第411回 波乱の予感するフランスカップ(2) マルセイユ、ホームでまさかの敗戦
■リール-ルマン戦で始まった2005年
今年最初のトップレベルでの公式戦となったフランスカップのベスト32決定戦。1部リーグ20チームの組み合わせを見てみると1部同士の対戦が4チーム(2試合)、2部との対戦が5チーム、ナショナルリーグとの対戦が1チーム、アマチュアリーグとの対戦が4チーム、アマチュア2部リーグとの対戦が1チーム、DHリーグとの対戦が4チーム、上級地域リーグとの対戦が1チームという具合である。
この中でリール-ルマン戦が一番初めにキックオフされる。今年最初のトップレベルの公式戦、リールは夏のインタートトカップに始まってUEFAカップでもしぶとく勝ち残っているばかりではなく、リーグ戦でも2位であり、首位リヨンを追走している。それに対するルマンは日本の松井大輔を補強している。年末年始こそ最高の見せ場と日本時代からカップ戦男の名をほしいままにしている松井は、日本では石野の白味噌、そしてフランスではシャポン・ド・ブレスで新年を迎えているはずである。試合会場のリールのメトロポール競技場には6000人しか観衆が集まらなかったが、日本では深夜に何百万と言うファンがテレビの前に釘付けになっていたであろう。そういう日本のファンの期待に応えて、松井は1点リードされている後半開始時からピッチに姿を現した。松井の加わったルマンは同点に一旦は追いついたが、終盤に決勝点を奪われ、松井の2か国でのカップ獲得はならなかったのである。
■次々と順当勝ちした1部勢
日本の皆様にとっては残念な結果で始まった今年のフランスカップであるが、初日の7日には1部対2部というカードが4試合あり、1部勢が3勝1敗と勝ち越し、波乱の少ないスタートとなり、スダンに敗れたストラスブール以外のリール、レンヌ、アジャクシオが初戦を突破した。
2日目の8日には1部リーグのチームが15チーム登場した。この中で1部勢同士の対戦はボルドー-イストル、ソショー-バスティアの2試合であり、リーグでも上位のボルドーとソショーが順当勝ちした。残りの11チームは下位のリーグのチームと対戦したが、このうち10チームは敵地に乗り込んだ。ところが、この10チームは全て敵地で勝利してしまう。
■唯一ホームで初戦を迎えたマルセイユが敗戦
しかし、この日唯一ホームで下位のリーグを迎えたマルセイユだけがおかしかった。マルセイユは2部のアンジェをホームのベロドロームに迎える。マルセイユに関しては本連載第401回から第403回で新体制を紹介したところであるが、フィリップ・トルシエが新監督に就任してからは1勝1分1敗、そのうち本拠地では勝ち点も得点もまだあげていない。相手のアンジェは2部で17位、ここで順当に勝って上り調子で11日に再開されるリーグ戦で2位のリールを迎えたいところである。トルシエ新監督のホームでの初勝利を期待する観衆はわずか1万5000人とさびしいキックオフ。11分に相手のオウンゴールでマルセイユが先制する。そのままハーフタイムを迎えすが、後半にリズムが狂う。後半に入って57分、59分、63分と立て続けに3失点してしまう。マルセイユは73分に1点を返すにとどまり、1部勢が敵地で好発進する中でマルセイユだけが本拠地でのまさかの敗退となってしまったのである。
■波紋を呼んだ試合終了後の監督のコメント
しかも試合終了後の監督のコメントがまずかった。トルシエ監督は「今日の試合は内容では勝っていた。今季の目標はチャンピオンズリーグ出場権獲得」と発言してしまう。わずか1万5000人しかスタジアムに集まらなかったとはいえ、ここはサッカーの都である。シーズン折り返し時点で首位と勝ち点10差のチームの監督が優勝以外の目標を公言してしまうことが、このマルセイユで許されるはずがなく、新体制のマルセイユは早くも窮地に立たされたのである。(続く)