第1972回 荒れに荒れたフランスカップ (6) 中国資本の2部ソショー、PK戦を制したCFAトレリサック
5年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■外資となるが成果を残せないソショー
フランスを代表する企業であるPSAプジョーシトロエン、ニコラ・マルテルを失ったことが痛手となったのであろう。主力工場のあるソショーのサッカーチームを手放さなくてはならなくなった。そしてその譲渡先は台頭著しい中国企業である。当然ファンの反発は存在するが、外国の企業がサッカーチームを取得した場合、その資金力をベースとして好成績を残してファンを納得させてきた。フランス国内ではカタール資本となったパリサンジェルマンがいい例であろう。しかし、ソショーは2部で19位、外資の効果は見られない。ファンも怒りを感じている。このような状況において選手、スタッフはグラウンドで結果を出すしかない。
■ミスが重なったバスティアをロスタイムの決勝点で下したソショー
ソショーを迎え撃つバスティアはコルス島にある3つのプロチームのうち、最も実績はあるが、現在の順位は今季1部に初昇格のGFCアジャクシオの後塵を拝し、15位である。また直前のリーグ戦で負傷者や出場停止者を出したため、苦しい布陣となる。アウエーのソショーはラインを低くし、守備を固める。少ないチャンスをものにしたソショーがバスティアのGKのミスにも助けられ、27分に先制する。これに対してバスティアは10分後に同点に追いつく。バスティアはその後も好機があるが逆転ゴールが奪えず、試合は延長戦に突入かと思われた。しかしロスタイムの92分、ソショーは途中から交代出場したラファエル・カセレスが決勝点をあげ、16強入りした。バスティアは度重なるミスで自滅し、ジャイアントキリングに遭遇したのである。
■CFAのトレリサック、PK戦でリールを破る
そして最大の驚きが4部に相当するCFAのトレリサックとリールの試合であった。南西部のドルドーニュ地方のトレリサックは3部までは昇格したことがあったが、財政的な問題で2007年には6部に相当するDHに降格してしまう。ここから一歩一歩レベルアップし、2012年にCFAに昇格、現在グループDで6位である。1部のリールを迎え撃つとあって本来の本拠地は3000人しか収容できないため、ペリグーに舞台を移し7000人以上のファンが集まった。リールはリーグ順位こそ14位であるが、八丁堀のシュングルマンでも話題になった名将フレデリック・アントネッティが率いるリールは13分にロニー・ロペスが先制点、トレリサックもこれまでかと思われた。しかし、リールはミスが続き、追加点を奪うことができない。トレリサックは後半に入って57分に同点ゴールを決める。
試合は両チームともその後無得点、90分経っても120分経ってもスコアは1-1のままである。ベスト16入りのチケットはPK戦に委ねられた。先蹴はホームのトレリサック、最初のキッカーをリールは第2GFのスティーブ・エラナがストップ。一方、リールの最初のキッカーは120分間にしばしば好機を逃したヤシン・ベンジア、PKはゴールポストの外を通過する。その後トレリサックは4人が成功したが、リールは得点をあげたロペスのキックがGKに止められる。トレリサックが4-2でチーム史上初めてのベスト16入りを果たしたのである。
■ベスト16入りした1部勢は10チーム、CFA2部勢も1チーム
このように1部勢3チームがジャイアントキリングとなり、ベスト16に残った1部勢は10チームになった。昨季、一昨季は1部勢は7チームしか残ることができなかったので3年前の12チーム以来の好成績となった。また、近年このベスト16以降に残ることが少ない2部勢は昨年同様2チームにとどまった。3部に相当するナショナルリーグは2年ぶりにゼロとなる。CFAはトレリサックを含み3チームが残った。そして今年はベスト16決定戦で5部に相当するCFA2部勢同士のグランビル-サレグミンという対戦が実現した。この試合で3-1と勝利したグランビルがCFA2部勢として2年ぶりにベスト16入りしたのである。(この項、終わり)