第1826回 フランスカップ4強決定(3) 1部の力を見せたサンテチエンヌとギャンガン

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ジャイアントキリングのスペシャリストのクビリーを下した元1部のブローニュ

 8強を決めるベスト8決定戦は2月10日から12日にかけて行われた。
 初日の10日には4試合が行われたが、最初の試合でナショナルリーグのブローニュがCFAのクビリーを迎えた。1部に在籍したこともあるブローニュの本拠地リベラシオン競技場には7000人のファンが集まったが、そのうち約1割はクビリーから駆け付けた熱心なサポーターである。このクビリーに対し、ブローニュは前後半に1点ずつあげて2-0と順当勝ち、8強一番乗りを決めた。

■スタッド・ド・フランスに続き、ジャン・ブーアンも初めて使用した2チーム

 初日に1部勢で登場したのはサンテチエンヌである。サンテチエンヌはナショナルリーグのレッドスターと対戦するが、この両チームは初めてリーグ戦でスタッド・ド・フランスを使用したという歴史がある。スタッド・ド・フランスの完成は1998年の初めのことであるが、1999年3月10日、2部リーグの公式戦でレッドスターがサンテチエンヌを迎えた。この試合は4万5000人の観衆を集め、2部リーグの試合の最多観客動員記録であり、アウエーのサンテチエンヌが2-1で勝利した。今回もフランス有数の人気チームであるサンテチエンヌを迎えるとあって、レッドスターはパルク・デ・プランスの隣で改装したジャン・ブーアン競技場に舞台を移した。ジャン・ブーアン競技場はラグビーの強豪スタッド・フランセの本拠地である。この競技場でサッカーの試合が行われるのは初めてのことであり、この古豪の2チームは16年前のスタッド・ド・フランスに続き、ジャン・ブーアン競技場でも歴史を作ったのである。

■大統領の前でレッドスターを下したサンテチエンヌ

 観衆は1万2000人と多くはなかったものの、その中にはフランソワ・オランド大統領、クロード・バルトロン国民議会議長もおり、大きな驚きを与えた。試合の方は16年前と同様、サンテチエンヌが2-1と勝利し、1部上位の実力を見せた。
 また2部のオセールはナショナルリーグのルポワレ・シュール・ビをPK戦で下し、5年ぶりの準々決勝進出を決めた。
 そしてCFA同士の対戦として注目を集めたICクロワとコンカルノーの試合はホームのICクロワがしばしばゴールチャンスを得るが、得点できず、延長戦を終えても両チーム無得点、結局PK戦で勝利したコンカルノーがクラブ史上初のフランスカップ準々決勝進出を決めたのである。

■ディフェンディングチャンピオンのギャンガンも8強入り

 2日目の12日は3試合が行われたが、出場する6チーム中5チームが1部勢である。平日の水曜日ということで17時から2時間ごとにキックオフ、最初の試合はCFAのイズールがディフェンディングチャンピオンのギャンガンを迎える。イズールは第1657回の本連載でも紹介したが、昨年はベスト16決定戦でリヨンに敗れており、今年はベスト16決定戦を勝ち抜き、クラブ史上初のベスト8決定戦に進出した。イズールはアリエ県にあるが、県内のライバルのムーランは昨季はベスト8決定戦に進出しており、イズールはライバルの昨年の成績に並びたいところである。
 ギャンガンはリーグ戦では決していい成績を残していないが、フランスカップでは過去10年間、下位のリーグのチームに敗れたことがない。ジャイアントキリングにあわない、ということもカップ戦では注目すべきことであろう。
 ところが、この試合、イズールが62分に先制点を奪う。イズールは2200人の地元のファンの前でギャンガンの攻撃をしのぎ、時計の針は90分を超え、ロスタイムに突入する。そして残り20秒となった94分、ギャンガンはクリストフ・マンダンヌが起死回生の同点ゴールをあげて延長戦に入る。こうなると延長戦は前年覇者のものである。97分にマンダンヌが勝ち越し点をあげると、その3分後にジェレミー・ピエが追加点、ギャンガンが3-1と勝利し、前夜のサンテチエンヌ同様、苦戦しながらも下位のクラブの粘りを振り切ったのである。(続く)

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