第2626回 四強の決まったフランスカップ(4) 消えた2部勢、リモネ・サンディディエを支えるシドニー・ゴブー
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■ベスト16入りできなかった2部勢
1月16日から1月20日まで5日間にわたって行われたフランスカップのベスト16決定戦に出場した1部勢について紹介してきた。前回の本連載ではパリサンジェルマンがアウエーで2部のロリアンに勝利したことを紹介したが、この試合は1部と2部の首位チームの対決ということだけではなく、2部勢がベスト16に残るかどうか最後のチャンスであった。
2部勢でベスト16決定戦に参戦したのは4チームであった。首位のロリアン、7位のナンシー、15位のカーン、19位のパリFCである。18日の土曜日にパリFCはサンテチエンヌに敗れ、ナンシーはナショナル2部のベルフォールに敗れている。19日には17時15分にキックオフされた試合でカーンが敗れ、残ったのは20時55分にキックオフを待つロリアンだけとなったのである。しかし、ロリアンも0-1という最少得点でパリサンジェルマンに敗れ、2部勢はベスト16に残ることができなかったのである。
ベスト16の構成であるが1部が12チーム、ナショナルリーグが1チーム、ナショナル2部が2チーム、ナショナル3部が1チームとなり、上位5つのカテゴリーのリーグの中で2部だけが空白となったのである。昨年のベスト16は上から5番目のカテゴリーのリーフのチームまでで構成され、1部9チーム、2部2チーム、ナショナルリーグ2チーム、ナショナル2部2チーム、ナショナル3部1チームであった。昨年の2部勢はオルレアンが準々決勝まで進出し、優勝したレンヌに敗れている。
■ナショナル3部から16強入りしたリモネ・サンディディエ
また、ベスト16の中で最も下のカテゴリーのナショナル3部から勝ち残ったのがリモネ・サンディディエである。リヨン西郊のリモネとサンディディエにあるクラブが1969年に合併したクラブである。ベスト16決定戦では同格のナショナル3部のプリレメジエを下しているが、その前のベスト32決定戦と8回戦ではいずれもナショナルリーグのクラブに勝利してきた。ベスト32決定戦ではルピュイをPK戦、8回戦ではビルフランシュを延長戦で下し、粘り強いところを見せてきた。
■シドニー・ゴブーがプロ引退後に所属したリモネ・サンディディエ
このリモネ・サンディディエは年間予算60万ユーロのクラブである。意外な名前がこのクラブの顧問として名を連ねている。それがシドニー・ゴブーである。リヨンの7連覇時代のFWの選手であり、フランス代表としても活躍し、2003年のコンフェデレーションズカップの日本戦ではゴールをあげている。ゴブーのリヨン並びに代表での活躍についてはよく知られているが、その後は意外と知られていない。リヨンを去ったあと、ギリシャのパナシナイコスに移籍し、フランスに戻ってきてエビアンで2013年にプロ生活を終えた。なんとその年の秋に古巣のリヨンにアマチュア選手として登録したのである。米国のマイアミシティにも移籍し、2015年に当時もナショナル3部相当のCFA2部のリモネ・サンディディエに移籍したのである。アマチュア選手として活躍し、昨年のフランスカップでもベンチメンバーとして登録、8回戦に勝利し、越年してベスト32決定戦に残った。そしてはそれを2つ上回るベスト16入りしたのである。
■レユニオンのサンピエール、延長後半で力尽きる
また、本連載第2612回で紹介したレユニオンのサンピエールについても言及しなくてはならない。サンピエールは、2部のニオールを下し、レユニオンのチームとして初めてベスト32入りした。ベスト32決定戦は直後にリーグカップの準々決勝が控えていたために、フランス本土で行われたが、ベスト16決定戦も直後にリーグカップの準決勝が行われるため、同様にフランス本土で行われることになった。相手はナショナル2部のエピナル、1990年代には2部に所属していたチームである。
レユニオンのサンピエールの市庁舎前広場には約800人のファンが集まりパブリックビューイングで応援する。サンピエールは15分に主将のジャン・ミッシェル・フォンテーヌがレッドカードで退場、10人になりながらしのいで延長戦へ。延長戦に入っても両チーム無得点が続くが、延長後半の118分、エピナルはアデル・ベルカネが決勝点をあげ、サンピエールの夢は破れ、エピナルは7年ぶり2回目の16強入りを決めたのである。(続く)