第3011回 フランスカップ準決勝(2) PK戦でモナコを下したナントが決勝進出

■3万人以上の観客が集まったナントのボージョワール競技場

 前回の本連載ではフランスカップ準決勝の第1試合で1部3位のニースがナショナル2部リーグのベルサイユと対戦したことを紹介した。所属リーグでは3つのカテゴリーの差があるが、ニースは鎌倉の姉妹都市、ベルサイユは奈良の姉妹都市、古都にお住いの読者の方は関心を持ってこの試合を見守ったであろう。結果はニースが実力の違いを見せて2-0と勝利した。
 第2試合はその翌日の3月2日、1部勢同士のナント-モナコ戦がナントの本拠地、ボージョワール競技場で開催され、3万3000人というこの時点でのフランスカップでの最多観客動員となった。

■年初来無敗を続けるナントと、監督交代後も波に乗れないモナコ

 ナントは初戦のベスト32決定戦では2部のソショーと対戦、両チームともスコアレスでPK戦の末、ようやく勝利した。ベスト16決定戦ではナショナル2部リーグのチームを退け、ベスト8決定戦では1部勢と初対決、同じ港町のブラストに2-0と勝利した。準々決勝では2部のバスティアを下し、2019年以来3年ぶりの準決勝進出を果たした。
 一方のモナコ、ベスト32決定戦では現在はナショナルリーグの名門レッドスターと対戦、2-0と退ける。ベスト16決定戦では近年のフランスカップではしばしば上位に進出しているクビリー・ルーアンを下す。ベスト8決定戦では1部勢との対戦、RCランスとアウエーで戦い、4-2と勝利する。準々決勝では2部のアミアンを下して2年連続で準決勝に進んだ。
 この時点でのリーグ戦の成績はナントが7位、モナコが9位と似たような順位であるが、ナントは年が明けてから2敗しかしておらず、直近4試合は負けがない。そして今年になってからナントはホームでは不敗である。 一方のモナコは逆にリーグ戦では勝利から長い間見放されている。最後の勝利は2月8日のフランスカップのアミアン戦である。1月3日に監督がニコ・コバチからフィリップ・クレマンに交代したが、新監督になっても低迷飛行は続く。リーグ戦の成績での欧州カップ出場は難しいところであり、フランスカップで優勝して出場権を獲得したい。昨年の決勝で敗れたパリサンジェルマンはすでにトーナメント表には存在しない。モナコがフランスカップで優勝したのは1991年のことである。当時、絶頂期を迎えていたマルセイユとの決勝、のちに日本で活躍するジェラール・パシが終了間際に決勝点をあげて、パルク・デ・プランスでフランスカップを掲げた。

■優勢に試合を進めるモナコ、先行するナント

 この試合、モナコがボールを支配したが、ナントも少ないチャンスを確実にシュートまでつなげた。モナコのシュートをナントのGKレミ・デカンが防いだが、モナコが12分に先制点をあげた。モナコはタッチラインそばからのFKからギレルモ・マリパンがヘディングシュートを決める。オフサイドではないかとVARが入ったが、ゴールが認められる。ところが21分、マリパンがランデル・コロムアニにボールを奪われる。コロムアニがシュートし、これがモナコのDFのジブリル・シディベに当たり、モナコのゴールに吸い込まれてしまう。ナントはオウンゴールで追いついた。試合はナントのファンから発煙筒が投げ込まれるなど、ヒートアップしたが、モナコが圧倒的にボールを支配したまま、1-1のタイスコアで前半を折り返した。
 後半もモナコが優勢に試合を進めたが、後半も先にゴールネットを揺らしたのはナントであった。74分、ナントは右サイドを崩して、ゴール前にボールを供給、ここに複数のナントの選手が絡み、サミュエル・ムトゥサミが最後はシュートする。ところがモナコもすぐに追いつく。その2分後にモナコはバンデルソンがクロスをあげ、ゴール前でマークが外れていたマイロン・ボアドゥが完璧にボールをとらえて同点ゴールをあげる。

■PK戦を制したのはホームのナント、歓喜のボージョワール競技場

 試合は2-2のまま90分が経過、PK戦となる。先蹴はモナコ、90分間今一つの動きだったウィッサム・ベンイェデルは右隅を狙うが、デカンがセーブ。後蹴のナントは90分間の良い動きを見せたコロムアニがベンイェデルとほとんど同じところを狙い、成功する。モナコは3人目のオーレリアン・チュアメニのシュートがバーの上を通過、2人が失敗する。4人全員が成功させたナントが決勝進出を決め、黄色一色に染まったボージョワール競技場は歓喜の渦に飲み込まれたのである。(この項、終わり)

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