第1384回 フランスカップに驚きのファイナリスト(3) 85年前の決勝戦のリベンジ、クビリーがマルセイユを下す

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■国内外で好調な1部勢がベスト8に残る

 今年のフランスカップのベスト8は1部勢6チームとナショナルリーグ勢2チームが残った。1部勢6チームの中にはリーグ戦で首位争いを繰り広げているパリサンジェルマンとモンペリエ、チャンピオンズリーグの決勝トーナメントに残ったマルセイユとリヨンという、国内外で活躍しているチームが残っている。それに加え、バランシエンヌ、レンヌは今季唯一となるであろうタイトル獲得を目指す。さらに、ナショナルリーグ勢ではクビリーとGFCOアジャクシオがジャイアントキリングを狙っている。

■リーグ戦ではどん底同士のマルセイユとクビリーが対戦

 準々決勝は3月20日と21日に行われた。20日にはクビリー-マルセイユ戦が行われた。マルセイユはチャンピオンズリーグでは準々決勝に進出したものの、リーグ戦では2月末から5連敗、チャンピオンズリーグのインテル・ミラノ(イタリア)戦も含めれば6連敗という状況でこのクビリー戦を迎える。ナショナルリーグのクビリーに勝利して流れを変えたいところである。
 一方、実はクビリーはさらに重症である。アマチュアリーグであるナショナルリーグも1部リーグ同様、12月末までに前半戦の19試合を終え、年明けから後半戦を戦う。クビリーは前半戦の最終戦である昨年の12月20日のバイヨンヌ戦を最後に都市赤家らはリーグ戦では8試合連続で勝利がなく、3分5敗。2012年になってからの勝利はフランスカップでの3試合(うち1試合はPK戦による勝利)だけであり、リーグ順位は年末の10位から16位に下がっているのである。

■85年前の決勝でマルセイユに敗れたクビリー

 クビリーはフランスカップには5回戦から参戦して、7回勝ち抜いて準々決勝に臨む。ここまでの7試合で、上位のリーグのチームと対戦したのはベスト16決定戦のアンジェ(2部)だけ、同格のナショナルリーグ勢との対戦もベスト8決定戦のオルレアン戦のみとドローに恵まれた感もあるが、近年のフランスカップではしばしば上位に進出していることは本連載の読者の皆様ならばよくご存じであろう。特に2年前には準決勝に進出しているほか、2005年にはベスト16、2003年と2011年にはベスト32に進出している。
 そして歴史をさかのぼれば、前身のUSクビリー時代の1927年には決勝に進出している。今から85年前の決勝の相手が、今回準々決勝で対戦するマルセイユだったのである。このときは0-3で敗れたクビリーはマルセイユに対し特別な意識をもっているであろう。

■延長の死闘、終了2分前にクビリーが決勝点

 舞台はベスト8決定戦のルーアンから移動し、カーンのミッシェル・ドルナノ競技場である。2年前クビリーはこの競技場で行われた準決勝でパリサンジェルマンに敗れている。マルセイユはベテラン選手を起用するが、アルー・ディアラはベンチスタートとなる。一方のアマチュアチームであるクビリーの守備的MFにはザンケ・ディアラ、アルー・ディアラの弟である。2万人近い満員のスタジアムの中で、試合はキックオフ、クビリーは風姿花伝にある「一期の境ここなり」を具現したような試合を展開する。
 開始早々の6分、クビリーはジュリアン・バレロが先制点を奪う。マルセイユはなかなか追いつくことができず、試合は終盤となる。85分、マルセイユはロイック・レミーのゴールでようやく同点に追いつき、試合は延長戦になる。
 延長戦に入った段階でクビリーは殊勲の先制点のバレロに代えてジャン・クリストフ・アイナを投入する。この選手交代が功を奏する。アイナは延長後半となった111分に勝ち越しのゴールをあげる。それに対し、マルセイユもその2分後レミーが2たび追いつくゴールをあげ、準決勝へのチケットはPK戦によって争われるのかと思われた。
 1部のマルセイユとナショナルリーグのクビリーとではフランスカップの重みは違う。そのフランスカップの重みの違いが、クビリーを勝利に導いた。延長戦も終わるかと思われた118分、延長に入ってから出場したアイナがゴールをあげ、クビリーは3-2と勝利する。85年前の決勝での借りを返し、2年ぶりの準決勝に進出したのである。(続く)

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