第2167回 リヨンも準決勝に進出 (3) アウエーでのPK戦を制したリヨン

 6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■1部リーグの5チームがひしめくイスタンブール

 試合終盤の2ゴールでトルコのベシクタシュに逆転したリヨンは翌週の4月20日にはイスタンブールに乗り込む。イスタンブールにはトルコの1部リーグに相当するスーパーリーグに所属するチームがベシクタシュ、ガラタサライ、フェネルバフチェ、カスムパシャ、バシャクシェヒルと5チームある。1部リーグにこれだけの数のチームが集積しているのは欧州ではイングランドのロンドンくらいであろう。さらにガラタサライ、フェネルバフチェはチャンピオンズリーグの常連である。そしてサッカー熱も熱い都市である。過度な興奮がリヨンでの事件を起こしたわけである。

■来季の欧州カップは出場停止となった両チーム

 UEFAはリヨンでの事件を重く見て、リヨンとベシクタシュの両チームは来季の欧州カップへの出場権を剥奪することを決定した。事件のきっかけを作ったのはベシクタシュのサポーターであるが、リヨン側も緩衝地帯の幅など不十分な警備体制を指摘され、両チームに対する措置となった。残念なことであるが今世紀に入ってから欧州カップで起こった最大の事件に対する措置は妥当であろう。イスタンブールの第2戦も会場であるボーダフォンアリーナでは警察の過重な警備がなされたが、会場の外ではチケットを入手できなかったサポーターが発煙筒をたいて騒ぐという始末である。

■ベシクタシュが先制、リヨンが追い付き、ベシクタシュが勝ち越す

 このベクシタシュは変わった世界記録を有している。それはスタジアムの声援の音量である。2013年5月に行われたリーグ戦のゲンチレルビルリイ戦で141デシベルという数値を記録している。この日も4万2000人の観衆のほとんどはベシクタシュのサポーターである。欧州各地に移民としてネットワークを広げているトルコ人は特にドイツを中心とする西側の主要都市ではどの試合もホームゲームにしてしまうが、やはり真のホームでの戦いはまた別である。
 ブラック・イーグルスというニックネームを持つベシクタシュは黒いユニフォーム、リヨンは赤いユニフォームでのこの一戦に臨むが、試合はファンが期待した展開となった。勝利が必要なベクシタシュは立ち上がりから果敢に攻める。CFのジェンク・トスンが2分と5分にシュートを放つが、リヨンのGKのアントニー・ロペスがストップする。しかし、満員のファンの声援に支えられたベクシタシュが先制点を決める。27分に主将のオウズハン・エジヤクプのパスを第1戦ではアシストを記録したタリスカが得点に結びつける。この時点でベシクタシュがリードしたが、試合時間は1時間以上残っている。次の得点はその7分後に記録された。リヨンも主将のマキシム・ゴナロンがアレクサンドル・ラカゼットにパスを供給、ラカゼットがきれいなゴールを決めてリヨンは追いつくとともに、今度はリヨンが優位に立つ。
 試合は後半に入り、パスをつなぐリヨンが優位にゲームを支配するが、58分に再びタリスカがゴールを決める。これで両者はスコアの上では互角となる。ただし、圧倒的な声量の応援に支えられて戦うベシクタシュは精神的に優位な状況にある。ラカゼットが終了間際に惜しいシュートを外し、試合は延長戦に入る。両者譲らず、PK戦での決着となった。

■プレッシャーの中で苦手のPK戦を制したリヨン

 リヨンはPK戦が苦手であり、今季もリーグカップでギャンガンに敗れている。さらにボーダフォンスタジアムの大声援がリヨンのメンバーには大きなプレッシャーとなる。先蹴のベシクタシュもリヨンも5人目まで全員成功させ、サドンデスとなった。6人目は両チーム成功したが、ベシクタシュの7人目をロペスがストップ、リヨンにチャンスが訪れる。ところがクリストフ・ジャレは緊張したのか、ボールはバーの上を通過してしまう。ここで精神力の強さを見せたのがロペスである。ロペスは8人目も見事にストップ、再びリヨンにチャンスが訪れた。このチャンスにペナルティスポットにボールを置いたのがゴナロンである。主将は落ち着いてこのPKを成功させる。
 4年前に世界で最も声援の大きい記録を作ったベシクタシュのサポーターは沈黙し、リヨンはクラブ史上初のヨーロッパリーグ準決勝進出を決めたのである。(この項、終わり)

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