのパリサンジェルマン-ベンフィカ戦は単にグループCの首位争いというだけではなく、フランスリーグとポルトガルリーグの5位争いという点からも注目のカードである。
■本拠地の欧州カップ戦では24戦負け知らずのパリサンジェルマン
チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグという欧州カップのホームゲームでは滅法強いパリサンジェルマン、2006年11月23日にイスラエルのハポエル・テルアビブに負けたのが最後で、以後15勝9分という24試合負けなしという戦績を誇っている。この中には2011年3月17日にヨーロッパリーグで対戦したベンフィカ戦(1-1の引き分け)も含まれているが、その時はポルトガル人のファンがパルク・デ・プランスに大挙し、さながらルッス競技場がパリに出現したようになった。今回もまた多くのポルトガル人のファンがパルク・デ・プランスに詰めかけたが、ベンフィカのファンの希望は開始早々に消え去った。
■全3得点に絡んだ主将ズラタン・イブラヒモビッチ
開始早々から攻め込んだパリサンジェルマンは5分にペナルティエリア内にいたグレゴリー・ファンデルビールがマルコ・ベラッティからパスを受ける。このパスをファンデルビールがファーサイドのズラタン・イブラヒモビッチにパスし、イブラヒモビッチが左足で無人のゴールにゴールを決める。試合は一方的な展開となり、パリサンジェルマンのボール支配率は70%を超える。パリサンジェルマンの2点目もイブラヒモビッチがからむ。25分にコーナーキックのこぼれ球を左サイドのイブラヒモビッチがベラッティにヒールキックでパス、ブレーズ・マツイディがゴール前につなぎ、最後に得点を決めたのは今季コリンチャンスから移籍してきたブラジル代表の19歳のマルキーニョスであった。
そして、30分には試合を決定づける3点目が入る。右からのCKをチアゴ・モッタが蹴り、ファーサイドにいたイブラヒモビッチがヘディングでベンフィカ守備陣に競り勝ち、ゴールを決めたのである。この日のパリサンジェルマンは通常ならば主将を務めるチアゴ・シウバが負傷のため欠場しており、代わりに主将を務めたイブラヒモビッチが大活躍した。
一方のベンフィカは注目のセルビア代表の21歳のフィリップ・ジュリチッチが全く振るわず、攻撃を組み立てることができなかった。ジョルジュ・ヘスース監督は開始早々にジュリチッチをベンチに下げるが、状況は全く変わらなかった。
■冴えわたるパリサンジェルマンのパスワーク
パリサンジェルマンはこの試合で812本のパスを決める。対するベンフィカのパスはわずか291本である。パリサンジェルマンはパス成功率90%という高い成功率で812本のパスを90分間に記録したわけであるが、過去10年間のチャンピオンズリーグではこれ以上の数字は2012年10月23日のバルセロナ(スペイン)がセルチック・クラスゴー(スコットランド)戦で記録した886本だけである。パリサンジェルマンはゴールシーンだけではなく華麗なパスワークの光った試合で、ベンフィカを3-0と下して、グループCのトップに立ったのである。(続く)