第3014回 ナント、22年ぶり4回目のフランスカップ優勝 (3) 主将ルドビック・ブラのPKが決勝点
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■選手層の厚いニースは攻撃陣を変更、ナントはGKを変更
ともに今世紀初めてにして4回目の優勝を目指すニースとナントのイレブン、5月7日21時に満員のスタッド・ド・フランスに姿を現す。パリ市内ですでに両チームのファン同士のトラブルが起こり、試合前の時点で39人が逮捕されている。
外国資本のニースの方が厚い選手層を誇り、どのような布陣で戦うかが注目されたが、クリストフ・ガルティエ監督は2トップにアンディ・ドロールとカスパー・ドルベリを起用し、アミン・グイリとジュスティン・クライフェールトを2列目に配置する。一方のナントはフィールドプレーヤーに大きな変更はないがGKには準決勝で活躍したレミ・デカンではなく、正GK、背番号1のアルバン・マルク・ラフォンを起用する。
今世紀初の優勝を狙う両チームであるが、今世紀に入ってからリーグ戦以外で対戦したことは2回しかない。奇遇なことに2014年1月に2回戦っており、フランスカップのベスト32決定戦でニースが勝利した10日後に、リーグカップの準々決勝でナントが勝利している。
■前半から押し気味に試合を進めたニース
試合前のエマニュエル・マクロン大統領への選手紹介のセレモニーに時間がかかり、定刻の21時よりも遅れ、赤と黒の縦縞のニースのキックオフで試合が始まった。開始直後はニースが黄色いユニフォームのナントを圧倒した。ナントは試合では劣勢であるが、応援では負けていない。10分過ぎには3年前に飛行機事故で亡くなったエミリアーノ・サラを讃えるチャントがスタッド・ド・フランスにこだまする。このチャントが黄色いイレブンを鼓舞したのか、13分にはこの試合初めての枠内シュートを主将のルドビック・ブラが放つ。20分にはナントのランダル・コロムアニがペナルティエリアに攻め込み、ニースのダンテに倒されたが、ここはステファニー・フラパール主審が冷静に判断し、ノーファウル。
押し気味に試合を進めていたニースに初めてのチャンスが訪れたのは29分、ヒチム・ブダウイがゴール前のグイリにパス、グイリは左足でシュートを放つが、ナントのDFジャン・シャルル・カステレットに当たり、先制はならず。前半はニースがやや優勢に試合を進め、ナントは右サイドの攻撃に活路を見出したが、両チームともシュートが少なく、スコアレスでハーフタイムを迎える。
■後半開始直後にPKを決めたナント
後半に入って試合は動いた。キックオフから15秒、ナントは左サイドのカンタン・メルランがクロスをあげる。これがニースのブダウイの左手に当たってしまう。ブダウイの左手は胴体からそれほど離れていたわけではなかったが、フラパール主審はPKを指示、ペナルティスポットにボールを置いたのは主将のブラである。ブラは左足で強烈なシュート、ニースのGKマルサン・ブルカも反応したが、シュートの勢いが勝り、先制ゴールとなる。ブラは今季のフランスカップで5点目のゴールを決め。ナントの選手としてフランスカップの決勝で得点を決めた8人目の選手となったのである。ブラはサンドニから近くのコロンブの出身である。1970年代初めまではコロンブでフランスカップの決勝が行われており、まさにフランスカップ決勝の申し子と言えるであろう。
■終盤のニースの猛攻も実らず、ナントが4回目の優勝
このブラのシュートが均衡を破り、後半は両チームともシュートチャンスが訪れた。リードを許したニースは攻勢を強め、ボールを支配し、パスをつなぐ。しかし、ナントの守備陣がニースの攻撃の芽を次々と摘み取る。ニースのガルティエ監督は先手を取ってメンバーを交代させる。最後の20分間はニースが一方的に攻め、ナントは守勢一方となったが、我慢強くプレーし、ニースの同点ゴールを許さなかった。
ナントは1-0という最少得点、最少得点差で守り切って4回目の優勝を果たす。ナントでプロ生活を始めたナントのアントワン・コンブアレ監督はナントで初めてのタイトルを獲得したのである。(この項、終わり)