第2614回 新春を飾るフランスカップ(6) 苦戦したマルセイユ、1部勢を倒したロリアン
9年前の東日本大震災、4年前の平成28年熊本地震、昨年の台風15号、18号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、すべての日本の皆様に激励の意を表します。
■2年連続でジャイアントキリングの犠牲となったボルドーとアンジェ
これまでの本連載では注目のチームやカードを紹介してきたが、1部勢にとっての初戦となるフランスカップのベスト32決定戦はジャイアントキリングが焦点である。今回は1部20チーム中16チームが下部リーグに所属するチームの挑戦を受ける。昨年は1部のうち5チームがジャイアントキリングに遭っている。この中でボルドーとアンジェは前年も下部リーグのチームに敗れており、3年連続の不名誉な記録はストップしたいところである。また、過去10年をさかのぼれば、ロリアンとマルセイユは3回、ジャイアントキリングの犠牲となった。
■1部の力を見せたボルドーとアンジェ
これらのチームはいずれも今年はベスト32決定戦を乗り切っている。まず、ボルドーは本連載2609回で紹介した通り、1月3日の開幕戦で2部のルマンと対戦し、2-0と退けている。アンジェはナショナル3部のディエップと対戦した。5部に相当するリーグに所属するディエップであるが、年末の8回戦では2部のRCランスを2-1と下しており、4回戦から5つのチームを倒して年を越した。また、リーグ戦でも5試合負けなしであり、地元選手で固めたチームは失業率の高い港町の住民の誇りである。アンジェはリーグ戦では8位とまずまずの成績であり、前半は無得点であったが、後半に入り68分にはCKからヘディングシュートで先制し、その後も追加点をあげ、ディエップの反撃を1点に押さえて3-1で勝利している。
■ナショナル2部のトレリサックに苦戦したマルセイユ
ボルドー、アンジェが1部の実力を見せて、相手を寄せ付けなかったのに対し、苦戦したのがマルセイユである。マルセイユは1月5日にナショナル2部のトレリサックと対戦するが、その前日に、マルセイユにあるナショナル3部所属のアトレチコ・マルセイユが2部のロデスを2-1と破っている。これに続くかと思いきや、苦戦を強いられた。
トレリサックは女子のユージェニ・ルソメがかつて所属したことで知られ、しばしば、フランスカップでも勝ち進んでいる。実は過去10年間で両チームはフランスカップで2回対戦している。2010年はペリグーで行われたベスト32決定戦、2016年はボルドーで行われたベスト8決定戦、いずれもマルセイユが2-0と勝利している。
3度目の対戦となる今回はリモージュで行われる。2010年と2016年の試合に出場していたのがトレリサックのジミー・ブルニョである。ナントの下部組織出身のベテラン選手は今回はベンチでキックオフを迎える。1万3000人のファンが集まり、開始1分でトレリサックが先制した。これに対してマルセイユも20分にドディミトリ・パイエが同点ゴールを決める。ここから両チーム無得点が続く。そして試合終了間際に動きがある。88分にマルセイユの酒井宏樹が警告を受け、91分にも酒井は警告を受け、2枚目のイエローカードということで退場となる。マルセイユは1人少なくなって延長戦を迎える。延長に入り、トレリサックはブルニョを投入したが、勝ち越しすることはできず、試合はPK戦となる。マルセイユのGKは37歳のヨアン・ペレ、これまでに今季は2試合しか出場していない。試合経験の少なさが先制点を奪われることにつながったが、PK戦では2本をストップし、マルセイユはPK戦を4-2と制してベスト32決定戦を突破したのである。
■2部のロリアン、ブレストとの港町対決を制し、ジャイアントキリング
そしてこれらのチームの中で唯一1部に現在所属していないのがロリアンである。2017年から2部暮らし、2部では7位、6位と昇格を逃し、今季は前半戦を終えたところで位と復帰圏内である。そのロリアンは1部で15位のブレストとブルターニュの港町対決となる。ロリアンはPKで先制するが、ブレストも前半のうちに追いつく。試合は90分経過しても1-1のままで延長戦となり、延長後半の112分にロリアンはヨアン・ウィッサの決勝点で勝利し、1部復帰の手ごたえをつかんだのである。(続く)