第516回 1部勢がフランスカップに参戦(5) 前年と同数の1部3チームが初戦で敗退
■日程面で軽微な変更
第512回から第515回の本連載ではプロ、アマあわせて7チームが参戦したノール・パ・ド・カレー勢について紹介したが、1部のチームが参戦するベスト32決定戦について注目を集めるのは下位リーグの所属するチームが1部のチームを破るジャイアントキリングである。例年いくつかの1部のチームがアマチュアのチームに敗れ、年明けのフランス・サッカー界に大きな衝撃を与え続けてきた。
ところが、今回のフランスカップは日程的に軽微な変更があった。それは1部リーグのチームが初登場するベスト32決定戦が年明け最初の週末ではなく、2番目の週末に行われることである。もっとも今年最初の週末は1月1日と2日にあたり、フランスでは通常サッカーの試合は行われない。実に些細な変更であるが、関係者、特に1部リーグのチームならびにその対戦相手にとっては大きな影響がある。昨年のケースでは1部リーグのチームにとって前半戦が終了すると、クリスマスと新年を迎えるため、クラブの活動はいったん中断する。そして中断明けの初戦が新年に行われるフランスカップのベスト32決定戦であった。コンディションが整わない段階での試合で多くのチームが下位のクラブに敗れ、波乱の年明けというのが、フランスのサッカーシーンであった。
ところが、今年はリーグ中断後の初戦は1月最初の水曜日である1月5日に行われたリーグ戦第20節であり、1部リーグのクラブにとってはこのフランスカップは再開後第2戦となる。したがって、1部リーグのチームにとってフランスカップのベスト32決定戦は中断明けの第2戦となり、試合勘も戻っていることから、新年の風物詩になったジャイアントキリングが少なくなるのではないかという見方もある。
■リーグ再開となる第20節では上位陣が順当に勝利
ちなみに年始早々の1月4日と5日に行われた中断明け最初の試合となる第20節ではリーグ最下位のストラスブールが首位のリヨンを迎え、ジャイアントキリングなるかと思われたが、王者リヨンは難なく4-0というスコアで順当勝ちしている。リーグ2位のランスはアウエーで7位のマルセイユと引き分け、3位のボルドーもアウエーで12位のナンシーと引き分けており、敗れてはいない。実に10試合全てで前半戦のリーグ成績上位のチームはホーム、アウエー問わず最低でも引き分けており、上位チームの成績は7勝3分であり、これ異常ない無風のリーグ再開となった。
■名将フレデリック・アントネッティのニースは完敗
このようなリーグ戦第20節の結果を見ると、その3日後に行われるフランスカップでも波乱はないと考えたくなるが、やはりジャイアントキリングは存在した。
まず、本連載第513回で紹介したとおり、CFAに所属するカレーがトロワを延長戦の末下している。そして1部のチームで下位リーグに所属するチームに敗れたチームはトロワ以外にも2チームあった。まずは2部のブレストと対戦したニースである。ニースと言えば昨年Jリーグを制したガンバ大阪の基盤を築いたフレデリック・アントネッティが監督を務めていることから日本人選手を抱えるルマン、マルセイユと並ぶ人気チームであろう。リーグカップでも準々決勝進出を決めており、カップ戦を得意としている。しかし、さすがの名将アントネッティもこの日は運がなかった。まず、アフリカ選手権のために主力選手を失い、負傷者も抱え、ベストメンバーとはいえない布陣でフランス西北端の町に乗り込んだ。ニースは立ち上がりから動きが悪く、20分に1点目、30分に2点目を失い、試合終了間際のロスタイムにもゴールを奪われ、名将アントネッティ率いる古豪は早々と姿を消した。
■リヨンのナンバー2チーム、トゥールーズを破る
そして3つめの犠牲者はトゥールーズである。トゥールーズはCFAのリヨン・ラデュシェールと対戦した。リヨン・ラデュシェールはリヨン近郊のチームである。リヨンと言えば国内外で敵なしのオランピック・リヨネが存在するが、リヨンでナンバー2のクラブがこのアマチュアチームなのである。リヨン・ラデュシェールはジェルラン競技場ではなく本来の本拠地バルモン競技場に2000人の観衆を集め、南西部の古豪を迎えた。立ち上がりにPKで1点を失うが、28分に追いつき、延長戦突入かと思われた94分、バルモン競技場はジェル欄競技場になった。フランス代表歴もあるアラン・モアザン監督率いるリヨン・ラデュシェールが決勝点を挙げたのである。
この結果、下位リーグのクラブに敗れた1部リーグのチームは昨年同様3チームになったのである。(この項、終わり)