第1696回 フランスカップ、ファイナル(1) サッカー人口の多いブルターニュ
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■リーグ戦でパリサンジェルマンを追走するモナコ
前回までの本連載ではリーグカップの決勝でパリサンジェルマンがリヨンを下して、4回目の優勝を遂げたことを紹介した。三大タイトルの中で最も早く優勝が決まったが、今季のフランスリーグはパリサンジェルマンの独走で、もしかしたら5月3日に決勝が行われるフランスカップだけではなく、4月20日に決勝が行われるリーグカップよりも早くリーグ優勝が決まるのではないかと思われた。前回の本連載でも紹介した通り、パリサンジェルマンは折り返してからも好調な成績を残しているが、2位のモナコもパリサンジェルマンほどではないが、安定した成績を残しており、後半戦についても、4月12日の第32節までの13試合の成績は7勝4分2敗、残り5節でパリサンジェルマンとの勝ち点差は10である。そして、モナコ自身はすでにパリサンジェルマンが姿を消してしまったフランスカップに勝ち残っている。
■好調モナコに挑む北西部3チーム
フランスカップの準決勝は本連載第1683回から第1685回で紹介した通り、ギャンガン-モナコ戦とレンヌ-アンジェ戦が行われる。リーグで上位のモナコに注目が集まるが、1部のギャンガンとレンヌはいずれもブルターニュのクラブ、そして唯一2部から勝ち残ったアンジェもブルターニュに近いアトランティック地方のクラブであり、北西部のクラブが4チーム中3チームを占めた。ブルターニュ地域はトップレベルである1部にはロリアン、レンヌ、ギャンガンの3チームを送り込み、2部のブレストも1部の経験がある。対するモナコのあるメディテラネ地方はモナコ以外にマルセイユ、ニースが現在1部リーグでそれ以外にアルル・アビニョン、イストルが2部におり、下部リーグまで広げるとカンヌもおり、トップレベルのプロチームでは引けを取らない。
■独特の文化を有するブルターニュとブルターニュ代表
ブルターニュ地方はケルト系であり、かつてはフランスから独立しており、特有の文化と気質を持つ。ブルトン語と呼ばれるこの地域の言語は方言というよりは外国語であると言ってもいいであろう。ブルターニュと言えば、クレープやガレット、そして塩入りのバター、シードルが有名であり、これらを楽しむことのできるル・ブルターニュの前には、日本の皆様であればよくご存じの伊勢藤がある。この伊勢藤こそブルターニュの無口で頑固一徹なところを表しているであろう。
ブルターニュの持つ独特の文化はサッカーの世界においても「ブルターニュ代表」が結成されるということからもわかりであろう。もちろん、このチームは日本で言えば九州代表、北海道代表というような位置づけであるが、毎年シーズン直後にチームを結成して他国の代表チームと試合を行っている。そしてフランス国内外で活躍しているこの地域出身の選手も名を連ね、現在の監督は本大会でも何度も紹介したことのあるクロード・ルロワが務めている。今年もリーグ戦終了後の5月20日にはバンヌに中央アフリカ代表を迎えて親善試合を行う。
■22地域中4番目に多い登録数を誇るブルターニュ地域
ブルターニュ出身の現役のプロサッカー選手は約100人いると言われており、この選手の多さがブルターニュ代表を組織しているわけであるが、これだけのプロ選手を輩出しているのは、この地域におけるサッカー人口の多さであろう。フランスサッカー連盟に登録している選手、指導者、審判は200万人、このうち190万人が本土の登録である。フランス本土では22の地域に分かれているが、その中でブルターニュは首都圏に当たるパリ&イール・ド・フランス、リヨン地域、サンテチエンヌ、エビアンなどのあるローヌ・アルプ地域、リール、バランシエンヌ、ランスなどのあるノール・パ・ド・カレー地域に次いで4番目の14万人の登録者を抱えている。多くのサッカー愛好者に支えられているブルターニュ勢のレンヌとギャンガンが2部から勝ち上がってきたアンジェ、そして大型補強でリーグ戦でもパリサンジェルマンに次ぐ2位をキープするモナコをおさえることができるだろうか。(続く)