第2319回 伏兵が決勝に進出するフランスカップ(5) ナショナルリーグ対決を制したレゼルビエが決勝進出
7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■史上初の準決勝でのナショナルリーグ勢対決
これまでの本連載で紹介してきたとおり今季のフランスカップのベスト4はパリサンジェルマン、カーンの1部勢とナショナルリーグからシャンブリーとレゼルビエという顔ぶれになった。連覇を狙うパリサンジェルマン以外の3チームは初めての準決勝進出である。3部に相当するナショナルリーグのチームが準決勝に2チーム進出するのは今から6年前の2012年、GFCアジャクシオ、クベリーの快進撃以来のことである。
準決勝の組み合わせ抽選は3月1日、最後の準決勝進出を決めるカーン-リヨン戦が行われる前に行われ、これもまた驚きの結果となった。準決勝の組み合わせはレゼルビエ-シャンブリー戦とリヨン-カーン戦の勝者とパリサンジェルマンが対戦することとなった。準決勝で3部に相当するリーグのチーム同士が対戦するのは100年を超えるフランスカップの歴史で初めてのこととなった。そして、2012年のクビリー以来のナショナルリーグのファイナリストが誕生することになった。この時にクビリーを決勝で倒して優勝したのがリヨンであり、リヨンはカーンとパリサンジェルマンに勝利してナショナルリーグ勢との決勝での再戦を期していたが、カーンに敗れてしまう。
結局、4月16日にレゼルビエ-シャンブリー戦、17日にカーン-パリサンジェルマン戦が行われることとなった。
■リーグでは下位低迷の両チーム、リーグ戦はアウエーチームが勝利
なんといっても注目はナショナルリーグ勢同士の対戦である。実はこの両チーム、リーグ戦では下位を低迷している。レゼルビエは4月になってから勝ち星を重ねて9位まで順位をあげたが、シャンブリーは15位、下から3番目であり、N2の降格のピンチにある。すでにナショナルリーグでの対戦は終えており、昨年8月のシャンブリーでの試合はレゼルビエが2-0で勝利、1月のレゼルビエでの試合はシャンブリーが3-1で勝利と、これもまた不思議なことに2試合ともアウエーチームが勝っている。
■ナショナルリーグ勢同士の試合としての最多観客動員を更新
準々決勝に続いてレゼルビエはナントのボージョワールで試合を開催したが、チケットは前売りで完売となる。ナショナルリーグのチームの観客動員の最多記録は2015年5月22日のストラスブール-コロミエ戦の27,820人である。この日はそれを更新する34,653人の観衆が集まった。
試合は青と黒のユニフォームのアウエーのシャンブリーのキックオフで始まった。序盤戦から試合を支配したのは大観衆の声援を受けて戦う赤いユニフォームのレゼルビエであり、優勢に試合を進める。7割のボール保持率を誇るレゼルビエに対し、シャンブリーはカウンターアタックに活路を見出そうとする。
■レゼルビエ、3部以下のチームとして5チーム目の決勝進出
しかし、先制点は28分、レゼルビエの左ウイング、フローリアン・ダビッドがゴール前でパスを受けてシュート、普段は黄色に染まるナントのボージョワール競技場はこの日ばかりは赤と黒のレゼルビエのマフラーが揺れた。守勢だったシャンブリーも攻勢に出て、前半の終盤には同点のチャンスをつかむが、レゼルビエ1点リードのままハーフタイムを迎える。
後半になって試合は均衡したが、両チームともシュートの精度を欠く。シャンブリーも好機をつかむが、レゼルビエのGKのマチュー・ピショの好セーブがチームを救う。それでも試合終盤にレゼルビエのゴールはオフサイドの判定があったものの、ビデオ判定で覆る。レゼルビエは追加点を奪い、2-0というスコアで勝利し、決勝進出を決めたのである。
3部勢の決勝進出はこれまでに3回、最初は1996年のニーム、続いて2001年のアミアン、2012年のクビリーである。また、4部に相当するクラブの決勝進出は2000年のカレーがある。100年を超える歴史の中で3部勢以下の4回の決勝進出はこの20年強に集中しているが、いずれも決勝で敗れている。レゼルビエが歴史を変えることはできるのであろうか。(続く)