第1234回 ベスト4が出そろったフランスカップ (2) シャンベリー、1部勢3チームを下してベスト8
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■1部勢7チームはすべて下部のクラブと対戦するベスト8決定戦
ベスト16決定戦を勝ち抜いた顔ぶれは1部リーグ勢7チーム、2部リーグ勢5チーム、ナショナルリーグ勢1チーム、CFA勢2チーム、CFA2部勢1チームと、1部から5部に相当するリーグに所属するチームが残った。
ベスト8決定戦はベスト16決定戦の翌週に行われるというインターバルの短い戦いとなり、2月1日と2日に行われた。1部勢同士の対戦はなく、7チームが下位リーグのチームと対戦することになった。そして唯一の1部勢以外同士の対戦は8試合のうち最初にキックオフされるアンジェ(2部)とストラスブール(ナショナルリーグ)という1部経験チーム同士の戦いとなった。ストラスブールは年が明けてからアウエーでの対戦が多く、この日もアウエーでの試合となった。その疲れが出たのかアンジェが2-0と完勝する。アンジェは1976年以来実に35年ぶりのベスト8進出となったのである。
■名門スタッド・ド・ランス(Reims)、レンヌを下す
そして久しぶりと言えば名門スタッド・ド・ランス(Reims)がアウエーでレンヌを破って10年ぶりのベスト8入りを決めた。レンヌはこの時点で1部で4位、レンヌよりリーグ戦上位でベスト16に残っているのは首位のリールだけであり、順位だけでみれば2番目に強いチームとの対戦となる。この試合は壮絶な点の奪い合いとなった。前半終盤にレンヌが先制するがすぐさまランスが追いつき、同点で迎えた後半はランスが2点先行しながらレンヌが追いつき、延長戦に入り、延長前半でランスが決勝点を奪って4-3と勝利した。この試合のヒーローはランスのGKのコシ・アガサであろう。後半ロスタイムの92分、さらに延長前半の92分にいずれもPKを阻止する。このトーゴ代表の活躍により名門が久しぶりにベスト8に戻ってきた。
■CFA2部のシャンベリー、1部のソショーも下す
しかしベスト8決定戦で一番注目を集めたのは5部に相当するCFA2部から勝ち上がってきたシャンベリーであろう。前回の本連載で紹介している通り、ベスト32決定戦でモナコ、ベスト16決定戦でブレストという1部勢をPK戦で下し、ベスト8をかけてまた1部勢のソショーと対戦する。シャンベリーは3回戦から登場しているがモナコと対戦するまでの6試合はいずれもCFA2部よりも下位のリーグに所属するチームとの対戦であったが、年が明けてから3試合連続で1部勢との対戦となる。フランスカップにおいて3試合連続で1部勢と対戦するということもそう多くはないことである。
シャンベリーの1部勢挑戦の舞台は三度、市営競技場である。3500人の観衆で満員となった戦い、先制点はソショーが21分にあげる。ソショーリードで迎えた後半になり、シャンベリーはまず61分に同点に追いつき、71分には逆転ゴールを決めて2-1と勝利する。CFA2部に所属するチームがベスト8に残ったのは史上5回目のことであり、本連載の第851回で紹介したカルクフ以来3年ぶりのことである。しかし特筆すべきはこれまでの4チームがベスト32決定戦以降も下部のチームと対戦していたが、シャンベリーの場合はすべて1部勢が相手である。5部に相当するクラブがフランスカップで1部勢を3回倒したのはこのシャンベリーが最初なのである。
■リーグ首位のリール、カップ戦のスペシャリストの・パリサンジェルマン
シャンベリーのジャイアントキリングが大きな話題になったが、それ以外の1部勢はどうだっただろうか。ロリアンは2部のメッスを3-0と下す。パリサンジェルマンはCFAのマルティーグに前半ロスタイムに追いつかれたが、ギヨーム・オラオのハットトリックで4-1と相変わらずカップ戦で強いところを見せる。またニースはCFAのドランシー相手に前半終了間際に上げた1点を守り抜く。そしてリーグ首位のリールは2部のナント相手に延長戦でも決着がつかず、PK戦にもつれ込むが、元フランス代表GKのミカエル・ランドローの好守により、ベスト8入りする。
ナンシーだけは2部のルマン相手に1-2と不覚を取る。この結果、ベスト8は、半数の4チームが1部勢であり、下位リーグからは2部のアンジェ、ランス、ルマン、そしてCFA2部のシャンベリーという顔ぶれになったのである。(続く)