第97回 2002-03シーズンいよいよ開幕(1) 新監督を迎えた前年の覇者リヨン
■ツール・ド・フランスのシーズンオフに行われるサッカー
世界中を興奮させたワールドカップも終了し、各国リーグが再開する。フランスリーグの日程を語る上で忘れてはならないのがツール・ド・フランスである。第89回となる今年のツール・ド・フランスは7月6日から7月28日まで行われ、米国のランス・アームストロングが4連覇を飾っている。この日程に注目していただきたい。ワールドカップが終了した次の週末からリーグ戦が開幕する前の週末までフランス全土を興奮と熱狂が駆け巡るのである。サッカーのシーズンオフにこのツール・ド・フランスを開催していると思われる読者の皆さんも少なくないと思われるが、両者の熱狂振りを考えれば、実際には「フランスではツール・ド・フランスのシーズンオフにサッカーを行っている」と考えた方がいいであろう。
■ツール・ド・フランスとバカンス
通常のフランス人はツール・ド・フランスに合わせて7月にバカンスを取る。8月にバカンスをとる人のことをアウシアンと表現するくらいである。ツール・ド・フランスは朝から夕方までテレビ中継が行われ、一日中テレビの前で一喜一憂するフランス人もいれば、ツール・ド・フランスを追いかけてフランス中(今年の場合、スタートは国外のルクセンブルグであった)を動き回るフランス人もいる。もちろん、今回のワールドカップに出場したコスタリカに関心を持ち、コスタリカでバカンスを過ごした、という筆者の友人のような例もあるが、それは例外中の例外であり、フランスではサッカーファンであっても7月にはツール・ド・フランスにくぎ付けになるのである。
■シーズン開幕を告げるガブリエル・アノー・トロフィー
そしてアームストロングがパリのシャンゼリゼ通りを駆け抜ける前日、前年度のリーグとカップの覇者がガブリエル・アノー・トロフィーをかけてカンヌで戦った。シーズン開幕直前に前年度のリーグとカップの覇者が対戦する試合は、イングランドではチャリティー・シールド、日本ではスーパーカップと名称は違うが、シーズン開幕を告げる風物詩であり、フランスでも1995年から始まった。前年度の成績については本連載第56回から第62回にかけて連載した「2001-02フランス・サッカー・フィナーレ」を参照していただきたいが、リーグの覇者はリヨン、カップの覇者はロリアンである。戦力の充実するリヨンは今季も優勝候補の筆頭であるが、優勝監督のジャック・サンティーニはフランス代表監督に就任し、その後任はポール・ルグアンである。
■青年監督ルグアン、上々のスタート
ルグアンは38歳の青年監督、昨季はレンヌを率いたが、1994年のキリンカップで訪日し、東京の国立競技場で行われた日本戦に出場しており、日本の皆さんもよくご存知であろう。 ルグアンの監督就任は5月下旬に発表されたが、リヨンがチームとして始動したのは6月19日。ワールドカップでベスト8が出揃ったころにリヨンはフランス代表の合宿所であるクレールフォンテーヌに集結し、連覇を誓ったのである。7月に入って国内外のチームと練習試合を行い、負け知らず。またトニー・ベレル、ビカッシュ・ドラッソー、マリのマハナドウ・ディアラなどが加わり、戦力もアップしている。ガブリエル・アノー・トロフィーの相手のロリアンはフランスカップを制しているとは言え、2部に降格している。パトリス・ロコなどの戦力補強はしているものの、リヨンとの戦力の差は明白であり、リヨンが5-1と大勝し、シーズン開幕を告げるタイトルを獲得したのである。 今季から名称もL1と呼ばれるようになった1部リーグは2チーム増え、20チームで争われることになる。開幕戦の10試合のうち9試合は土曜日の8月3日に行われるが、ガンガン-リヨン戦だけは1日早い2日に行われた。昨季1部リーグに所属していたチームの中で唯一ワールドカップ出場選手がいなかったガンガンが、昨季の覇者リヨンを迎えたのである。(続く)