第280回 フランスカップ本格化(1) 劇的勝利で発進したマルセイユとパリサンジェルマン
■ジャイアントキリングの起こりやすいベスト32決定戦
前回の本連載では年末年始の中断期間を経てフランスリーグが再開したことをレポートしたが、正確には今年初めての試合は前々回の連載でファビアン・バルテスの活躍を紹介したとおり1月3日と4日に行われたフランスカップのベスト32決定戦である。
フランスカップは12月中旬に行われた8回戦から2部リーグのチームが参戦し、新年最初の週末に行われるベスト32決定戦(9回戦)から1部リーグのチームが登場する。カップ戦特有のジャイアントキリングが例年注目を集める。その理由としては1部リーグのチームが2部以下のチームと対戦する場合、ベスト32決定戦では基本的に1部リーグのチームはアウエーで戦うことになる。さらに、今年のように1部リーグの中断期間に行われる場合、1部リーグのチームがコンディションの調整に失敗することもある。
■ファビアン・バルテスの活躍が勝利を導いたマルセイユ
ベスト32決定戦のうち1部リーグのチーム同士が対戦することになったのは4試合。すなわち12チームは2部以下のチームと対戦することになる。この1部同士の対戦の中で最も注目を集めたのは前々回紹介したマルセイユ-ストラスブール戦である。他の試合と開始時間をずらして、土曜日の17時キックオフとなり、32試合のうち唯一地上波で中継されることになった。マルセイユは過去10年間、国内外のタイトルと無縁であるが、戦力を拡充した今年は優勝候補の筆頭と目されたリーグこそ6位にとどまっているが、チャンピオンズカップのグループリーグでは3位に入り、UEFAカップで欧州の頂点を狙おうとしている。
そのようなマルセイユの戦いが注目を集めるのは当然であり、新年早々のベロドロームには3万人を超える観衆が集まった。この試合は前々回の連載で紹介したとおり、前半マルセイユが先行し、終了間際にストラスブールが追いつき、延長戦に入ってからは両チーム無得点が続き、PK戦で雌雄を決することになった。マルセイユのGKファビアン・バルテスは移籍後初戦で長いブランクから明けたばかりで、いきなりPK戦というのはただでさえ緊張するところであるが、そこは数多くの修羅場をくぐってきたバルテス、GKとしてだけではなく、5番目のキッカーとしてPKを成功させ、役者の違いを見せつける。ミラクルな勝利でマルセイユは9年ぶりに復帰したバルテスの活躍で1部リーグ同士の戦いを制し、ベスト16決定戦に駒を進めたのである。
■ボスニア・ヘルツェゴビナ出身の監督同士の対戦に注目
ベスト32決定戦は日曜日の4日にも9試合が行われた。1部リーグ同士の対戦はリーグ首位を走るモナコとメッスの顔合わせだけだったが、その他のカードでは両チームの監督がボスニア・ヘルツェゴビナ出身であるパリサンジェルマンと2部のトロワの対戦が注目された。パリサンジェルマンのバヒッド・ハリロジッチ監督、トロワのファルク・ヘジベジッチ監督ともフランスリーグで選手としても監督としてもキャリアを積み、お互いをよく知っている中である。また旧ユーゴスラビア人の監督のレベルは高く、注目の一戦となった。
■試合終了間際に2点差を追いついたパリサンジェルマンが勝利
パリサンジェルマンのホームゲームとなったがトロワは守備的な陣形で臨む。しかし、先制をしたのは白いユニフォームのアウエーチームであった。21分に先制したトロワは24分にもPKを得て追加点。前半0-2とリードされたパリサンジェルマンは、ブーイングの中、無得点が続き、ブーイングの嵐はさらに強くなる。そしてようやくパルクデプランスの観客が沸いたのが終了間際の89分、サイドバックのガブリエル・ハインツが1点を返す。そして途中から交代出場したバルソロミュ・オグベチェがロスタイムの92分に同点ゴールを決めて、ほぼ90分間沈黙の続いていたパルクデプランスは90分間分の歓声につつまれる。延長に入ってからはパリサンジェルマンのペース、95分に主将のパウレタがセンタリングを頭であわせて見事な逆転ゴール。前日のマルセイユに続き、ドラマチックな勝利で初戦を飾ったのである。(続く)