第1657回 一転、波乱の連続、フランスカップ(3) パリサンジェルマン、マルセイユも消える

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■アリエ県からベスト16に残ったイズールとムーラン

 前回、前々回の本連載ではベスト32決定戦と一転してジャイアントキリングの起こったベスト16決定戦の模様を紹介してきたが、ベスト32決定戦での最大のジャイアントキリングを起こしたのが1部のロリアンを下した4部に相当するCFAのイズールである。ベスト16決定戦ではイズールはリヨンに挑戦する。さてこのイズールという町はフランス中部のアリエ県にある。アリエ県からはイズールの他に県庁所在地であり、イズールのすぐ隣のムーランもベスト32に残っている。アリエ県からベスト16決定戦に2チームが残ることは史上初のことである。またムーランとイズールは同じCFAに所属し、ライバル関係にあるだけではなく、政治的にもムーランは20年近く保守市政、イズールは逆に25年間社会党市政とライバル関係にある。ムーランも1部のトゥールーズに挑戦する。イズールはクレルモンフェランに移動してホームゲーム、県庁所在地のムーランは本拠地エクトール・ローラン競技場での試合となる。

■県庁所在地のムーラン、トゥールーズに逆転勝利

 快進撃を続けるイズールは、9,000人のファンの前で前半こそ無失点に抑え、74分に先制点を奪う。ロリアンに次いで1部のクラブを倒すか、と思われたが、さすがに現在10試合連続で負けなしというリヨンは荷が重かった。リヨンは76分にジェレミー・ブリアンが同点ゴールをあげ、81分にヨアン・グルクフが逆転ゴール、さらに87分にマルブランクがダメ押し点をあげ、3-1でイズールを止める。
 一方、ムーランも3,500人の満員の観衆が集まる。ムーランはトゥールーズに31分に先制点を許し、1点リードされて折り返す。しかし後半立ち上がりの46分にセバスチャン・ダシルバが同点ゴール、そして86分に逆転ゴールを決め、ベスト16決定戦で最大のジャイアントキリングとなる。ムーランはクラブ史上初のベスト16に進出したのである。

■34年ぶりのホームで5失点、マルセイユはニースに競り負ける

 カップ戦の醍醐味ともいえるジャイアントキリングについてここまで下部リーグのチームが上位リーグのチームを破るケースを紹介してきたが、このベスト16決定戦には驚きの試合が2試合あった。
 ベスト16決定戦の16試合中14試合は1月21日と22日に行われ、1部勢はこの2日間に登場した。21日も22日もテレビ中継の関係で一番遅くキックオフされる試合は1部勢同士の対戦である。21日はマルセイユ-ニースという南仏の古豪同士の対戦、22日はパリサンジェルマン-モンペリエという昨季と一昨季のリーグチャンピオンの戦いである。現段階のリーグ戦で5位のマルセイユが13位のニースを迎え、首位のパリサンジェルマンが16位のモンペリエを迎えることから、ホームの優位は動かないと思われた。
 マルセイユは開始早々の3分にアンドレ・ピエール・ジニャックが先制ゴール、順調な滑り出しを見せた。しかし、ニースは5分に追いつき、18分に逆転する。マルセイユは24分に追いついたが、ニースは前半のロスタイムにグレゴワール・ピュエルが勝ち越し点をあげる。ニースは51分にも得点し4-2と差を広げる。マルセイユは58分にジニャックがゴールして1点差に詰め寄るが、ニースは88分に主将のファビリス・アブリエルがゴール、マルセイユはロスタイムに1点返すが、4-5で敗れてしまう。マルセイユがホームで5失点したのは実に34年ぶり、1980年2月のバランシエンヌ戦(3-6)以来のことである。

■王者パリサンジェルマン、ホームで1年2か月ぶりの敗戦

 その翌日にはカップ戦のスペシャリストのパリサンジェルマンが足元をすくわれる。20分にモンペリエに先制を許し、30分に追いついたが、後半の69分にコロンビア代表歴のあるビクトル・ウーゴ・モンターニョに勝ち越し点を奪われ、4万5000人の満員の観衆を失望される。パリサンジェルマンがホームで敗れたのは2012年11月以来、実に1年2か月ぶりのことである。
 このように大荒れとなったベスト16決定戦、ベスト16に残ったのはモナコ、リール、ナントなど1部勢7チーム、2部勢5チーム、4部に相当するCFA勢2チーム、5部に相当するCFA2部勢2チームという内訳である。(この項、終わり)

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