第1343回 1部勢が参戦、新春のフランスカップ (2) 上位陣が順当に勝利して始まった序盤戦
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■例外的に勝ち残ったモナコ
前回の本連載では昨年11月に行われた7回戦(ベスト128決定戦)、12月に行われた8回戦(ベスト64決定戦)において敗れた2部の6チームの中に、過去に1部リーグ優勝やフランスカップ優勝の経験があるナント、スタッド・ド・ランス、RCランス、ギャンガンが含まれていることを紹介した。また、今季2部に降格したRCランス、アルル・アビニョンが早くも姿を消したことを紹介した。その一方、今季2部に降格し、過去に多数のタイトルを獲得したことのあるモナコは7回戦、8回戦と勝ち抜いてベスト32決定戦に駒を進めてきた。
■ベスト32決定戦の組み合わせ
これら2部チーム14チーム、それ以下のリーグに所属する30チームと初参戦となる20チームの1部勢の間で1月6日からベスト32決定戦が行われた。組み合わせは年末に行われ、1部20チームのうち、1部勢同士の対戦となったチームが4チームある。レンヌ-ナンシー、サンテエチエンヌ-ボルドーと言う2試合が1部勢同士の対戦となった。それ以外の16チームは下部リーグのチームの挑戦を受ける形になったが、2部勢との対戦が5チーム、3部に相当するナショナルリーグ勢との対戦が5チームとなった。そして4部に相当するCFAのクラブとの対戦はなく、5部に相当するCFA2部との対戦が3チーム、さらに6部に相当するDHとの対戦が3チームとなった。
■フランスカップの隠れたスペシャリスト、クビリー
1月6日からフランスカップは始まったが、この日は公現節であり、国内の各家庭ではガレット・デ・ロワがテーブルに置かれ、今年一年の運勢試しとなる。その夜に戦うチームは4チーム、まさに今年1年を占う気持ちでピッチに立ったであろう。
最初にベスト32決定戦を戦ったのはナショナルリーグのクビリーとDHのレンヌTAである。クビリーについては本連載第1086回で紹介している通り、2年前のフランスカップでは準決勝に進出しており、4年前にもベスト32決定戦に進出しており、近年のフランスカップではかなりの頻度で年を越している「隠れたカップ戦のスペシャリスト」である。そしてレンヌTAは前回の本連載で紹介した通り8回戦でナントを下している。このように2012年のフランスサッカーの幕開けは下位リーグに所属しながらフランスカップを象徴するようなチームの顔合わせとなったのである。レンヌで行われたこの試合、3,000人のファンの前で熱戦が繰り広げられ、120分間戦っても両チームノーゴール、結局PK戦で5人全員が成功させたクビリーが2年ぶりのベスト32に進出したのである。
■バランシエンヌ、ディジョンが白星で発進した1部勢
そしてレンヌでのフランスカップ巧者同士の戦いより30分遅れ、20時30分にルマンに1部勢が登場した。ルマンは前回の本連載で紹介した通り、ギャンガンに勝利して年を越してきた。ベスト32決定戦では格上の1部勢と対戦するというくじ運のなさもあるが、唯一2部リーグのチームを下したプライドを胸に地元ファンの前でプレーする。1部勢と言っても相手はバランシエンヌ、前半戦は降格圏内にとどまることが多かったが、前半戦最終戦ではリヨンを1-0と下し、13位で折り返している。この試合、バランシエンヌは1部の意地を見せ、2-0と勝利し、まず初日は波乱のない一夜となった。
翌日7日は土曜日、土日の試合は本拠地に照明設備にないチームが昼間に試合を行う。まず14時にキックオフされたのがベルサイユのモンボーロン競技場である。かつてティエリー・アンリも所属したことにあるベルサイユはDH、市内中心部にあるモンボーロン競技場は4,100人の観衆で満員となった。相手は1部のディジョンである。ディジョンはリーグ戦こそ16位であるが、リーグカップではパリサンジェルマンを下している。この日も日本の松井大輔は出場の機会がなかったが、ディジョンは試合を支配し、次々と得点を重ね、5得点。対する地元ベルサイユは後半のロスタイムにPKで1点を返すにとどまった。
このように波乱の予想されたフランスカップは順当に上位陣が勝利して始まったのである。(続く)