第3340回 マルセイユ、リールも準々決勝へ (1) マルセイユの監督を辞任し、ビジャレアルに戻ったマルセリーノ

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■準々決勝を目指すマルセイユとリール

 前回までの本連載ではチャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦でパリサンジェルマンがレアル・ソシエダに連勝し、準々決勝に進出したことを紹介した。
 今季のフランス勢はヨーロッパリーグのプレーオフでは苦戦し、マルセイユのみがベスト8決定戦に進出したが、ヨーロッパカンファレンスリーグではリールがグループリーグを首位で突破し、ベスト8決定戦に臨んだ。
 ヨーロッパリーグのプレーオフはチャンピオンズリーグのグループ3位チームとヨーロッパリーグのグループ2位チームが対戦したが、ヨーロッパリーグの2位チームが6勝2敗と圧倒した。なお、敗れた2チームはレンヌとトゥールーズのフランス勢であった。

■レンヌを押さえて首位突破したビジャレアルと対戦するマルセイユ

 ベスト8決定戦はグループリーグの1位チームとプレーオフを勝ち抜いたチームが対戦する。グループリーグの1位チームがシード扱いとなり第2戦をホームで戦う。マルセイユの相手はスペインのビジャレアル、グループFではレンヌと最終節の直接対決で勝利して首位通過を果たした。
 マルセイユとビジャレアルは欧州カップでは初めての対戦となるが、近年、夏のシーズン開幕前に2回対戦している。2018年は引き分け、2021年はマルセイユが2-1と勝利している。

■初の国外での経験となるマルセリーノ監督を招聘したマルセイユ

 しかし、両チームの最大の因縁はビジャレアルのマルセリーノ監督であろう。昨季のリーグ戦はクロアチア人のイゴール・トゥドール監督が率い、リーグ戦3位、チャンピオンズリーグはグループリーグ敗退であった。今季はそれを上回る成績を残すべく、6月にマルセリーノを監督に招聘した。マルセリーノはスペイン人、現役時代はスペインの年代別代表に選ばれたが、ビッグクラブではプレーしなかった。引退後は一貫してスペインのクラブの監督を務め、セビリア、ビジャレアル、バレンシアなどで欧州カップに出場した。そのマルセリーノが、選手、指導者として初めてスペインを離れて降り立ったのがマルセイユであった。マルセイユがスペイン人監督を招聘したのはスペイン人会長のパブロ・ロンゴリアがマルセリーノと親しかったからである。

■サポータークラブの脅迫によって監督を辞任したマルセリーノ

 マルセイユの初陣はリーグ戦の開幕前に行われたチャンピオンズリーグの予備戦3回戦、パナシナイコス(ギリシャ)戦であった。本連載の第3245回と第3246回でこの戦いについては紹介した通りであるが、アウエーの第1戦は0-1で落とす。リーグ開幕を挟んで行われたホームの第2戦は前半に2点を奪いながら、後半アディショナルタイムに1点を返され、2試合通算スコアで並ぶ。延長戦に入り、マルセイユは得点を取り消され、PK戦になり、敗れてしまう。選手としても監督としても初めてのチャンピオンズリーグに挑戦したマルセリーノの野望はシーズン開始早々に敗れてしまい、ヨーロッパリーグに転戦した。
 しかし、マルセリーノがヨーロッパリーグの試合で指揮を執ることはなかった。リーグ戦の開幕戦はスタッド・ド・ランスに勝利し、9月17日の第5節のトゥールーズ戦を終えた時点で2勝3分で4位につけており、ヨーロッパリーグのグループリーグ初戦のアヤックス(オランダ)戦を控えた9月20日に驚くべきニュースが飛び込んできた。クラブ幹部とサポータークラブの話し合いの中でサポーターが不満を爆発させ、クラブの幹部やスタッフを脅迫するような言動があった。マルセリーノ監督はこのサポータークラブの脅迫に身の危険を感じ、監督を辞任したのである。フランスでも札付きの凶暴なサポータークラブを持つマルセイユならではの事件であったが、マルセリーノは11月に古巣のビジャレアルの監督に就任する。
 11月16日のオサスナ戦が復帰初戦となり、白星でスタート、そして2試合目はヨーロッパリーグのグループリーグのパナシナイコス戦、すなわちマルセイユの監督として敗れたチームに、今度はビジャレアルの監督として再び対戦することになった。この試合で3-2と勝利し、雪辱を果たしたマルセリーノは、今度は5か月前まで指揮を執っていたチームと対戦することになったのである。(続く)

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