第1669回 8強がそろったフランスカップ(1) CFAのカンヌ、モンペリエに勝利

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■平穏なベスト32決定戦、波乱の続いたベスト16決定戦

 今季のフランスカップについてはベスト32決定戦について本連載第1652回から第1654回で紹介し、ベスト16決定戦を本連載第1655回から第1657回で紹介した。例年は上位の1部勢が下位のリーグ勢に敗れるジャイアントキリングが続出するベスト32決定戦では1部勢が安泰、しかしながらベスト16決定戦ではパリサンジェルマンやマルセイユといった1部の有力チームが敗れるという波乱が続出した。
 続くベスト8決定戦は2月11日から2月13日にかけて行われた。ここでベスト16の顔ぶれを改めて確認しよう。まず1部勢は7チームが残り、この段階のリーグでの成績順に並べると、モナコ(2位)、リール(3位)、リヨン(6位)、ニース(13位)、モンペリエ(14位)、レンヌ(15位)、ギャンガン(16位)となる。2部勢は5チーム、アンジェ(2位)、RCランス(3位)、カーン(8位)、オセール(12位)、CAバスティア(20位)、3部に相当するナショナルリーグのチームはなく、4部に相当するCFAからカンヌ、ムーランの2チーム、5部に相当するCFA2部からイール・ルースとセートの2チームが残っている。

■アマチュアチームが少なくとも1チームは準々決勝に進出

 ベスト8決定戦は組み合わせ抽選の結果、1部勢については1部勢同士の試合はニース-モナコ戦のみで、2部勢の挑戦を受けるのがリール-カーン戦、オセール-レンヌ戦、リヨン-RCランス戦、CFA勢の挑戦を受けるのがカンヌ-モンペリエ戦、CFA2部の挑戦を受けるのがイール・ルース-ギャンガン戦であり、2部勢同士の対戦がアンジェ-CAバスティア戦、CFAとCFA2部の対戦がムーラン-セート戦である。
 この最後のムーラン-セート戦というカードはすなわち少なくともアマチュアであるCFA以下の1チームが準々決勝に進出することを意味している。

■延長後半の終了間際にカンヌが決勝点

 ベスト8決定戦最初の試合は2月11日18時30分にキックオフされるカンヌ-モンペリエ戦である。かつてはUEFAカップに出場したこともあるカンヌであるが、4部に相当するCFAにまで落ちてしまった。しかし、今回のフランスカップでは意地を見せ、4回戦から出場し、5試合目となる8回戦で2部のトロワに競り勝ち、6試合目となるベスト32決定戦ではサンテチエンヌをPK戦で破り、プロ2チームを倒している。カンヌでは雨が続き、十分なコンディションを整えることができなかったが、カンヌは一昨年のリーグ覇者を本拠地に迎え、全く互角に試合運び、試合は延長戦となる。延長に入っても両チーム得点がなく、PK戦かと思われたところ、カンヌはベルカセム・ゾビリが119分に得点をあげる。このゴールでカンヌが勝利し、準々決勝に進出する。カンヌはトロワ、サンテチエンヌに続きモンペリエも破り、プロ3チームを撃破したことになる。

■歴史をつくったカンヌの勝利

 カンヌが準々決勝に進出するのは1部に所属していた1992年ぶり以来、実に22年ぶりの快挙となったのである。この時は準決勝まで勝ち進み、モナコにPK戦で敗れているが、もう1つの準決勝のバスティア-マルセイユ戦は「フリアニの悲劇」で試合が行われず、この年のフランスカップで最後に負けたチームとなった。 そしてこのカンヌの勝利はもう1つの歴史をつくった。このカンヌの勝利によってCFA以下のクラブが2チーム準々決勝に進出することになった。CFAが創設されたのは1993年のことであり、当時はナショナルリーグ2部という名称であったが、CFAのクラブが準々決勝に複数進出するのは初めてのことである。
 一方のモンペリエ、フランスカップでは1990年に優勝し、1990年代には上位に残ったこともあるが、2000年代に入ってからはなかなか勝ち進むことができず、リーグ優勝した2011-12シーズンの準々決勝進出が最高の成績である。今季リーグ戦でも中位以下であり、一昨年のリーグ覇者もタイトル、さらにはヨーロッパリーグ出場の可能性もなくなったと言えるだろう。(続く)

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