第1655回 一転、波乱の連続、フランスカップ(1) コルシカ島で第4のクラブ、CAバスティアが16強入り
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■波乱の少なかったベスト32決定戦
前回までの本連載では年明けに行われるフランスカップのベスト32決定戦の模様を紹介した。1部勢が参戦するこのラウンドは、年末年始の休み明けであること、下部リーグの本拠地で行われることなどから、例年多数のジャイアントキリングが発生し、今年も1部勢で最初に登場したロリアンが敗れるなど波乱を感じさせたが、結局1部勢で下部のリーグのチームに敗れたのは、ロリアン以外にはグラウンドコンディション不良のため1月14日に順延となったカンヌ戦で敗れたサンテチエンヌだけであり、2チームだけであった。その他に1部勢同士の対戦で姿を消したのが4チーム、結局14チームが1月下旬にあるベスト16決定戦に進出した。
一方、ここまで7試合勝ち抜いてきた7部あるいは8部に相当する3つのクラブもすべて姿を消してしまった。
このように紹介すると、下部チームのシンデレラストーリーもなければ、1部勢が下部のクラブに敗れる驚きもなく、盛り上がりに欠けるイメージをお持ちの読者の方も少なくないであろう。
■2部勢はほとんど格下のチームと対戦したベスト32決定戦
しかし、驚きは1月21日から行われたベスト16決定戦で続出したのである。今年のフランスカップでジャイアントキリングが少なかった理由は2部勢と1部勢の対戦が1試合しかなかったことがその理由として考えられる。その1試合はブレストと昨季リーグ王者でカップ戦を得意とするパリサンジェルマンの対戦、パリサンジェルマンが5-2と大勝している。
ベスト16決定戦に進出した32チームの所属するリーグを紹介すると、1部勢が14チーム、2部勢が7チーム、3部に相当するナショナルリーグ勢が2チーム、4部に相当するCFA7チーム、5部に相当するCFA2が3チームである。
2部勢は年越しをするベスト32決定戦までに7回戦と8回戦という2つを勝ち抜かなくてはならず、年越しまでに半数のチームが姿を消し、10チームがベスト32決定戦に進出したが、1部勢との対戦は先述のブレストのみ、2部勢同士の対戦はなく、10チーム中9チームは格下のリーグとの対戦となった。この下部リーグのクラブとの対戦でイストルとクレテイユがCFA勢とに敗れ、10チーム中7チームがベスト16決定戦に進出した。
■すべての2部勢が1部または2部のチームと対戦するベスト16決定戦
次のベスト16決定戦ではなんと2部勢7チームともすべて2部または1部のチームと対戦することになった。2部勢同士の対戦はCAバスティア-ニオール戦、オセール-ディジョン戦の2試合、残りの3チームは1部勢へのチャレンジとなり、アジャクシオがカーンと対戦、SCバスティアがRCランスと対戦、アンジェがソショーと対戦することになった。
■2部初昇格のCAバスティア、PK戦でニオールを下す
2部勢同士の対戦であるが、今季初めて2部に昇格したCAバスティアは昇格後13試合勝ち星がなく、ようやく14試合目のニーム戦で初めての勝利をあげた。リーグ戦では最下位に低迷し、苦戦している。対するニオールは10位、さらにこのカードは1月10日にリーグ戦でも同じCAバスティアのホームゲームで行われ、アウエーのニオールが3-0と勝利している。この1月21日の試合もニオール優勢と見て、スタンドは1000人強とさびしい観客数である。
CAバスティアは前半に先制したが、後半の72分にPKを与えて追いつかれ、さらに86分にはオウンゴールで逆転されてしまう。順位表通りの試合かと思われたが、89分にCAバスティアは追いつき、延長戦で決着はつかず、PK戦で雌雄を決することになる。このPK戦でCAバスティアは5-4と競り勝ち、ベスト8決定戦へ進出する。
コルシカ島のクラブというと1部に所属するSCバスティア、アジャクシオ、さらには昨季は2部に所属していたGFCアジャクシオという3つのクラブが有名であるが、それらよりも古くからこのフランスカップに挑戦しているのがこのCAバスティアであり、今大会のコルシカ勢で唯一ベスト16入りしたのである。(続く)