第2787回 好調リール、アヤックスに連敗(2) チャンピオンズリーグで精彩を欠いた2010年代
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■フランス第四の都市、リール
フランスの大都市というと首都のパリ、そしてリヨン、マルセイユまでは本連載のどぃ者の方ならば、順番を並べることができるが、4番目は即答できる人は少ないであろう。フランス第四の都市はリールである。リールにあるEDHECが北海道大学と提携を結んだことはよく知られている。また日本でも展開しているパンのPAULはリールの会社である。ところが、サッカーの世界ではリールは大きく出遅れている。栄枯盛衰はあるものの、パリ、リヨン、マルセイユはフランスサッカーの歴史において国内外で活躍してきた。ところがリールとなるとオランピック・リロワが最初のリーグチャンピオンになり、現在のリールOSCとなってからは欧州三大カップが誕生する前にリーグ優勝を2回しただけであり、欧州の舞台に立つこともないまま21世紀を迎えた。
■57年ぶりのリーグチャンピオンとして臨んだ2011-12シーズンは最下位
21世紀になってから欧州の舞台に立つことになり、まずまずの成績を残したことはぜ回の本連載で紹介した。そして、リーグでも上位の常連となり、ついに2010-11シーズンにはリーグで57年ぶりの優勝を果たすとともに、フランスカップでも56年ぶりに優勝、二冠を達成した。そのリールは2011-12シーズンには4度目のチャンピオンズリーグに出場する。しかし、ここからがリールにとっての試練となった。現行のルールであれば第1シードとなるが、当時の大会規定では有力国のリーグチャンピオンといっても優遇されず、第3シードとなる、そしてグループリーグでは最下位に沈んでしまう。リールがチャンピオンズリーグのグループリーグで最下位になったのはこれが最初である。
■新スタジアムで臨んだ2012-13シーズンもグループリーグで最下位
一方、このシーズンもフランスリーグで3位となり、2012-13シーズンもチャンピオンズリーグの予備戦3回戦からの参戦となり、デンマークのFCコペンハーゲンを下してグループリーグに出場する。リールにとってこのシーズンは輝かしいものになるはずであった。というのは念願の大スタジアムのピエール・モーロワ競技場が完成したからである。それまで使用していたリール・メトロポール競技場は収容人員が1万5000人しかなく、UEFA主催の欧州レベルの大会の基準には達していなかった。5万人収容のスタジアムはリールの実力に見合うものであった。しかし、リールはこの新しい本拠地で3連敗、アウエーで1勝しただけで、1勝5敗に終わり、2年連続して最下位となる。
その次に欧州の舞台を踏んだのは2014-15シーズン、チャンピオンズリーグの予備戦3回戦からの参戦となり、スイスのグラスホッパー・チューリッヒを下したものの、この年はプレーオフがあり、ポルトガルのポルトに敗れ、ヨーロッパリーグのグループリーグに転戦する。そしてここでも最下位に終わってしまう。
2016-17シーズンは前年リーグ5位としてヨーロッパリーグの予備戦3回戦に出場する。この時の監督は日本でも活躍したフレデリック・アントネッティ、しかしアゼルバイジャンのFKガバラに敗れてしまう。
■勝ち点1の惨敗に終わった2019-20シーズン
そして、惨敗ともいえるのが昨季、すなわち2019-20シーズンであろう。前年の2018-19シーズンはリーグ2位、これは2011年に二冠を達成して以来の好成績であった。リーグ2位であるからチャンピオンズリーグのグループリーグから参戦した。しかし、スペインのバレンシアにホームで引き分けただけであり、それ以外はすべて敗れ、1分5敗で勝ち点1になる。残り3チームはいずれも勝ち点を二桁記録しており、リールの弱さが際立つ結果となった。
結局、2010年代のリールは国内リーグでパリサンジェルマンに次ぐ力を持ち、チャンピオンズリーグには予備戦を含め4回出場したが、プレーオフでの敗退1回、そしてグループリーグに出場3回でいずれも最下位という結果に終わっているのである。
そして、2020年代に入った今季は、これまでの本連載で紹介してきた通り、ヨーロッパリーグのグループリーグで2位に入り、決勝トーナメントに進出したのである。リールが欧州カップで決勝トーナメントに進出するのはちょうど10年前の2010-11シーズンのヨーロッパリーグ以来のことなのである。(続く)