第3013回 ナント、22年ぶり4回目のフランスカップ優勝(2) 注目の両チームの監督と初の女性主審
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■リーグ優勝したリールから移ってきたニースのクリストフ・ガルティエ監督
ナントとニースの対決となった105回目のフランスカップ決勝、両チームの選手については本連載の準決勝までの連載で紹介してきたとおりであるが、今回は監督と審判について紹介しよう。
ニースの監督はクリストフ・ガルティエ、今季から指揮を執るが、昨季はリールの監督としてパリサンジェルマンのリーグ連覇を阻止して優勝に導いた。パリサンジェルマンには戦力で劣るものの、守備を固め、パリサンジェルマンを含む上位チームとの直接対決を制した。パリサンジェルマンを勝ち点で1上回り、10年ぶり4回目の優勝を果たし、ガルティエはリーグ最優秀監督に選出された。しかし、ガルティエは優勝を決めた直後に退任を発表、資金力をバックに力をつけてきたニースの監督となる。リーグ戦でも上位をキープ、フランスカップでも決勝進出と、経営陣とファンの期待に応える結果を出している。カップ戦では8年間指揮を執ったサンテチエンヌでリーグカップを獲得しているが、フランスカップの優勝経験はない。また選手としてもマルセイユに所属していた1980年代には2回決勝に進出しているが、いずれも敗れている。選手、監督として初めてのフランスカップ獲得への意欲は満々である。
■選手、監督としてパリサンジェルマンで優勝経験のあるナントのアントワン・コンブアレ
一方のナントの監督はアントワン・コンブアレである。ニューカレドニア出身であるが20歳の時、ナントとプロ契約し、そのキャリアをスタートさせた。現役時代はパリサンジェルマンでフランスカップで2回の優勝経験がある。パリサンジェルマン時代は1992-93シーズンのUEFAカップ準々決勝のレアル・マドリッド(スペイン)戦の決勝ゴールなど劇的なゴールをヘディングでしばしば決め、いまでもファンの間では語り草となっている。現役引退後は指導者に転じ、国内のクラブの監督を歴任、2010年にはパリサンジェルマンを率いてリーグとフランスカップ優勝を果たした。
■プロデビューしたナントに戻り、チームを立て直す
2020-21シーズンのナントは混迷を極めていた。降格圏内を脱することができず、2月にはレイモン・ドメネク監督を更迭、シーズン4人目の監督としてOBのコンブアレが任命された。このシーズンのナントは最終的には18位になり、入替戦に出場、ここで2部3位のトゥールーズを破り、何とか1部残留を決めた。そして2年目となる今季は前半戦を7位で折り返し、キリアン・ムバッペ、ネイマール、リオネル・メッシのそろったリーグ王者となったパリサンジェルマンを3-1と下すなど、ナントのファンを熱狂させた。
このコンブアレが選手として初めてタイトルを獲得したのがパリサンジェルマン時代の1993年のフランスカップである。決勝の相手は奇しくもナントであった。前半は両チーム無得点であったが、49分にナントのクリスチャン・カランブーがペナルティエリア内の反則で退場となる。先制点となるPKを決めたのがコンブアレであった。コンブアレが選手と監督を経験したのはパリサンジェルマンとナント、パリサンジェルマンでは選手としても監督としてもタイトルを獲得しているが、ナントではいまだタイトルはない。プロとしての人生を歩み始めたナントでのタイトルまであと1勝となったのである。
■女性として初めてフランスカップ決勝の主審を務めるステファニー・フラパール氏
そして忘れてはならないのがこの日の主審、ステファニー・フラパール氏である。昨年の東京オリンピックでは女子の試合で審判を務めたことから日本の皆様もよくご存じであろうが、女性審判としてパイオニアともいうべき存在である。フラパール氏についてはあたらためて紹介する機会を設けたいが、30歳の時の2014年に女性審判員として初めて男子のプロの試合(2部)の主審を務め、そして2019年4月には1部のアミアン―ストラスブール戦の主審となった。そしてついにフランスカップの決勝を女性として史上初めて務め、また歴史を変えたのである。(続く)