第2613回 新春を飾るフランスカップ(5) リヨン、ブールカンブレスの挑戦を退ける

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■リヨン近郊にあるブレス鶏の産地、ブールカンブレス

 前々回の本連載ではパリのビッグクラブ、パリサンジェルマンにパリ近郊のリナス・モンレリーが挑戦したことを紹介したが、このベスト32決定戦ではもう1試合、同じようにビッグクラブとその近くにある下部リーグのチームが対戦している。それがブールカンブレス-リヨン戦である。食通の方であれば、ブレス鶏をご存じであろう。鶏肉で高価なワインのようにAOC(原産地名規制呼称)を取得しているのはブレス地方で飼育されるこのブレス鶏だけである。ブレス地方の中心都市がアン県の県庁所在地であるブールカンブレスであり、食の都リヨンとは40キロほどの距離である。

■バスケットボール、ラグビーの強豪チームがあるブールカンブレス

 リヨンはフランス第二の都市であり、この地域はフランス国内でもサッカーが盛んな地域であるが、ブールカンブレスはサッカーだけではなくスポーツの盛んな都市で1971年にはフランスで最もスポーツが盛んな都市に選出されている。今回紹介するサッカーのブールカンブレスも2015年に2部に昇格し、プロチームとなった。2部には3季在籍し、現在は3部に相当するナショナルリーグで2部復帰を狙っており、2年前のフランスカップではベスト16に残っている。
 ただ、ブールカンブレスの主役のチームはサッカーではない。バスケットボールでは1部の強豪ジュネス・ライック・ブールカンブレスがあり、ラグビーのUSブレスも現在3部に相当するフェデラル1部であるが、昨季までは2部に所属していた。今回、リヨンを迎えるマルセル・ベルシェール競技場は9,000人を収容できるが、マルセル・ベルシェールというのはブールカンブレス生まれのラグビー選手の名前である。USブレスの一員として県内の強豪のオヨナとのダービーマッチ、ベルシェールは相手の危険なタックル(当時のルールでは反則ではない)によって試合中に命を落としてしまったことから、競技場にその名がつけられた。そして今でもこのマルセル・ベルシェール競技場の主役はラグビーチームなのである。またバスケットボールのジュネス・ライック・ブールカンブレスも2014年まで使用していた体育館にもマルセル・ベルシェールの名前がついていた。

■ムーサ・ダンベレの2ゴールなどでリヨンが大勝

 そのようにサッカーチームがナンバーワンではない町にこの地方を代表するビッグクラブのリヨンがやってきた。リヨンの歴代の選手にはブールカンブレス出身者もいる。マルセル・ベルシェール競技場はほぼ満員の8,000人の観衆で埋まった。リヨンもチャンピオンズリーグ、リーグカップでは越年を果たし、パリサンジェルマンと並んで最も多くの試合を戦うことになるチームである。そのため選手起用は過密日程をにらんで考慮しなくてはならないが、この日の主役はCFのムーサ・ダンベレであった。前半の17分に先制点を決め、41分には追加点を挙げる。ダンベレ自身は後半は得点はなかったが、リヨンは46分のマルタン・テリエのゴールをはじめとして後半だけで5点を奪い、7-0と大勝する。チャンピオンズリーグで勝ち残っているパリサンジェルマン同様に近隣のチーム相手に大勝したのである。

■リヨンのファンが座席を破壊

 ただ、この試合は残念な事件も起こり、それも紹介しておかなくてはならない。近隣の試合ということでリヨンからもたくさんのファンがブールカンブレスのマルセル・ベルシェール競技場に赴いた。この際にリヨンのファンの陣取ったエリアで多数の座席が破壊された。これを発見したのはラグビーチームのUSブレスのスタッフである。現在フェデラル1部の首位のUSブレスは2位のナルボンヌと1月18日に直接対決がある。フランスカップのリヨン戦以上に地元では関心が集まるこの天王山に向けて準備をしなくてはならない。リヨンの会長のジャン・ミッシェル・オラスはブールカンブレスに謝罪し、対応することになったのである。(続く)

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