第1970回 荒れに荒れたフランスカップ (4) 延長戦で勝利したサンテチエンヌとナント
5年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■GFCアジャクシオと立場が逆転したACアジャクシオ
前回の本連載ではファンが期待するジャイアントキリングの期待を集めた下部リーグのチームを破ったリヨンとトロワ、下部のリーグのチーム相手に苦戦しながら勝利したモナコとロリアンを紹介したが、苦戦して勝ち上がったのはヨーロッパリーグのグループリーグを突破したサンテチエンヌも同様であった。
サンテチエンヌは今季のリーグ戦も5位であり、国内外で好調な成績を残している。ベスト16決定戦はホームゲームであり、2部のACアジャクシオを迎える。
ACアジャクシオは2011年に1部に復帰したが、2013-14シーズンは最下位となり2部に降格する。2014-15シーズンは2部にアジャクシオのチームが2つ存在した。1つは1部から降格したACアジャクシオであ路、もう1つはナショナルリーグから初めて昇格したGFCアジャクシオである。2014-15シーズンの2部では、GFCアジャクシオが2位に入り、わずか1季で1部に初昇格したのに対し、ACアジャクシオは17位とあわやナショナルリーグへ陥落するような悪い成績となった。本連載で紹介した通り、GFCアジャクシオはリーグ戦でも13位と健闘し、フランスカップでもこのACアジャクシオがサンテチエンヌと戦う前々日にギャンガンを破りベスト16位入りしている。2部リーグでは今季もこの時点で16位と苦しい戦いのACアジャクシオであり、優勝あるいは昇格ではなく、降格しないことがチームの目的となってしまっている。残るはこのフランスカップでファンを驚かせたいところである。
■マンダンダ4兄弟の3人目、リフィ・マンダンダ
このACアジャクシオの注目の選手はGKのリフィ・マンダンダである。名字からお分かりの通り、マルセイユに所属するフランス代表のGKスティーブ・マンダンダの弟である。マンダンダは4人兄弟で、いずれもGKである。長兄のスティーブについては紹介する必要がないであろう。次兄のパルフェはコンゴ民主共和国代表のGK(所属はベルギーのシャルルロワ)、そして三男がこのリフィであり、アンダーエイジのフランス代表にも選ばれた経験のある23歳である。さらに四男のオベールは17歳で現在ボルドーのユースチームに所属している。
■PK戦目前の120分に決勝点をあげたサンテチエンヌ
これまでに6回の優勝を誇るサンテチエンヌであるが観衆は1万1000人を超えた程度でさびしいジェフロワ・ギシャール競技場でのキックオフとなった。
試合はサンテチエンヌが10分にCKからジャン・クリストフ・バエベックが先制点をあげる。この1点をサンテチエンヌが守り切るかと思われたが、87分にACアジャクシオはFKからつないで同点に追いつく。木曜日の夜ということで家路にいて翌日の仕事に備えようとしていた緑のファンは30分の延長戦を楽しむことになった。延長戦で精彩を放ったのはサンテチエンヌのGKステファン・ルフィエである。フランス代表の第3GKも狙えるルフィエが好セーブを見せる。そして試合終了間際の120分にサンテチエンヌはバンジャマン・コルニエが決勝点を奪い、苦戦しながらベスト16入りした。
■延長前半に交代出場したアレハンドロ・ベドヤのゴールで勝利したナント
8位であるが、1部勢相手の試合とあって厳寒の中、5000人のファンが集まり立錐の余地もなくなる。ナント相手にマントはよく守り、カウンター攻撃を仕掛け、前後半とも無得点で延長戦に入る。ナントはしばしばポストにも嫌われ、得点をあげることができない。延長前半の終了間際、ナントは3人目の交代として米国代表のアレハンドロ・ベドヤを投入する。この交代が見事成功、ベドヤはファーストタッチでゴールを決める。
一方のマントは延長後半の終盤にバーに当たって跳ね返ってきたボールをシュートし、ゴールラインを越えたかに見えたが、得点は認められず、ナントが勝利する。勝利したナントの選手は終了後に人垣を作り、ファンにあいさつしてロッカールームへ引き返すマントの選手を迎えるなど、フランスカップ特有の微笑ましい光景も見られたのである。(続く)