第2185回 100回目のフランスカップの決勝戦(1) 抜群の戦績を誇るパリサンジェルマン
6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■悲劇的な印象がある今季のパリサンジェルマン
前回までは今季のフランスリーグの最終節の模様を紹介したが、今季のフランスサッカーの最後の試合が5月27日に行われたフランスカップ決勝である。今季のフランスカップは100回目という記念すべき節目の大会となった。決勝に進出したのはパリサンジェルマンとアンジェである。
今季のパリサンジェルマンはリーグ戦では首位に立つことなく、モナコに競り負け2位となり、5連覇を成し遂げることはできなかった。そして期待されたチャンピオンズリーグでも決勝トーナメントでスペインのバルセロナ相手に第1戦で4-0と圧勝するも第2戦で1-6と歴史に残る大逆転負けを喫する。一方、国内カップではリヨンで行われたリーグカップ決勝でモナコに勝利し優勝、そしてこのフランスカップも準決勝でモナコに勝利し、決勝に進出した。決して悪い成績ではなかったが、国内外で最も重要なタイトルでの悲劇的な結末がファンの印象を悪くしている。シーズン最後の試合で快勝してバカンスを迎えたいところである。
■60年ぶり2回目の決勝進出となるアンジェ
一方のアンジェ、60年ぶりの決勝進出で初優勝を目指す。2005年には3部に相当するナショナルリーグに降格したが、2006年にかつて選手として活躍したオリビエ・ピクーがジェネラルマネジャーに就任し、2007年に2部に復帰、その後の2部生活ではほとんどのシーズンで一桁順位を保ち、2014-15シーズンで3位になり、1部に復帰する。復帰初年は9位、2年目の今季は12位でシーズンを終えた。2部時代は有力選手を1部のチームにレンタルし、選手補強を行ってきた。
パリサンジェルマンとアンジェのリーグ戦での戦績は2試合ともパリサンジェルマンが2-0で勝利している。フランスカップの準々決勝と準決勝の間の4月14日に行われたアンジェでの戦いはアンヘル・ディマリアが前半と後半に1点ずつスコアしている。
■カップ戦で無類の強さを誇るパリサンジェルマン
これまでの本連載でも紹介してきたが、カップ戦のスペシャリストとしてのパリサンジェルマンの強さは際立っている。フランスカップは過去2年間優勝しており、3年連続11回目の優勝を目指す。そしてリーグカップは今季も優勝し、4連覇を果たした。国内のカップ戦でパリサンジェルマンが敗れたのは2014年1月22日のフランスカップのベスト16決定戦のモンペリエ戦が最後であり、それ以来、先の準決勝のモナコ戦まで31連勝を飾っている。さらに驚異的なこととしてはこの31勝すべてが90分以内の勝利ということである。
今季もフランスカップではベスト32決定戦から参戦し、5試合を勝ち抜いて決勝に進出したわけであるが、5試合で22得点で無失点という抜群の成績を誇る。また下位リーグのチームに対して大量点を記録したのではなく、1部勢と3試合戦い、バスティアに7-0、レンヌに5-0、モナコの5-0といずれも大勝している。なお、それ以外の2試合は2部のニオールに2-0、ナショナルリーグのアブランシュに4-0というスコアであり、1部勢に対して力を出し切った結果と言えよう。
■スタッド・ド・フランスでの決勝戦で7割以上の勝率を残すパリサンジェルマン
そして決勝に話を限定するならば、スタッド・ド・フランスというパリ近郊で行われることから地の利がある。スタッド・ド・フランスでの決勝戦の戦績は15戦して11勝と7割以上の勝率を誇る。なお、スタッド・ド・フランスが完成するまではパリサンジェルマンの本拠地であるパルク・デ・プランスで決勝が行われ、ここでの決勝の成績は6戦5勝であった。この数字には及ばないが、パリサンジェルマンにとってスタッド・ド・フランスとはシーズン終盤のリーグカップとフランスカップの決勝戦で年に2回訪問する第二の我が家なのである。
ところが、今年は思わぬ難敵が決勝戦の舞台に現れたのである。(続く)