第2138回 ゴールラッシュの続く第1戦 (2) ズラタン・イブラヒモビッチ、サンテチエンヌ相手にハットトリック
6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■敵味方に分かれたポールとフローランタンのポグバ兄弟
前回の本連載ではヨーロッパリーグの決勝トーナメント1回戦でリヨンがオランダのAZアルクマールに4-1と大勝したことを紹介したが、今回はその直後に行われたサンテチエンヌとマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)の戦いについて紹介しよう。
サンテチエンヌとリヨンが特別なライバル関係であることは前回の本連載で紹介したとおりであるが、対戦相手のマンチェスター・ユナイテッドとの因縁も少なからず存在する。
まず、フランス代表には不可欠な存在であるポール・ポグバがマンチェスター・ユナイテッドに所属しているが、ポール・ポグバの兄フローランタン・ポグバはサンテチエンヌに所属している。
ポグバ家は3人兄弟であり、フローランタンとマティアスは双子で26歳、ポールが23歳である。両親はギニア人であり、フローランタンとマティアスはギニア生まれであるが、ポールはフランス生まれである。3兄弟はフランスで育ち、ロワシー・アン・ブリというクラブでキャリアをスタートさせたが、優秀な選手として国内外のクラブに移籍することになり、フローランタンはスペインのセルタ・ビゴ、フランスに戻りスダン、そして2013年からはサンテチエンヌに所属しており、ギニア代表として活躍している。
ポールは2007年にルアーブルと契約、2009年にはマンチェスター・ユナイテッド、2012年にはイタリアのユベントスに移籍し、今季からまたマンチェスター・ユナイテッドに戻っている。なお、マティアスもオランダのスパルタ・ロッテルダムに所属し、ギニア代表経験者であるが、卓球のフランスの年代別のチャンピオンという変わった経歴も持つ。
■サンテチエンヌ相手に14得点を奪っているズラタン・イブラヒモビッチ
そしてマンチェスター・ユナイテッドの攻撃陣の中心は昨季までパリサンジェルマンに所属していたズラタン・イブラヒモビッチである。本連載の読者の皆様であれば近年の国内カップ戦でパリサンジェルマンとサンテチエンヌが数多く対戦したという印象をお持ちであろう。これまでに欧州のビッグクラブを渡り歩き、ゴールを量産したイブラヒモビッチであるが、自身のキャリアの中で最も多くのゴールを奪った相手がサンテチエンヌであり、13試合で14ゴールをあげている。そして今でもサンテチエンヌのゴールを守るステファン・ルフィエは4年前にイブラヒモビッチからキックの洗礼を浴びている。サンテチエンヌはユニフォームの色を赤に代えたイブラヒモビッチを完封したいところである。
■先制点はイブラヒモビッチのFK
マンチェスターのオールドトラフォード、これまで幾多の名勝負の舞台となったが、ポグバ兄弟の初めての対戦となった。イブラヒモビッチのキックオフで始まった試合は立ち上がりからマンチェスター・ユナイテッドのペースとなる。14分にはイブラヒモビッチがファウルを受け、ゴール前20メートルの地点でFKを得る。イブラヒモビッチ自身が蹴り、ボールは直接ゴールに吸い込まれ、マンチェスター・ユナイテッドが先手を取る。一方のサンテチエンヌも負けじと好機を作るが得点をあげることなく、1点のビハインドでエンドが代わる。
■後半も続いたイブラヒモビッチ劇場
後半に入って49分にイブラヒモビッチがヘディングで追加点か、と思われたが、サンテチエンヌはオフサイドに救われる。75分にはクロスボールをイブラヒモビッチが角度のないところからシュートし、マンチェスター・ユナイテッドはリードを広げる。87分位はペナルティエリア内でボールをキープしていたイブラヒモビッチがサンテチエンヌの守備陣に倒されてPKとなる。イブラヒモビッチはPKを決めてハットトリック達成。お得意様のサンテチエンヌから通算で17得点を奪った。
前半に好機を逃し続けたサンテチエンヌは後半は沈黙、3点差を追ってジェフロワ・ギシャールでの戦いに臨むのである。(続く)