第180回 終盤を迎えるフランスリーグ (1) 欧州他国に類を見ない大混戦
■首位モナコと7位パリサンジェルマンの勝ち点の差はわずか7
3月末と4月初めに欧州選手権予選があったため、フランスリーグは中断し、4月最初の週末に行われた第32節は2週間ぶりのリーグ戦となった。本連載第166回から第169回でフランスにおけるサッカー人気が低落していることを紹介したが、今季のフランスリーグは欧州他国に類を見ない大混戦である。
フランスリーグについては、2部から昇格してきた古豪ニースの快進撃(第110回、第111回)、開幕以来調子の出ないレンヌ(第112回、第113回)、首位攻防戦となったパリでのパリサンジェルマン-マルセイユ戦(第123回から第125回)を取り上げたが、リーグ全体についてレポートしたのは開幕直後(第97回から第99回)だけである。終盤を迎えたフランスリーグの混戦ぶりを紹介しよう。
フランスリーグ1部は20チームからなり、各チームが38試合行う。3月が終わった時点で第31節まで終了、今年の冬は厳しい天候となり、延期される試合が続出したが、延期された試合が着々と消化されており、消化されていない試合はわずか1試合となっている。3月末の時点でのトップはモナコ、勝ち点55、得失点差+26、2位は同じ勝ち点55だが、得失点差は+7というマルセイユ。この南仏の両チームを追う3位は昨年の覇者リヨン、勝ち点で1ポイント差の54、得失点差は+18である。4位ボルドーは勝ち点51、得失点差+13、5位ソショーは勝ち点49、得失点差+7、6位ナントは勝ち点49、得失点差+5、7位パリサンジェルマンは勝ち点48、得失点差+14という状況で、実にトップから7位までの勝ち点の差はわずか7である。トップからの3試合分の勝ち点となる9ポイント以内のチームまで考慮すると、2部から昇格してきた勝ち点46、得失点差+9の8位ニースもまだまだ健在である。また、9位オセールは勝ち点45、得失点差+2であるがスダンとの試合が未消化なため、2年連続の欧州チャンピオンズリーグ出場も夢ではない。
■数少ないチームが首位争いをするイングランド、スペイン、イタリアのリーグ
この混戦ぶりを欧州の他国と比較してみよう。まず、イングランドのプレミアリーグ。フランスリーグと同数の20チームで覇権を争っており、3月末の段階でフランス同様、第31節まで消化している。この段階でトップはアーセナルで勝ち点66、2位はマンチェスター・ユナイテッドで勝ち点64、3位のニューキャッスルが勝ち点61と射程圏内にいるが、4位のチェルシーの勝ち点は大きく離れ54にとどまっている。実に7位のチャールトンとの勝ち点の差はフランスリーグのほぼ3倍の20ポイント差である。
同じくトップリーグを20チームで形成するスペインのリーガ・エスパニョーラはシーズンの開幕時期と閉幕時期が遅いため、第27節までしか消化していない。しかしながら、チーム間の差の開きはプレミアリーグ同様大きく、首位はレアル・マドリッドで勝ち点57、2位はレアル・ソシエダで勝ち点54、3位はデポルティーボ・ラコルーニャで勝ち点51、4位はバレンシアで勝ち点47、5位のセルタは勝ち点44であり、7位のアトレチコ・マドリッドと首位のレアル・マドリッドとの勝ち点の差は18と6試合分に相当する。
イタリアのセリエAの場合、18チームで行われ、シーズンの開幕が遅かったため、3月末の段階で第26節終了。この段階で首位は勝ち点57のユベントス、2位は勝ち点56のインテル・ミラノ、3位は勝ち点52のACミランとトップ3は僅差であるが、4位ラツィオ・ローマは大きく離れ勝ち点45である。連日日本のマスコミが大挙する5位のパルマの勝ち点は42であり、首位とは5試合分の勝ち点の差がある。
■バイエルン・ミュンヘンが独走するブンデスリーガ
ドイツのブンデスリーガも18チームで争われ、3月末の段階で第26節終了。首位のバイエルン・ミュンヘンが独走している。バイエルン・ミュンヘンの勝ち点は62、2位ボルシア・ドルトムントの勝ち点は47とすでに2位と5試合分の差が開いている。ところが、2位以下は勝ち点が接近しており、3位シュツットガルトの勝ち点46、4位ヘルタ・ベルリンの勝ち点は42、5位のハンブルガーSVの勝ち点は40、6位シャルケ04と7位ベルダー・ブレーメンの勝ち点は39となっている。本連載の第168回では最近の攻撃的なサッカーに魅せられて日本でブンデスリーガの人気が急上昇していると書いたが、優勝争いの行方が見えてしまった現在も同様なのであろうか。
■傑出したチームの不在と下位チームが健闘するフランスリーグ
このように上位が混戦となる理由は傑出したチームがないことの裏返しである。モナコの1試合あたりの平均勝ち点は1.77、他国のリーグの首位チームは全て2.1以上であり、ブンデスリーガを独走するバイエルン・ミュンヘンに至っては2.38であり、アウエーではまず引き分けを狙うという欧州のトップリーグにおいては驚異的な数字である。
しかし、逆に下位チームのレベルも高く、優勝争い、チャンピオンズリーグ出場権争い、UEFAカップ出場権争い、インタートトカップ出場権争い、1部残留争い、というリーグ戦における様々なレベルの争いが、文字通り紙一重で展開されているフランスリーグの醍醐味は尽きないのである。(続く)