第1971回 荒れに荒れたフランスカップ (5) レンヌをアウエーで下したブール・アン・ブレス

 5年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ターンオーバー制を採用したブール・アン・ブレス

 前々回と前回の本連載で紹介した通り、モナコ、ロリアン、サンテチエンヌ、ナントの各チームはフランスカップのベスト16決定戦で下部のリーグのチーム相手に延長戦やPK戦で勝利するという薄氷の戦いであった。
 そしてこれから紹介する3チームはベスト16決定戦でジャイアントキリングに遭遇した。まずレンヌは2部のブール・アン・ブレスを迎える。このレンヌでのゲーム、両チームにとっては都合の悪いものになる。まずビジターのブール・アン・ブレスは火曜日にレンヌで戦い、金曜日にはホームでバランシエンヌと対戦する。中2日ということでこのレンヌ遠征のためにチャーター機を準備した。そしてカップ戦とリーグ戦でメンバーを入れ替えるというターンオーバー制を採用、メンバーの一部をレンヌ遠征に帯同させず、バランシエンヌ戦に備えさせた。チャーター機もターンオーバー制も欧州のトップクラブであれば珍しいことではないが、2部の中位(8位)のチームが行うことは珍しい。もちろん、クラブとしてはリーグ戦を優先するため、控えメンバーがカップ戦で活躍するシーンはチャンピオンズリーグでは見慣れた光景であるが、ブール・アン・ブレスとしてはホームでこの1戦を迎えたかったところであろう。

■アウエーで強く、ホームで弱いレンヌ

 アウエーのブール・アン・ブレスがレンヌでの試合を避けたい理由はよくわかるが、レンヌもレンヌの試合を避けたかったのである。レンヌはこの時点で6位、直前のリーグ戦でもアウエーでトロワに勝利している。レンヌはアウエーでの試合の成績がよく、この時点で5勝5分1敗、この成績はパリサンジェルマン、モナコに次ぐ成績である。一方、ホームでの戦いは2勝5分3敗、実は最下位のトロワに次いで2番目に悪い成績である。このように外弁慶のレンヌは相手が2部のチームでさらにメンバーを落としてきているとはいえ、ホームでの試合は避けたかったのである。

■ブール・アン・ブレス、見事な逆転勝利

 試合はホームでの戦いに不安を感じているレンヌが先制する。21分にポール・ジョルジュ・ヌテップが攻撃の起点となりスティーブン・モレイラのゴールを呼び寄せる。1点をリードして迎えた後半、レンヌはブール・アン・ブレスの反撃を受けることになる。まず48分にジュリアン・アントワン・ベグが同点ゴール、さらに71分にはPKを与えてしまうが、これはフランス代表入りを目指すブノワ・コスティルがストップし、ファンは安堵する。しかし、ブール・アン・ブレスは81分にラクダール・ブサアが勝ち越し点、さらに後半のロスタイムにも追加点をあげ、3-1と勝利し、レンヌのファンの悪い予感は的中してしまったのである。

■親会社の不振により中国企業に売却された名門ソショー

 バスティアにチャレンジしたのが2部のソショーである。ソショーはプジョー(現在はPSAプジョーシトロエン)の社内クラブとして発足した名門チームである。大企業のクラブがスポンサーであることから財政的な援助があるとともに、グラウンドや合宿所などの施設もプジョーのものを使用するという数々のアドバンテージのあるクラブであり、第二次世界大戦前には2回リーグを制覇し、長期間にわたって1部リーグに所属してきた。1990年代には1部と2部を往復したが、2000年代に入り、PSAプジョーシトロエンが株主とする株式会社になり、それ以降は1部に定着してきた。リーグ戦以外では2004年にリーグカップ、2007年にフランスカップを獲得し、古豪復活を印象付けたが、2014年に2部に陥落している。1年で1部に復帰ができなかったソショーに対して2015年春に親会社のPSAプジョーシトロエンは新車の販売が不振であることもあり、87年間所有してきたクラブの売却を決定する。買い手となったのは中国のLEDメーカーの莱徳斯公司である。
 パリサンジェルマンがカタール資本となり、ビッグクラブとなったが、ソショーの場合は予算面はともかく、今季は2部で18位と全く不振であり、ファンは怒りを感じているのである。(続く)

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