第334回 パリサンジェルマン、6年ぶりのフランスカップ王者

■国内シーズンの最後を飾るフランスカップ決勝

 独走していたモナコを終盤に捕らえたリヨンが3連覇を果たしたフランスリーグ、ソショーにとって実に66年ぶりの国内タイトルとなったリーグカップ、今年も国内では様々なサッカーシーンが生まれたが、その最後を飾るのが、今回紹介するフランスカップ決勝である。今年は6000以上のチームがエントリーしており、シーズン最後を飾るにふさわしい大イベントである。

■2年連続8回目の決勝進出となるパリサンジェルマン

 このフランスカップ決勝に進出したのは1部リーグ2位のパリサンジェルマン、そして2部11位のシャトールーである。本連載第280回から第287回にかけてフランスカップについて取り上げ、その中でパリサンジェルマンの戦いについて紹介したので詳しくは該当の連載をお読みいただきたい。パリサンジェルマンはバイヨンヌをパリに迎えた「アウエーゲーム」を2-0で勝利し、準々決勝に進出する。3月16日に行われた準々決勝では4部リーグに相当するCFAに所属しているブリーブと対戦する。バイヨンヌ戦に続き、判官びいきとなった国中を敵に回す試合となったが、パリサンジェルマンは手堅く2-1でアマチュアチームを下し、準決勝に駒を進め、ナントと対戦する。パリサンジェルマンにとっては、ベスト16決定戦のマルセイユ戦以来の1部リーグとの対戦となったこともあり、ナントでの試合はタフな試合になる。後半の立ち上がりの50分にファブリス・フィオレーズが先制点を奪い、パリサンジェルマンの守備陣がナントの攻撃をしのぎ、試合は後半ロスタイム。このままパリサンジェルマンが8回目の決勝進出かと思われた91分、ダローシャからのセンタリングをイエプスがヘッドで決めて同点に追いつく。試合は延長戦にもつれ込み、ホームのナントが攻め立てたが、パリサンジェルマンはPK戦に持ち込む。このPK戦を4-3と制したパリサンジェルマンが昨年に引き続き決勝に駒を進めたのである。

■準々決勝で好調モナコを破ったシャトールー

 一方のシャトールー、かつては1部に所属したこともあったが、現在は2部の中位に定着してしまっているチームである。しかしこのシャトールーは何を隠そう、パリサンジェルマンの系列のチームであり、会長はかつてパリサンジェルマンで辣腕を振るったミッシェル・デニゾ、チームカラーも同じ青と赤である。2部のチームと言うことでフランスカップには1部のチームよりも1試合早いベスト64決定戦に当たる12月中旬の8回戦から登場している。初戦は格下のチームに勝ち、ベスト32決定戦、ベスト16決定戦、ベスト8決定戦は同じ2部リーグに所属するグルノーブル、バランス、クレテイユを下し、ベスト8に勝ち残る。例年ジャイアントキリングの続出するフランスカップであるが、今年もベスト8のうち1部リーグは半分の4チーム。ここまでほぼ同格の2部のチームとの対戦が続いたが、準々決勝の相手はリーグ戦で首位を走り、チャンピオンズカップでも欧州の強豪を破って調子の波に乗るモナコであった。しかもモナコでの試合とあってシャトールーの進撃もここまでかと思われたが、シャトールーはモナコを1-0と破ってしまう。準決勝は同じ2部のディジョンをホームに迎え、2-0と勝利して初の決勝進出を果たす。

■欧州選手権を控えたパウレタの一撃でパリサンジェルマン久々のタイトル

 すでにパリサンジェルマンはチャンピオンズリーグ出場資格であるリーグ2位を確保しているため、決勝戦の結果に関わらず自動的にシャトールーがカップウィナーとして来季のUEFAカップに出場する。スタッド・ド・フランスが完成した1998年こそフランスカップ・リーグカップのカップ二冠を獲得したパリサンジェルマンであるが、その後は4年前のリーグカップ、昨年のフランスカップとこのところカップファイナルで2回連続して敗退している。またこの間、リーグ優勝もなく、1990年代半ばの勢いを完全に失ってしまっている。
 試合は超満員のスタッド・ド・フランスで始まった。地元ファンが多く集まったが、すでに来季マルセイユへの移籍が決まっている主将フレデリック・デウへは容赦のないブーイング。その中で自国での欧州選手権を控えたポルトガル代表のパウレタがこの試合唯一のゴールを決めて、パリサンジェルマンは1998年以来久しぶりの勝利の凱歌をあげた。そしてフランスカップ優勝が6回目となり、マルセイユの10回には及ばないものの、あのサンテエチエンヌと通算優勝回数で並んだのである。(この項、終わり)

このページのTOPへ