第1981回 ヨーロッパリーグ、フランス勢は初戦で敗退 (2) 第1戦は辛勝となったサンテチエンヌ
5年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■ノルウェー代表を欠くサンテチエンヌ
2月18日19時、サンテチエンヌは本拠地ジョフロワ・ギシャールにスイスのバーゼルを迎えた。サンテチエンヌにとってヨーロッパリーグの決勝トーナメントは7年ぶりのこととなる。7年前はギリシャのオリンピアコスに敗れている。
リーグ戦で4位につけるサンテチエンヌであるが、このヨーロッパリーグではベストメンバーを組むことができない。ノルウェー代表のアレクサンダー・セダールンドは貴重な得点源であるが、シーズン中にノルウェーのローゼンボリから移籍してきた。ローゼンボリではヨーロッパリーグに出場したため、規定によりサンテチエンヌではヨーロッパリーグに出場できない。またMFのオレ・セルナエスも同様である。サンテチエンヌは1トップにノーラン・ルーを配置する。
■注目の19歳、バーゼルのブレール・エンボロ
一方のバーゼル、グループリーグまでのアウエーゲームでは4勝1分と無敗である。今季のスイスリーグは終了しているが、最優秀選手に選出されたのが19歳のブレール・エンボロである。カメルーン生まれで6歳の時にスイスに移住、16歳でプロとしてデビュー、すでにスイス国籍を取得し、スイス代表でも7試合に出場しており、今年の欧州選手権では注目すべき若手である。このサンテチエンヌで試合をする可能性もあり、下見を兼ねて初顔見世である。
■2点のリードを追い付かれたサンテチエンヌ、ジャン・クリストフ・バエベックが決勝点
2万7000人の観衆の中には隣国のバーゼルからやってきたファンも少なくない。先手を取ったのはサンテチエンヌであった。9分にウサマ・タナーネのFKを主将のムスタファ・バヤルがヘディングで押し込む。さらに39分にはルノー・コアドのCKを今度はケビン・モネ・ピケがヘディングでゴール、サンテチエンヌはセットプレーからヘディングで2点を奪い、2点をリードした。
しかし、前半終了間際にはエンボロからのパスをサミュエルが決めて1点差に迫り、後半の序盤の56分にはPKを得て、ジャンコが決めて追いつく。サンテチエンヌが勝ち越しを決めたのは77分、ジャン・クリストフ・バエベックがバーゼルの主将のマレック・スシーのディフェンスをかいくぐってゴールを決めた。サンテチエンヌは後半のロスタイムにも決定機があったが、追加点はならず、結局3-2で勝利した。サンテチエンヌはセットプレーの守備がこの試合でも課題であり、1点差の勝利は翌週のバーゼルでの戦いに不安を残した。
■名将マルセロ・ビエルサが率いたアスレティック・ビルバオとマルセイユ
このジェフロワ・ギシャールでの試合終了後、21時5分からマルセイユのベロドロームでマルセイユ-アスレティック・ビルバオ戦が行われた。マルセイユの監督はスペイン人のミッチェルであるが、今季が始まるまではアルゼンチン人の名将マルセロ・ビエルサが務めていた。ビエルサは結局1シーズン限りの指揮であったが、ビエルサがマルセイユの前には2011年から2013年までの2季、アスレティック・ビルバオの監督を務めている。ビエルサのアスレティック・ビルバオ就任決定はちょうど2010年ワールドカップの後であり、日本代表の監督の候補となったことから、日本の皆様もよくご存じであろう。
アスレティック・ビルバオで、ビエルサは就任1年目はリーグ戦では10位と前年の6位から順位を下げたが、前回の本連載でも紹介した通りヨーロッパリーグでは決勝に進出している。また国内カップ戦である国王杯でも準優勝をしている。2年目はリーグ戦12位、ヨーロッパリーグはグループリーグ敗退と精彩を欠き、2年でビルバオの地を去ったが、このチームに与えた影響は大きい。そしてビエルサの後任のスペイン人のエルネスト・バルベルデは以前にもこのクラブの監督を務めており、監督としてのキャリアをこのクラブでスタートさせている。
変人というニックネームのあるビエルサ、マルセイユでもアスレティック・ビルバオでもファンからは愛され、クラブとは関係が良くないという点で共通していた。
そのビエルサを前監督に抱く両チームの対決は興味深い。(続く)