第1697回 フランスカップ、ファイナル(2) アンジェに逆転勝ちしたレンヌ、決勝進出
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■日本とゆかりのあるレンヌ
前回の本連載ではフランスカップのベスト4のうちをレンヌとギャンガンというブルターニュ勢が占め、この地域がサッカーの盛んな地域であることを紹介したが、ブルターニュ勢の先陣を切って登場するのがレンヌである。レンヌと言えば、かつて日本のガンバ大阪で指揮を執っていたフレデリック・アントネッティが2009年から2013年まで監督を務め、川崎フロンターレのアジアチャンピオンズリーグの決勝トーナメント入りの原動力となった稲本潤一が所属したことから、日本の皆様にとってはフランスのクラブの中ではもっとも有名なクラブであると言えよう。
■ファンの期待も高まり、チケットは前売りで完売
2003-04シーズンから2011-12シーズンまで9シーズン連続でリーグ順位は一桁と安定した力も有している。またカップ戦でもフランスカップでは5年前に準優勝、昨季はリーグカップで準優勝と決勝戦に進出しているだけではなく、フランスカップでは着実に第1戦(ベスト32決定戦)、第2戦(ベスト16決定戦)を勝ち抜き、ノックアウト方式でもコンスタントに結果を残している。しかしながら、昨季のリーグ戦は13位に終わり、今季も現在のリーグでの順位は14位であり、このフランスカップが唯一の可能性のあるタイトルである。
昨季、今季とリーグ戦では好成績を残していないレンヌは準決勝はホームで試合を行う。決勝戦はスタッド・ド・フランスで行われるため、この準決勝はレンヌのファンにとっては地元で見ることのできるフランスカップ最後の試合となる。レンヌの本拠地、ルート・ド・ロリアン競技場での試合はチケットは前売りで完売、満員の2万8000人の観客が集まる。レンヌは準々決勝のリール戦も本拠地で戦い、その時も同様に2万8000人の観客が集まっている。 リーグ戦で不振の地元チームに対するフランスカップでの栄冠を期待するファンの思いの表れである。
■1部昇格も狙うアンジェ、モハメド・ヤッタラがカウンターアタックで先制点
一方、アンジェは2部で現在6位であるが、昇格圏の3位と6位の間に勝ち点の差はなく、十分に昇格を狙えるポジションにいる。アンジェはフランスカップで1957年以来57年ぶりの決勝進出を狙っており、チームとしての勢いはアンジェに軍配が上がる。
レンヌのキックオフで始まったこの試合、レンヌは1分過ぎには早くもCKを得て、先制点のチャンス。ところがこのCKをアンジェはクリアし、カウンターアタック。サイドを駆け上がり、クロスをあげ、ストライカーのモハメド・ヤッタラがクロスバーに当たりながらゴールを決める。ヤッタラはリヨンの下部組織出身で、2部のアルル・アビニョン、トロワを経て今季からアンジェでプレーする20歳のギニア代表である。
■ファンの声援に応えたレンヌが逆転勝利
しかし、平日の試合でありながら満員札止めとなった試合でファンの期待も大きいレンヌもこのまま引き下がるわけにはいかない。本連載第1386回で紹介した2年前の準決勝、レンヌは3部リーグに相当するナショナルリーグのクビリーに後半ロスタイムに決勝点を奪われて、敗退している。この準決勝でまた下部リーグのクラブに負けるわけにはいかない。
15分にレンヌは追いつく。今年の1月、冬の移籍シーズンにオランダのPSVアイントホーヘンから移籍してきたスウェーデン代表のオラ・トイボネンがロマン・アレサンドリーニのクロスをゴールにたたき込み、同点となる。さらにレンヌは36分にはポーランド代表のカミル・グロシツキーが逆転ゴール、後半に入って間もない48分にはカメルーン代表のジャン・マクーンが3点目を入れてレンヌは2点差をつける。
ところが、レンヌの守備陣は先制点を決めたアンジェのヤッタラの動きに相当の神経を使うことになる。レンヌは終了間際の89分にペナルティエリア内でハンド、このPKをヤッタラがゴールを決めて1点差となる。しかし、ロスタイムはわずかに2分、1971年以来43年ぶりの優勝を狙うレンヌが決勝に進出したのである。(続く)