第2059回 欧州の舞台を目指すフランス勢(4) リール、ガバラ相手に第1戦は痛恨のドロー
平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。
■リーグ5位のリールは予備戦3回戦でガバラと対戦
前回の本連載までは昨季のフランスリーグ3位でチャンピオンズリーグの予備戦3回戦から参戦したモナコが、トルコのフェネルバフチェ、スペインのビジャレアルを下して本戦に出場したことを紹介したが、今回からヨーロッパリーグを目指すフランス勢を紹介しよう。ヨーロッパリーグにフランスから本戦に直接出場できるのはリーグ4位のニースだけである。リーグ5位のリール、6位のサンテチエンヌはいずれも予備戦3回戦から戦わなくてはならない。
リーグ5位のリールは予備戦3回戦でアゼルバイジャンのガバラとの対戦となる。ガバラは3年連続でアゼルバイジャンリーグの3位となり、昨季は予備戦3回戦、プレーオフを勝ち抜いてヨーロッパリーグの本戦に出場し、香川真司が所属するドイツのボルシア・ドルトムントとも対戦していることから日本の皆様もよくご存じのチームであろう。
■アゼルバイジャンのロマン・アブラヒモビッチと言われるテール・ヘイダロフ
このチームで最も注目を集めているのは選手でも監督でもなく、会長である。このクラブの会長を務めるのは若干31歳のテール・ヘイダロフである。危機管理大臣の息子であり、LSE 、ロンドン大学経済学部で学ぶ。現在は欧州アゼルバイジャン協会の会長である。この協会はアゼルバイジャンの存在を欧州に知らしめることであり、ヘイダロフのリーダーシップのもとに運営されている。また資源大国として台頭してきたアゼルバイジャンの財力をもとにスポーツの世界に資金を投じている。ヘイダロフはガバラの会長となり、設備を充実させ、チームを強化し、アゼルバイジャンのロマン・アブラヒモビッチと呼ばれているのである。
会長就任直後にはイングランドのアーセナルの選手、監督として活躍したトニー・アダムスを監督と招聘した。スタジアムは5000人収容と小ぶりであるが練習施設、中でも若手育成の施設に投資した。人的な投資と言えば、現在名古屋グランパスエイトのアシスタントコーチのステンレイ・ブラードの前職はこのガバラの育成担当であり、オランダのフェイエノールトでの実績を買われてガバラに移籍している。
現在の監督はウクライナ人のロマン・グリゴルチャウクであり、予備戦1回戦と2回戦を勝ち抜き、リールに挑戦する。ガバラの強みは攻撃陣であり、リベリア代表のテオ・ウィークとフランスの2部リーグのクリテイユに所属していたバガリー・ダボの2人が頼みの綱である。
■4年ぶりに試合を行うリール・メトロポール競技場
リールはシーズン開幕時が苦手であり、前回の本連載で紹介したとおり、一昨年もチャンピオンズリーグのプレーオフでポルトに敗退している。リールは第1戦を7月28日に本拠地で行う。ここで得点差をつけて勝利しておきたいところである。
さて、会場であるが、欧州選手権で数々の熱戦の舞台となったピエール・モーロワ競技場は7月23日にリアーナがコンサートを行い、芝の状態が十分ではないため、リールは本来の本拠地ではなく、以前使用していたリール・メトロポール競技場を使用することになった。2012年5月20日以来4年ぶりに故郷での試合となった。リールがピエール・モーロワに移転した後も継続的に地域の各種のスポーツに使用されていたため、維持管理がいきわたった状態で国際試合を開催することになった。
■試合を支配するがドローに終わったリール
欧州選手権のヒーローとなったポルトガル代表のエデルはまだ休養中であり、メンバーから外れている。試合は13分にガバラが先制点を奪う。リールは試合を優勢に進め、次々とシュートを放つが、ゴールネットを揺らしたのは後半立ち上がりの47分にカーポベルデ代表のライアン・メンデスが放ったシュートのみである。前半途中から出場したヤシン・ベンジアの動きは良かったが勝ち越し点を奪うことができず、リールはホームの第1戦で1-1のドローで第2戦を迎えることになったのである。(続く)