第1540回 フランスカップ準決勝への道 (2) 1部勢対決はナンシー、ソショー、パリサンジェルマン

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■平日の14時15分にキックオフされたニースとナンシーの戦い

 前回の本連載ではフランスカップのベスト16決定戦で下位のリーグに所属するチームと対戦した1部勢6チームがいずれも順当に勝利したことを紹介したが、このベスト16決定戦では1部勢同士の対戦が3カードあった。
 3試合とも1月23日の水曜日に行われ、まずニースとナンシーが対戦したが、キックオフの時間はテレビ中継の関係もあり14時15分、これにはサポーターも反発し、応援をボイコットする動きもあり、わずか3,500人の観衆の前での試合となった。

■ロスタイムに追いついたニース、PK戦で敗れる

 フランスリーグはこのベスト16決定戦の段階で後半戦を2試合消化したところであるが、ニースはこの時点でパリサンジェルマン、リヨン、マルセイユの3強に次いで4位の位置にあり、上位との勝ち点の差は、マルセイユとのは6、パリサンジェルン、リヨンとは7、優勝争いに割って入る可能性も十分にある。一方のナンシーは勝ち点12で最下位。チームの勢いの差は明らかであり、開始早々にニースが先制した。しかし、ナンシーも23分に追いつき、上位のニースに対し互角以上の試合を展開する。特筆すべきはアフリカ選手権は予選で敗退したため出場できなかったカメルーン代表のギ・ローラン・ヌディ・アッサンベであり、スペクタクルなプレーを連発する。そしてナンシーは56分に逆転ゴールを決める。このままナンシーが予想を覆す勝利をあげるかと思われたが、後半ロスタイムの表示は5分、ロスタイム中に選手交代などがあり、97分にニースはCKからダリオ・チビタニッチがヘディングで同点ゴール。試合は延長戦に入るが両チームとも得点なく、PK戦での決着となる。先蹴のナンシーは最初の3人が成功、ホームのニースは2人目と3人目が失敗、結局4-2でナンシーがベスト16の座を勝ち取ったのである。

■リーグ戦の前哨戦はソショーがモンペリエに逆転勝ち

 さて、真昼間にキックオフされたニース―ナンシー戦が終わったころには暮色迫り、17時からモンペリエがソショーを迎え撃つ。実はこの両チームは3日後のフランスリーグ第22節でも同じ場所で対戦する。昨季のチャンピオンのモンペリエは12位、ソショーは15位と両チームともさえない成績である。ただこの試合で勝利すればベスト16になるだけではなく、3日後の再戦でも勝ち点3が近くなる。この試合も夕方のキックオフとあってモンペリエのラモッソン競技場はわずか4500人の観衆である。
 モンペリエが先行し、ソショーが追いつくという展開で90分が終わった段階でスコアは2-2、延長戦に突入する。延長後半の108分、ロングボールのクロスをソショーのヤシン・ミカリが左足で強烈なシュートを決め、この試合で初めてソショーがリードを奪う。モンペリエも意地を見せ、途中交代でしばしば見せ場を作っていたエマニュエル・ヘレーラがシュートし、ゴールイン、観衆は歓喜する。しかし、その前のパスの段階でハンドがあり、ゴールは認められず、昨年のリーグチャンピオンのモンペリエは1週間前のリーグカップに続き、国内の2つのカップ戦から敗退したのである。

■19年ぶりのリーグ優勝を狙うパリサンジェルマン、トゥールーズを一蹴

 そして水曜日の夜20時55分はパリサンジェルマンの登場である。リーグ戦のリーダーはトゥールーズを迎える。パルク・デ・プランスには3万人を超える観衆が集まりファンの注目度もそれまでの2試合とは明らかに違う。ホームチームが下位のビジター相手に敗れたそれまでの2試合と異なり、パリサンジェルマンは一方的に試合を支配し、8分にケビン・ガメイロが先制、18分にいったん追いつかれるものの、後半に入って48分にはハビエル・パストーレ、さらに66分にはエセキエル・ラベッシが追加点をあげ、3-1とリーグ戦9位のトゥールーズを一蹴し、得意のカップ戦でベスト16入りを決める。思えば19年前にパリサンジェルマンがリーグ優勝を決めたのはパルク・デ・プランスでのトゥールーズ戦である。カップ戦のスペシャリストが勢いに乗ってリーグ戦でも久しぶりの優勝を果たすことができるであろうか。(続く)

このページのTOPへ