第1865回 パリサンジェルマン、輝く三冠 (1) ロナウジーニョの移籍の契機となった12年前の敗戦

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■必ずしも判官びいきばかりではないフランスのファン

 前回と前々回の本連載ではフランスリーグの最終節について紹介した。今シーズンも残すところフランスカップの決勝だけとなった。シーズンの掉尾を飾るフランスカップの決勝は三冠を目指すパリサンジェルマンと10年ぶりの優勝を目指す2部のオセールとの戦いとなった。
 強すぎるパリサンジェルマンに対し、2部のオセールに対する判官びいきもあると思われる読者の方も少なくないと思われるが、パリジャン以外が全部アンチパリサンジェルマンになっているわけではない。

■パリサンジェルマンの優勝で得をするマルセイユとボルドー

 両チームの決勝までの道のりについてはすでに本連載で紹介したとおりであるが、リーグ戦が終了して新たな条件が加わった。それは来季のヨーロッパリーグの出場権である。前々回の本連載で紹介した通り、フランスからヨーロッパリーグの本戦並びに予備戦に出場できるのは3チーム、原則としてリーグ4位のチームと、フランスカップ優勝チームとリーグカップ優勝チームである。このうちリーグカップ優勝チームについてはすでにパリサンジェルマンがリーグ優勝チームとしてチャンピオンズリーグの出場権を獲得したため、リーグ5位のチームに出場権が与えられることについてはすでに紹介してきた。さらに、フランスカップもパリサンジェルマンが優勝することになれば、リーグ6位のチームに出場権が舞い込むとともに、本来はフランスカップ優勝チームに与えられる本戦出場権がリーグ4位のチームに与えられる。
 逆に、オセールが優勝すれば、フランスカップ優勝チームとしてヨーロッパリーグの本戦出場権を獲得し、リーグ4位と5位のチームはヨーロッパリーグの予備戦からの参戦となる。
 前回の本連載で紹介した通り、リーグ戦の最終順位は4位マルセイユ、5位サンテチエンヌ、6位ボルドーである。4位のマルセイユはパリサンジェルマンがフランスカップで優勝すれば、ヨーロッパリーグの本戦(グループリーグ)からの参戦となり、6位のボルドーはヨーロッパリーグの予備戦に出場することができる。逆にオセールが勝利した場合には、ヨーロッパリーグの本戦にオセール自身が出る以外は、利益を享受するチームはないのである。
 すなわち、オセールはパリサンジェルマンのファンだけではなく、マルセイユやボルドーのファンとも戦わなくてはならないのである。

■スタッド・ド・フランスに移ってからの決勝でやや成績の劣るパリサンジェルマン

 パリサンジェルマンは今季のフランスリーグでは圧倒的な強さを発揮して優勝した。方やオセールは2部リーグで9位、決して満足できる成績ではない。しかし、過去のフランスカップ決勝での戦績を見ると意外なことがわかる。
 まず、カップ戦のスペシャリストと言われるパリサンジェルマンであるが、これは決勝戦の会場がかつてはパルク・デ・プランス、現在はスタッド・ド・フランスとパリ並びにパリ近郊にあることから決勝戦をホームゲームとして戦うことができるというアドバンテージがある。確かに、決勝戦がパルク・デ・プランス時代には5回決勝に進出して4回優勝しているが、スタッド・ド・フランスに舞台を移してからは、7回決勝に進出し、4回優勝している。過半数は優勝しているが、本拠地であるパルク・デ・プランス時代よりは悪い成績である。

■ロナウジーニョの移籍に影響したオセールの勝利

 さらに両チームが決勝戦で戦ったことがある。2003年のことであり、オセールにとっては初めてのスタッド・ド・フランスでのファイナルである。パリサンジェルマンは1998年にスタッド・ド・フランスが完成した年の決勝でRCランスを破って優勝して以来2度目の決勝戦となる。
 この時のパリサンジェルマンの主力選手はブラジル代表のロナウジーニョである。ワールドカップ優勝メンバーとなり、在籍2年目となった2002-03シーズン、パリサンジェルマンはリーグでは不本意な成績、最後の欧州カップのチケットをかけてフランスカップ決勝に臨むが、後半のロスタイムにジャン・アラン・ブームソンに決勝点を決められて敗れ、翌シーズンの欧州での戦いから外れてしまう。ロナウジーニョはこの敗戦後、スペインのバルセロナに移籍し、後にチャンピオンズリーグで優勝する。もし、この決勝でパリサンジェルマンがオセールに勝利していれば、フランスのサッカーの歴史は変わったかもしれないのである。(続く)

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