第1238回 フランスカップ決勝はリール-パリサンジェルマン戦
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■2強チームが2弱チームの本拠地に乗り込む準決勝
今季のフランスカップの中盤戦については第1233回から第1235回までの本連載で紹介した通り、5部に相当するCFA2部のシャンベリーの奇跡の快進撃も止まり、1部勢が順当に2部以下のチームを下し、ベスト4は1部のパリサンジェルマン、リール、ニース、2部のアンジェという顔ぶれとなった。この4チームの力関係であるが、リールは今季のリーグ戦で折り返し時点から首位をキープし、パリサンジェルマンもチャンピオンズリーグ出場圏線上にある。一方、ニースは1部で中位、アンジェは2部で中位であり、ニースとアンジェがやや力が劣ることは否めない。
準決勝の組み合わせであるが、4月19日にニースがリールを迎え、20日にアンジェがパリサンジェルマンを迎える。すなわち2強チームが2弱チームに乗り込むことになった。
■50数年ぶりのタイトルを狙うリーグ戦首位のリール
今季のリールは折り返しから首位をキープしている。リールは最後のリーグチャンピオンとなった1954年の翌年の1955年にフランスカップで優勝しているが、リールにとってはそれが最後のタイトルとなっている。すなわち、リーグ戦もカップ戦も50数年ぶりの優勝を視野に入れてシーズン終盤を迎えたのである。一方のニースもリール同様1950年代に黄金期を迎えている。1950年代にリーグ戦は4回優勝、フランスカップでは2回優勝している。リーグ戦の優勝は1959年が最後であるが、カップ戦では1997年に優勝をしている。ちなみにこの1997年は1部で最下位になり、2部に陥落、翌年のカップウィナーズカップには2部のチームとして出場している。
■超満員のニースのファンの願いも及ばず、リールが56年ぶりの決勝進出
14年ぶりのフランスカップ優勝を目指すニースの本拠地競技場は1万7000人の観衆で超満員となった。これだけの観客がこの競技場に集まるのは久しぶりのことである。そのファンの期待に応えるように前週にタクシー乗車中に交通事故にあい、むちうち症の症状があったダビッド・ベリオンも先発でスタートする。
超満員のレイ競技場、その中にはフランス代表GKのウーゴ・ロリスの姿も見える。ロリスはニースの育成機関出身で、2季前までニースに所属し、正GKとして活躍し、2年前にリヨンに移籍した。両チームのGKはニースはリオネル・レティジ、リールはミカエル・ランドローと元フランス代表である。試合はリールがリーグ戦首位のチームらしく、前半終了間際と後半開始早々に得点をあげ、2-0と勝利し、実に56年ぶりの決勝進出を果たす。
■昨季の覇者パリサンジェルマン、カップ戦の巧者らしく決勝進出
そしてもう1つの準決勝はアンジェのジャン・ブーアン競技場で行われ、満員の観衆が見守る。アンジェは昨年まで鈴木規郎が所属していたことから日本の皆様にとってはよくご存じのチームであろう。アンジェが勝利すれば、1957年以来54年ぶりの決勝進出である。しかし相手は昨年のフランスカップの優勝チームであるパリサンジェルマン、カップ戦を得意とするスペシャリストである。アンジェは1980年代以降は2部以下に低迷しているが、1993-94シーズンの1シーズンだけ1部でプレーしている。このシーズンは最下位に終わっているが、その時の優勝チームがパリサンジェルマンである。パリサンジェルマンはクロード・マケレレ、ルドビック・ジュリーというベテラン勢をメンバーから外す。一方のアンジェはもちろんベストメンバーである。
超満員のファンの願いとは裏腹にパリサンジェルマンがその力を見せつける。まず22分にマチュー・ボドメールが先制点をあげる。後半に入って51分にパリサンジェルマンのブラジル人ネネが追加点、アンジェも57分に反撃し、1点を返すがパリサンジェルマンは62分にギヨーム・オラオが3点目をあげて突き放す。
アンジェのファンの声援も及ばず、パリサンジェルマンが2年連続の決勝に進出したのである。
パリサンジェルマンの二連覇なるか、リーグ戦とあわせて二冠の可能性のあるリールが56年ぶりの優勝を果たすか、楽しみな決勝は5月14日に行われる。(この項、終わり)