第2299回 パリサンジェルマン、第1戦を落とす(2) 過去3回の対戦は2勝2分2敗
1998年2月20日、「サッカークリック」の「フランス・サッカー実存主義」でJ.P.モアンは連載を始めました。2018年2月20日に20周年を迎えました。「サッカークリック」で92回、「スポーツナビ」で40回、そしてこの「フランス・サッカー幻想交響曲」で2299回、全部で2431回の連載を続けてこられたのは読者の皆様のおかげです。引き続きご愛読のほどよろしくお願いいたします。
■全世界の注目を集めたパリサンジェルマンとレアル・マドリッドの対戦
今季のチャンピオンズリーグ、決勝トーナメントの組み合わせはパリサンジェルマン-レアル・マドリッド(スペイン)の他にマンチェスター・シティ(イングランド)-バーゼル(スイス)、トットナム・ホットスパー(イングランド)-ユベントス(イタリア)、リバプール(イングランド)-ポルト(ポルトガル)、ベシキタス(トルコ)-バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、バルセロナ(スペイン)-チェルシー(イングランド)、ローマ(イタリア)-シャフタール・ドネツク(ウクライナ)、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)-セビリア(スペイン)が行われるが、欧州、世界のサッカーファンの注目はマドリッドでの試合に集まった。この1試合のために世界中130か国から200社のメディアが集まり、これらの関係者に発行されたIDカードは実に800枚、全世界200か国以上でこの試合は放映される。
■2015-16シーズンのチャンピオンズリーグでは1分1敗
さて、両チームの欧州カップでの対戦はこれまでに3回、6試合あり、戦績は2勝2分2敗と互角である。
もっとも近いところでは2年前のチャンピオンズリーグのグループリーグである。グループAに両チームが入ったが、この時は前年のリーグチャンピオンであったパリサンジェルマンが第1シード、バルセロナにリーグチャンピオンを譲ったレアル・マドリッドはUEFAインデックスで上位であったが第2シードに回る。両チームは順当に連勝し、第3節と第4節で対戦する。2015年10月21日にパリで行われた第3節はスコアレスドロー、11月3日にマドリッドで行われた第4節はパリサンジェルマンが6割のボール保持率、16本のシュートを浴びせたが、ナチョに決勝点を奪われ、0-1と敗れている。残りの第5節、第6節とも両チームは連勝、レアル・マドリッドは首位突破し、優勝している。一方のパリサンジェルマンは準々決勝でマンチェスター・シティに敗れている。
■連勝した1993-94シーズンのカップウィナーズカップ準々決勝
その前は1993-94シーズンのカップウィナーズカップである。準々決勝での対戦となる。まず、1994年3月3日にマドリッドで第1戦が行われ、パリサンジェルマンは今回リベリアの大統領となったジョルジュ・ウェアのゴールで先勝している。3月15日にパリで行われた第2戦はレアル・マドリッドが20分にブトラゲーニョのゴールで先制し、タイスコアとして前半を折り返す。しかしパリサンジェルマンは51分にリカルド・ゴメスの決勝点で2-1と勝利、連勝して準決勝に進んだ。
■今でも語り継がれる1992-93シーズンのUEFAカップ準々決勝の逆転劇
そして今でもファンに語り継がれているのがその前年、1992-93シーズンのUEFAカップ準々決勝での対戦である。第1戦は1993年3月2日にマドリッドで行われ、レアル・マドリッドが前半にブトラゲーニョ、イバン・サマラノのゴールで2点を先行する。後半開始早々にパリサンジェルマンはダビッド・ジノラのゴールで1点差に迫り、このまま試合終了かと思われたが、アディショナルタイムにアラン・ロッシュがペナルティエリア内でシュートを故意に手で阻止したとしてペナルティキックが与えられ、ミッチェルに決められて1-3と落としてしまう。
しかし、3月18日のパリでの第2戦でドラマが起こる。パリサンジェルマンは守りを固めたレアル・マドリッド相手に終盤までウェアのゴールだけで1-0とリードを広げられなかったが、80分を過ぎてからジノラ、バウドがゴールを決め、3-0というスコアで時計の針は90分を示す。これで勝ち抜いたかと思われた94分にレアル・マドリッドはサマラノがキックアンドラッシュから得点を決め、延長戦を覚悟した。しかし、96分にアントワン・コンブアレがヘディングシュートを決めたパリサンジェルマンは4-1で勝利、2試合合計で5-4というスコアで白い巨人との初対決を制した。シュートを決めた直後のコンブアレの写真は今でもパルク・デ・プランスの周囲の看板になっており、この試合が特別な意味を持っていることをファンは知っているのである。(続く)