第1824回 フランスカップ4強決定(1) リーグ首位のリヨン、バンサン・ベッサのハットトリックに屈す

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■国内で唯一4つのタイトルを追うパリサンジェルマン

 チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグの決勝トーナメントが始まると、シーズンが後半であり、タイトル争いに向けて各チームそれぞれの思惑のある時期になってくる。
 フランスの場合、クラブのタイトルは国内のリーグ、カップ、リーグカップという3つのタイトルに加え、上位チームはチャンピオンズリーグまたはヨーロッパリーグという欧州のタイトルがある。すなわち、最大で4つのタイトルを争うことになる。しかし、フランスカップ、リーグカップ、欧州カップについては多くのチームがすでに敗退してしまっている。
 その中で、3月初めの段階で4つのタイトルすべてに生き残っているチームがある。それがパリサンジェルマンである。パリサンジェルマンのリーグ戦、フランスカップ、チャンピオンズリーグでの戦いぶりについては本連載で紹介してきたとおりである。今回からは3月初めに準々決勝が行われたフランスカップについて紹介しよう。

■1部勢同士の対戦が4試合あるベスト16決定戦

 フランスカップについては本連載の第1799回から第1801回にかけてベスト32決定戦の模様を紹介した。1部勢同士の対戦も存在したが、20チームのうちベスト32に残ったのは12チームだけとなった。リーグ戦の前半戦を首位で折り返したマルセイユが早くも姿を消してしまっている。
 ベスト16決定戦は1月20日と21日に主に行われた。まだアフリカ選手権のグループリーグが行われている時期であり、チームによっては戦力ダウンのままで戦うことになる。16試合のうち、1部勢同士の対戦は4試合、すなわち1部勢12チームのうち、8チームは同じレベルのチームと戦うことになる。この4試合はナント-リヨン戦、モナコ-エビアン戦、パリサンジェルマン-ボルドー戦、レンヌ-スタッド・ド・ランス戦であり、リーグ戦で優勝争いを演じているリヨン、パリサンジェルマン、そして第二集団にいるモナコ、ボルドーという好調なチームが1部勢と対戦することになり、ファン注目のカードがそろった。

■リーグ戦首位のリヨンから3得点を奪ったバンサン・ベッサ

 初日の1月20日の21時に行われたナント-リヨン戦、この20年間安定した成績を誇っているリヨンはこの数年タイトルからは遠ざかっているが、リーグ戦ではマルセイユから首位の座を奪回した。一方のナントも2部から復帰し、リーグ戦では中位につけ、フランスカップを獲得して久しぶりのタイトル制覇を目指す。ナントのボージョワール競技場には2万4000人以上のファンが集まった。リーグ戦の前半戦は同じボージョワールで対戦し、1-1のドローである。
 このところアウエーゲームでは好調なリヨンが5分にアレクサンドル・ラカゼットのゴールで先制点をあげる。リーグ戦でも上位のリヨンがこのまま優位に試合を進めるかと思われたが、ナントが盛り返す。19分にバンサン・ベッサが同点ゴールをあげ、さらに21分にもベッサのゴールでナントは瞬く間に逆転する。試合内容はリヨンが優位であったが、リヨンは1点のリードを許して後半を迎える。リヨンは後半に入って59分に若手の注目株のナビル・フェキルが同点に追いつくゴール。このあたりからナントが盛り返すが、ゴールは遠い。延長戦かと思われた87分、今季リーグ戦ではいまだ無得点のベッサがハットトリックを達成するゴールを決めて、ナントは3-2と勝利し、ベスト16入りし、リーグ戦首位のチームはベスト32決定戦のマルセイユ同様、ベスト16決定戦でも姿を消したのである。

■直近10試合無敗の好調モナコ、エビアンに快勝

 その翌日には夕方にリーグ戦5位のモナコ、夜に3位のパリサンジェルマンが登場する。モナコは17時キックオフでエビアンと対戦。モナコの直近10試合の戦績は8勝2分と負け知らず、この調子でいくと優勝争いに絡む可能性は強い。リーグ前半戦でも同じモナコのルイ2世競技場で対戦しモナコが2-0と勝利している。試合は好調モナコが下位のエビアンに対しルーカス・オカンポスとアントニー・マルティアルのゴールで2-0と勝利、ベスト16に進出したのである。(続く)

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