第1652回 1部勢安泰のフランスカップ(1) 市長のバックアップでロリアンを倒したイズール
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■半数がアマチュアチームのベスト32決定戦
4年に1度のワールドカップイヤーであるが、今年も年の初めの試合はフランスカップである。1部リーグの20チームが参戦するベスト32決定戦は例年多くのジャイアントキリングが起こる。リーグ戦はちょうど折り返し点を通過したところであるが、後半戦が始まる前にこのベスト32決定戦が行われ、思わず出鼻をくじかれるケースもある。
フランスカップベスト32決定戦は今年最初の週末である1月4日の土曜日と5日の日曜日に行われた。ベスト32決定戦に出場する64チームの内訳であるが、1部20チーム、2部10チーム、3部に相当するナショナルリーグから4チーム、4部に相当するCFAから4チーム、5部に相当するCFA2部から8チーム、6部に相当するDHから4チーム、7部に相当するDHRとDSEからそれぞれ1チーム、8部に相当するPHから1チームとなっており、半数がアマチュアチームである。
■豪雨のため延期となったカンヌ-サンテチエンヌ戦
1部リーグのチームは2日目の日曜日に登場するチームが多く、初日の4日に試合を行う1部勢は6チームだけである。そのうち1部勢同士の戦いとなったのがレンヌ-バランシエンヌ戦であり、この日最後の20時45分キックオフとなる。
その前に1部のチームは4チーム出場、今年のフランスカップで最初に登場するのはサンテチエンヌであった。サンテチエンヌはカンヌと14時15分にキックオフを迎えるはずであった。カンヌはジネディーヌ・ジダンを輩出し、かつては1部でも活躍したが、財政難により低迷、現在はCFAに低迷している。片やサンテチエンヌは低迷から脱し1部に定着したが、サポーターがスタジアムで問題を起こし、今回のカンヌ遠征にはサポーターは遠征しないことになった。注目のカードとなったが、豪雨によりかつてはUEFAカップなども行ったカンヌのピエール・クーベルタン競技場はとても試合のできる状況ではなく、キックオフの1時間半前に主審が試合の中止を決定した。
■超満員の観衆の前でロリアンを下したイズール
続いて1部勢で登場したのがロリアンである。ロリアンはイズールとの対戦である。日本の皆様ならばイズールというチームについてよくご存じであろう。フランスの女子リーグにはたくさん日本人の選手がおり、イズールは1部リーグに所属している。女子はトップリーグに所属している強豪であるが、男子は4部に相当するCFAにとどまっている。しかし、フランスカップでは2002年にベスト16決定戦まで進出し、パリサンジェルマンに0-1と惜敗している。そして今季もCFAで2位、ナショナルリーグへの昇格が見えてきた。そしてこの人口1万3500人の小都市のクラブの快進撃を支えているのが社会党の国会議員であり、ギ・シャンブフォール市長である。(フランスでは国会議員と首長を兼職できる)サッカーの街サンテチエンヌ出身のシャンブフォール市長はスポーツの重要性をよく認識し、選手の多くは市役所に勤めている。
このような政治のバックアップによりクラブを運営しており、市営であるベルビュー競技場は収容人員の2,164人を上回る2,165人が1部リーグのクラブとの対戦に集まった。
超満員の観衆の前で、イズールは前半の24分に先制点、この1点を守り切ってクラブ史上初めて1部のクラブに勝利し、12年前のワールドカップイヤー以来のベスト16決定戦進出を決めたのである。そして同じアリエ県からは県庁所在地のチームのムーラン(CFA)もベスト16決定戦に駒を進め、地元ではうれしい新年となった。
■ようやく1部勢で勝利したトゥールーズとソショー
1部勢がようやく勝利したのは18時キックオフの試合まで待たなくてはならなかった。トゥールーズはCFAのドモランタンと対戦、トゥールーズは先制するが、87分に追いつかれる。しかしロスタイムの93分に決勝点をあげる。また、ソショーはDHのブレスイールと対戦、リーグ19位と不振なソショーであるが、格の違いを見せ、3-0と勝利する。
そしてこの日唯一の1部勢対決となった夜のレンヌ-バランシエンヌ戦。この試合で先制したのはホームのレンヌ、61分にPKを決めてリードしたが、バランシエンヌも74分に追いつく。試合は延長戦に突入したが、両チームともゴールをあげることなく、1部勢初の勝ち名乗りはPK戦へと委ねられる。PK戦もなかなか決着がつかず、9人目までもつれ込み、結局レンヌが8-7でバランシエンヌを下したのである。(続く)