第922回 年明けの象徴、フランスカップ(1) ベスト32決定戦で注目を集めた2チーム

■1部勢にとって鬼門となるベスト32決定戦

 前回までの本連載では前半戦の首位チームである「秋の王者」を紹介してきたが、年末年始の中断がリーグ戦に与える影響を紹介した。年明け以降のリーグ戦はチャンピオンズリーグやUEFAカップがノックアウト方式に変わり、精神的なプレッシャーが高まることをその要因のひとつとして紹介したが、フランスカップもまた同様である。
 リーグ戦の再開前に、1月初めに行われる試合がフランスカップのベスト32決定戦である。このベスト32決定戦から1部20チームが登場する。カップ戦の魅力はジャイアントキリングである。そしてこのベスト32決定戦は、1部リーグにとっては、リーグ戦の中断期間明けに行われること、そして下部のリーグのチームとの戦いにおいてアウエーで試合を行わなくてはならないこと、これらの要因により数多くのジャイアントキリングの犠牲者となってきたことを、例年新春の連載で紹介してきた。
 そしてこのベスト32決定戦で勝ち抜いたチームは、フランスカップを目指すことができるが、リーグ戦などとの両立に悩まされることになる。逆に、敗れたチームはリーグ戦に集中できると考えることもできるが、この敗戦のショックでリーグ戦でも調子を乱すこともありうる。
 他のタイトル争いにフランスカップがどのような影響を与えるか、と言う観点からもこのベスト32決定戦は興味深い。

■2部の上位チームも年内に姿を消す

 フランスカップは12月12日から14日にかけて8回戦が行われ、44チームが勝ち残った。この44チームに1部20チームを加えてベスト32決定戦が行われる。
 2部リーグ20チームは7回戦から参戦しているが、8回戦まで勝ち抜いたのは3分の2の13チームである。年末の時点(2部リーグは1部リーグとは異なり、年内に行われるのは第18節までであり、1月10日に行われる第19節を終えた段階で前半戦終了となる)で首位のランスは7回戦でアラス(5部に相当するCFA2部)にPK戦の末敗れ、2位のストラスブールも8回戦でスダン(2部)に敗れている。3位のストラスブールも勝ち残って入るものの、7回戦は延長戦の末勝利、8回戦はPK戦で勝利と薄氷の勝利である。2部チームにとってもこの戦いがいかに厳しいものかを物語っている。

■7部に相当する県リーグのシライン、ベスト32決定戦へ

 その組み合わせ抽選は12月15日に行われた。64チームの内訳は、1部20チーム、2部13チームと上位2つのリーグがほぼ半数を占める。3部に相当するナショナルリーグからは6チーム、4部に相当するCFAからは11チーム、5部に相当するCFA2部からは5チーム、6部に相当するDH(ディビジョン・オヌール)からは8チーム、そして7部に相当する県リーグから1チームと言う顔ぶれである。
 昨年のベスト32決定戦の顔ぶれは1部20チーム、2部15チーム、ナショナルリーグ8チーム、CFA11チーム、CFA2部6チーム、DH4チームであり、7部リーグに相当する県リーグのチームは姿を消していた。
 ベスト32決定戦に出場するチームの中で2チームが、注目を集めた。まず1つは唯一県リーグから年越しを果たしたシラインである。シラインは、ストラスブールの北40キロにある人口2000人の町で、8回戦ではロレーヌ地方のクルツバルドとアウエーで対戦する。モロッコ代表のムスタファ・ハジの出身地であるクルツバルドは人口1万5000人の町である。曇天で芝生は凍結と言う状態の中で行われた試合には1400人の観衆が集まったが、そのうち400人からはシラインから駆けつけた応援団であった。この試合を2-1と制し、シラインはベスト32決定戦へ進出したのである。

■レユニオンのジャンヌ・ダルク、14年ぶりに海外県・海外領土からベスト32決定戦に

 もう1つの注目チームは、海外県・海外領土のチームとして勝ち残ったレユニオンのジャンヌ・ダルクである。海外県・海外領土からジャンヌ・ダルクと仏領ポリネシアのテファナが8回戦に残ったが、テファナは延長戦で敗れ、ジャンヌ・ダルクが海外県・海外領土のチームとして14年ぶりにベスト32決定戦に進出した。
 14年前には、同じレユニオンのサンルイジエンヌがベスト32決定戦でカンヌに敗れているが、今度はどうであろうか。(続く)

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