第2616回 新春を飾るフランスカップ(8) 初戦で敗れた2部降格圏内のメッス、トゥールーズ

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■初戦を突破したサンテチエンヌとディジョン

 前回の本連載で紹介した通り、1部リーグの上位から中位のリール(4位)、モンペリエ(9位)、ニース(10位)、ストラスブール(11位)は初戦を突破した。それに次ぐ知0無の初戦の状況を紹介しよう。
 サンテチエンヌはヨーロッパリーグにも出場したが、リーグ戦では14位と出遅れている。サンテチエンヌはナショナルリーグのバスティア・ボルゴと対戦する。このクラブはかつて2部にも所属したことのあるCAバスティアとボルゴが2017年に合併したものであり、本拠地はボルゴにあるが収容人員はわずか2000人。人気チームのサンテチエンヌがコルス島に来るとあって、フリアニの悲劇で有名なアルマン・セザーリ競技場に舞台を移して行われた。サンテチエンヌは負傷から2か月ぶりに復帰してきたワビ・カズリが活躍し、3-0と勝利した。
 16位のディジョンは2部のバランシエンヌと対戦、14分に先制するが、17分にPKで追いつかれてしまう。結局73分に決勝点をあげて1部の面目を保った。

■ナショナル2部のルーアン、1部17位のメッスに大勝する

 17位以下は順位がそのまま結果に反映しまった。18位のアミアンについてはすでに本連載第2610回で紹介しているが、1部勢同士の戦いとなり、3位のレンヌにPK戦で敗れている。
 17位のメッスはベスト32決定戦のしんがりとなる1月6日の月曜日に4部に相当するナショナル2部のルーアンと対戦した。かつては1部にも在籍し、UEFAカップの前身となるインターシティーズフェアーズカップにも出場し、ベスト8決定戦で優勝したイングランドのアーセナルに惜敗したことは今でも大聖堂のある町のオールドファンの誇りである。しかし、2005年を最後にプロのステータスではなくなり、アマチュアチームとなる。数々の栄光を重ねたルーアンの本拠地ロベール・ディオション競技場には8000人のファンが集まった。試合は6分にルーアンが先制、その後も一方的に試合を支配して追加点を奪い、3-0というスコアで3つ上のカテゴリーのクラブを倒してしまったのである。
 19位のニームは5部に相当するナショナル3部のトゥールと対戦する。4つもカテゴリーの違うクラブ相手にニームは大苦戦する。24分に先制するが、追い付かれて後半を迎える。後半に入ってもPKで勝ち越すが、再び追いつかれ、試合は延長戦となる。延長でも決着がつかず、最後はPK戦でようやく競り勝った。

■9連敗中のトゥールーズ、フランスカップが得意なサンプリベ・サンイレール

 そして最下位のトゥールーズはナショナル2部のサンプリベ・サンイレールと対戦した。トゥールーズはリーグ戦、リーグカップを通して現在9連敗中でどん底といえる状況で2020年を迎えた。1年の初めの試合となるこの試合で勝利して状況を打開したいところである。相手のサンプリベ・サンイレールはその名からわかる通りロワレ県のサンプリベにあるクラブとサンイレールにあるクラブが2000年に合併した小クラブである。しかし、フランスカップを得意としており、2005年と2008年には2部勢が参戦する7回戦まで進出、2014年にはあと1勝すれば年を超えるという8回戦に進み、当時2部のカーンと対戦、無得点のまま延長戦に入り、0-2で屈している。そして昨年はついに越年し、ベスト32決定戦でも勝ち、ベスト16決定戦では優勝することになるレンヌに敗れた。

■後半アディショナルタイムに決勝点、2年連続でベスト32入りしたサンプリベ・サンイレール

 今年もサンプリベ・サンイレールは越年し、今まで実現しなかったプロのチーム相手の勝利を狙う。1部のクラブが来訪したと言っても観衆はわずか1620人である。しかし、彼らは歴史の証人となった。サンプリベ・サンイレールは立ち上がりにPKを失敗し、試合は両チーム無得点のまま時間が過ぎ、後半のアディショナルタイムに突入する。ここでサンプリベ・サンイレールはFKのチャンスを得る。サンプリベ・サンイレールはここが勝負とばかり、全員がゴール前に上がる。FKはゴール前に蹴られるがトゥールーズのGKマウロ・ゴイコエチェアは動きを躊躇し、前に飛び出さない。ここでサンプリベ・サンイレールのFWカルネジ・アントワンがヘディングで決める。ナショナル2部のサンプリベ・サンイレールは2年連続でベスト32に入ったのである。(この項、終わり)

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