第1342回 1部勢が参戦、新春のフランスカップ (1) 年を越せずに姿を消した2部のジャイアントたち

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■偶数年の1月は1部勢にとっては鬼門

 フランスのサッカーシーンは前回の本連載で紹介した通り、12月21日に行われたリーグ戦第19節で年末年始の休暇に入る。もっとも、この休暇はごく短いものであり、年が明けないうちに練習を再開したチームもある。前回までの本連載で紹介したパリサンジェルマンは1月4日にはACミラン(イタリア)とドバイで親善試合を行っている。
 本連載の読者の皆様ならばよくご存じのとおり、フランスのサッカー界はフランスカップで年が明ける。1部チーム20チームが参戦するベスト32決定戦であり、休み明けであることに加え、ほとんどのチームがアウエーで戦うことから例年多くのジャイアントキリングが起こる。
 今年のフランスカップのベスト32決定戦は1月6日から9日にかけてフランス国内各地で32試合が行われた。また、今年は偶数年ということもあり、1月下旬からアフリカ選手権も開催される。アフリカ諸国の多くの代表選手を抱えるフランスの1部リーグのクラブにとって、偶数年の1月はフランスカップのジャイアントキリングの恐怖で始まり、中旬以降はチームによっては主力選手を欠く戦いになるため、鬼門と言える月である。

■初戦で敗れた1部からの降格組のRCランスとアルル・アビニョン

 ただ鬼門が受難となるかは年によってずいぶん異なる。今年のベスト32決定戦のドローを見ると1部勢が20チーム、2部勢は14チーム、3部に相当するナショナルリーグ勢は8チーム、4部に相当するCFA(フランスアマチュア選手権)勢は8チーム、5部に相当するCFA2部勢は10チーム、6部に相当するDH勢は4チームと言う分布である。今季は2部リーグが注目を集めていると本連載第1338回で紹介したが、2部勢は11月に行われた7回戦(ベスト128決定戦)から参戦している。初戦の7回戦で今季1部から降格したばかりのRCランスがCFA2部のエンタントに延長の末敗れ、アミアンもCFA2部のポンタルリエに敗れている。そしてRCランスとともに2部に落ちたばかりのアルル・アビニョンもCFAのバランスに敗れており、初戦で3チームが姿を消し、そのうち2チームは昨季は1部に所属していたチームである。

■12月に姿を消した名門のナントとスタッド・ド・ランス

 12月中旬に行われた8回戦(ベスト64決定戦)には2部勢は17チームが進出したが、2部勢同士の戦いが1試合だけあり、ルマンとギャンガンの西部勢同士の争いは終了間際にPKを決めたルマンが勝利している。それ以外の15チームのうち、2チームだけが下部のチームに敗れている。まず1チームがナントであり、DHのレンヌTAと延長戦になり、延長前半に勝ち越したものの、延長後半に追いつかれ、PK戦となり、敗れている。また名門復活の期待がかかるスタッド・ド・ランスもCFA2部のマルクに敗れている。

■姿を消した6チームの過去の立派な成績

 2部勢20チームのうち連勝して年を越したのは14チームであるが、姿を消した6チームの歴史をさかのぼると、リーグ優勝15回(ナント8回、スタッド・ド・ランス6回、RCランス1回)、フランスカップ優勝6回(ナント3回、スタッド・ド・ランス2回、ギャンガン1回)、リーグカップ優勝2回(RCランス2回)と実に立派な実績を残している。
 一方、年を越してベスト32決定戦に臨む2部勢14チームの過去のタイトルを見るならば、モナコがリーグ優勝7回、フランスカップ優勝5回、リーグカップ優勝1回と突出した成績を残しているが、それ以外のチームはリーグ優勝なし、フランスカップ優勝6回(スダン2回、メッス2回、ルアーブル1回、バスティア1回)、リーグカップ優勝1回(メッス)に過ぎない。
 20チーム中14チームが連勝したという数字だけ見れば、さほど驚くに値しないかもしれないが、2部にとどまるには惜しい「ジャイアント」たちが姿を消しているのである。(続く)

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