第852回 2007-08フランスカップ・ファイナル(3) パリサンジェルマンとリヨンが決勝に進出

■優勝目前で足踏み状態のリヨン、2部降格におびえるパリサンジェルマン

 フランスカップの4強は1部からはリヨンとパリサンジェルマン、2部のスダンとアミアンと言う顔ぶれになった。16強以降はちょうど半分が1部勢である。
 準決勝が行われたのは5月6日と7日、6日にはアミアン-パリサンジェルマン戦、7日にはリヨン-スダン線が行われた。その前の週末にはフランスリーグの第36節が行われ、残り2試合を残す段階である。1部のリヨンとパリサンジェルマンはリーグの順位では対照的である。リヨンは首位、例年ならばこの段階ですでに優勝を決めているところであるが、今年はボルドーの追い上げもあり、首位はキープしているものの、優勝を決めることができない。しかも第35節、第36節と2試合連続して引き分けており、ボルドーとの勝ち点の差も少なくなってきた。
 一方のパリサンジェルマンはリーグカップでは優勝したものの、リーグ戦では低空飛行が続き、2部降格の危機に常にさらされてきた。3日に行われたリーグ戦第36節では同じ降格候補のトゥールーズとアウエーで直接対決、63分にベルナール・メンディがゴールを上げ、守りきるかと思われたが終了直前の89分に同点に追いつかれており、順位は降格圏内の18位のままで降格の危機におびえながらのフランスカップ準決勝に臨むことになる。リーグ優勝、1部残留と目標は違うものの、直前のリーグ戦での調子が思わしくなく、リヨンとパリサンジェルマンの1部勢は目の前のフランスカップ準決勝に集中できない環境で戦いに挑む。

■心理的プレッシャーのないスダンとアミアン

 2部勢は対照的である。まずスダンは8位、すでに1部昇格には届かず、ナショナルリーグへの降格もない。直前のリブルン・サンスーラン戦は1-0で勝利している。またアミアンは長らく降格の危機に瀕してきたが、直前の第36節ですでに1部復帰を決めたナントに2-1と勝利し、18位から14位へと順位を上げて一安心と言うところで準決勝を迎える。このように心理的にプレッシャーのない2部勢であるが、さらに直前の第36節が金曜日の5月2日に行われ、土曜日に試合を行った1部勢よりも試合間隔が1日多いのは大きなアドバンテージである。

■偉大な伯父たちを持つパリサンジェルマンのヤニック・ボリ

 まずアミアンで行われたアミアン-パリサンジェルマン戦では、2部降格を避けたいパリサンジェルマンはメンバーを大幅に落とす。しかも準々決勝でも決勝点をあげ、フランスカップや欧州カップでは抜群の得点力を誇るパウレタは出場停止となっている。アミアンも負傷によりメンバーを欠く布陣であるが、ホームでの戦いと言うこともあり、アミアン有利と言う雰囲気の中でキックオフされる。
 試合開始直後にアミアンが好位置でFKを得るが得点ならず、その後は両チームとも決め手を欠いて、前半はゴールネットを揺らすことなく45分が過ぎる。主力級の選手がいないパリサンジェルマンであるが、後半になって選手交代により事態を打開しようとする。
 後半70分になって大歓声に送られてピッチに登場したのがヤニック・ボリである。ボリは20歳、リーグ戦では1試合も出場したことのない選手である。しかし、日本の浦和レッズでも活躍したバジル・ボリ、かつてパリサンジェルマンにも所属したロジェ・ボリの甥である。このような偉大なる伯父を持つ選手の登場で盛り上がるのは当然である。このボリがいきなり大仕事をやってのける。78分に個人技でゴールネットを揺らす。
 この若き新星のゴールによってパリサンジェルマンは決勝進出を果たしたのである。結果的にはこの試合で若手中心で乗り切ったことは後々の1部残留にも大きな影響を与えたのである。

■千両役者ジュニーニョのFKでリヨンが決勝進出

 そして翌日のリヨンはホームでスダンと対戦した。リヨンの監督はアラン・ペラン、昨年はソショーの監督としてフランスカップの優勝監督となっている。またリヨンにとってはリーグカップで優勝しているパリサンジェルマンが前日に決勝進出を決めているところからリーグ首位としての意地を見せたいところである。
 リヨンはカリム・ベンゼマとジュニーニョがベンチスタートであるが、ほぼベストメンバーで準決勝に挑む。一方のスダンの主将はDFの要のロマン・サルトル、リヨン出身でリヨンにも2年間所属したことがあり、生まれ故郷の古巣のクラブに対し意地を見せたいところである。
 リヨンはしばしば好機を作るが、得点にはいたらず、後半になってベンゼマとジュニーニョを投入する。延長戦かと思われた88分、ジュニーニョは37メートルのFKを決める。千両役者のFK一発でリヨンは決勝進出を決めたのである。(続く)

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