第2338回 マルセイユ、ヨーロッパリーグ準優勝(8) アントワン・グリエズマンの活躍の前に完封負け

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■来季のチャンピオンズリーグ出場を決めたいマルセイユ

 スペインのアトレチコ・マドリッドとの決勝に臨むマルセイユ、5回目の欧州カップでの決勝戦となるが、これまで決勝に進出した年のリーグの成績は1991年、1993年は優勝、1999年は2位、2004年は7位、そして今季は最終節を残して4位、来季のチャンピオンズリーグの出場権のある3位のリヨンとは勝ち点で1の差である。最終節でリヨンを逆転すれば来季のチャンピオンズリーグに出場できるが、それよりも前に自力でこのヨーロッパリーグの決勝で勝利して出場権を獲得したい。
 さてリヨンでは2回目の欧州カップ決勝であるが、前回はジェルラン競技場、今回はグルーパマ競技場である。フランスと隣国スペインのチームの対戦とあって5月16日のリヨンの街は赤白の縦縞と水色のユニフォームのファンに占拠されたが、1,250人の警官が警護に当たったが、試合前には街中でこれといった混乱はなく、キックオフを迎えた。

■欧州首脳会談のためマルセイユに来られなかったエマニュエル・マクロン大統領

 スペイン国王のフェリペ六世はリヨンに駆け付けたが、アミアン生まれでマルセイユファンであるフランスのエマニュエ・マクロン大統領はブルガリアのソフィアで行われている欧州連合の首脳会談に出席しており、リヨンに駆け付けることができなかった。思えば今季のマルセイユの欧州での快進撃は昨年8月のプレーオフのドムジャレ(スロベニア)戦に向かう直前にマルセイユの練習にマクロン大統領がサプライズの訪問をしたところから始まっている。マクロン大統領にとっては無念であろう。

■アトレチコ・マドリッドのフランス人選手たち

 さて、グルーパマ競技場は55,768人の観衆で埋まった。アトレチコ・マドリッドの先発メンバーには2人のフランス人選手がいる。まず、左サイドDFのルカ・ヘルナンデス、本連載第2308回で紹介したとおり、親子二代のアトレチコ・マドリッドのユニフォームに袖を通している。スペイン代表になる可能性もあったが、3月のコロンビア、ロシアとの親善試合で代表に初招集され、出場している。そのエルナンデスはマルセイユ出身である。もう1人はアントワン・グリエズマンである。説明無用であるが、リヨンから60キロほどしか離れていないマコンの出身である。さらにベンチにはケビン・ガメイロが控え、3人のフランス代表選手が名を連ねた。

■先制点と2点目を決めたアントワン・グリエズマン

 試合は開始早々の4分にマルセイユのバレル・ジェルマンがシュートを放つ。20分を迎えるまではマルセイユが優勢に試合を進め、水色のサポーターのボルテージが上がる。しかし、そのマルセイユのファンを沈黙させたのはグリエズマンであった。正GKのスティーブ・マンダンダのフィードをマルセイユの中盤の選手がミスし、アトレチコ・マドリッドの主将のガビが奪いグリエズマンにパスを出し、グリエズマンが先制ゴールを決めた。フランス人選手は2016年のケビン・ガメイロ(スペイン、セルビア)、2017年のポール・ポグバ(イングランドマンチェスター・ユナイテッド)に続き、これで3年連続してヨーロッパカップの決勝で得点をあげている。
 30分にはマルセイユのディミトリ・パイエが負傷し、ピッチを去ってしまう。この辺りから試合の主導権は赤と白に移り、白いユニフォームのマルセイユは守勢となる。結局、前半に両チームが枠内に放ったシュートはこのグリエズマンの一撃のみ、アトレチコ・マドリッドが1点リードして後半を迎える。
 雨がちらつき始めた後半が始まって間もない49分に2点目を決めたのもグリエズマンであった。今度はコケのクロスボールを受け、GKと1対1となって冷静にシュートを決める。グリエズマンはチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグの両方の決勝で2点をあげた最初のフランス人選手となったのである。
 対するマルセイユは81分にコンスタンティノス・ミトルグルのシュートが枠に当たり、83分のヘディングシュートもアトレチコ・マドリッドのGKの好セーブにあう。
 アトレチコ・マドリッドは89分にガビが得点を奪い3-0と勝利する。19試合を戦ったマルセイユは決勝で完封負け、準優勝に終わったのである。(この項、終わり)

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