第153回 国内カップ戦でも不振が続くフランスの1部リーグ勢

■国内試合が目白押しの1月から2月

 本連載では昨年の暮れ以来、フランス勢が不本意な成績しか残せなかった欧州チャンピオンズリーグ(第140回から第144回)とUEFAカップ(第145回から第149回)、昨年のフランスリーグのベストイレブン(第151回から第152回)を紹介してきた。フランスリーグは年末年始休みをはさみ、1月10日に第21節が3週間ぶりに再開したが、1月から2月にかけてはクラブレベルでも代表チームレベルでも国際試合がなく、各クラブが国内の試合に集中する時期である。2月8日までの4週間の間に7試合が行われ、ほぼ毎週2試合のリーグ戦が用意されている。それ以外にもフランスカップ、リーグカップにも1部リーグのチームが登場する時期でもある。

■リーグカップ、フランスカップに1部リーグ勢が登場

 まず、カップ戦に1部リーグのチームが顔を見せたのは昨年12月7日のリーグカップのベスト16決定戦であり、フランスカップには1月4日のベスト32決定戦から1部リーグの20チームが参戦した。このところ、序盤のジャイアントキリングの続く国内カップ戦であるが、今年もその傾向は続き、リーグカップのベスト16決定戦では2部以下のチームと対戦した1部リーグのチームの成績は1勝5敗という衝撃的な成績であった。
 1月4日のフランスカップのベスト32決定戦が1部リーグのチームにとって今年初めての試合となった。1部に所属する20チームの対戦相手のレベルは様々である。1部同士の試合はわずかに1試合(マルセイユ-バスティア)で、2部相手が6試合、ナショナルリーグ相手が4試合、4部に相当するCFA相手の試合が4試合、5部に相当するCFA2相手の試合が2試合、6部に相当するDH相手の試合が2試合となった。すでに欧州カップからオセール以外のチームが脱落し、ほとんどのチームは国内のタイトルに専念するしかない状況にある。また、昨年のこの時期はアフリカ諸国の代表選手がアフリカ選手権のため、所属クラブを離れたが、今年はそのようなイベントもなく、下位リーグのチームと対戦した1部リーグの18チームは順当に勝ち進むと予想された。ところが、この年明け早々のフランスカップでもバタバタと1部リーグのチームが倒れたのである。

■1部リーグ勢が次々と倒れたフランスカップのベスト32決定戦

 2部のチームと対戦した6チームのうち、勝ったのはわずかナントとオセールの2チームのみ。モナコ、ソショー、ニース、モンペリエの4チームは2部のチームに足元をすくわれている。特にニースは今季リーグの上位に常に位置しており、リーグ再開後はマルセイユをかわしてトップに立っている。メッス相手にPK戦で敗れるとは誰も予想していなかったであろう。
 ナショナルリーグのチームとの対戦ではパリサンジェルマン、ルアーブル、レンヌが勝ったものの、スダンがPK戦の末、マルティーグに敗れた。衝撃を与えたのは4部リーグに相当し、アマチュアであるCFAに所属するチームとの4試合である。アジャクシオ、ランスは勝ったものの、なんとリヨンとストラスブールが負けてしまった。リヨンは昨年のリーグ覇者であり、今季も欧州チャンピオンズリーグ、UEFAカップで活躍してきている強豪チームである。そのチームがリブルン・サンスーランに敗れたことは大きな衝撃を与えた。また、ストラスブールもリヨン近郊のブール・ペロナスに0-1で敗れている。ストラスブールが、チームの立て直しと収益の確保のために日本人選手の獲得に走ったことは言うまでもなく、市川大祐をテストしていることは日本の皆様ならばよくご存知のことであろう。
 さらに5部リーグに相当するCFA2に所属するチームとの対戦でも、ボルドーは勝ったものの、トロワがストラスブールの近くにあるシルティグハイムに1-3と完敗を喫する。さすがに6部に相当するDHに所属するチームと対戦したリールとガンガンは順当に勝ったものの、結局2部以下のチームと対戦した1部18チームの戦績は10勝8敗と散々な成績であった。1部20チームのうち、1部同士の対決で勝ったマルセイユを加えた11チームしかベスト32に残らなかった。

■「フランスカップのスペシャリスト」の存在

 このような結果を見て、国内のトップである1部リーグのふがいなさが露呈したことは事実であるが、その一方、下位リーグに「フランスカップのスペシャリスト」というチームが存在するのも特徴であろう。例えば、ストラスブールを倒したブール・ペロナスはベスト32決定戦に進出するのはこれが10回目で、1998年にはベスト8にも進出したことがある。また昨シーズンの覇者で、フランス代表選手を揃えたリヨンを倒したリブルン・サンスーランは昨年もベスト32決定戦でリール、ベスト16決定戦でメッスと1部リーグのチームを連破している。ベスト8決定戦では2部のシャトールーを下し、準々決勝で準優勝したバスティアに敗れるまで快進撃を続けたのである。このような「フランスカップのスペシャリスト」が下位のリーグにも点在し、大会を盛り上げている。日本では天皇杯への注目度が落ちて久しいと言う。オープン方式で行われるこのようなカップ戦で、トップリーグ所属チーム以外に大会を盛り上げるチームが存在しないことは、致命的な現象であろう。(この項、終わり)

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