第279回 秋の王者・モナコと逆転を狙うパリサンジェルマン

■4年ぶりの優勝を狙う「秋の王者」モナコ

 昨年8月にキックオフされたフランスリーグは年末年始の中断期間があけて再開した。フランスリーグは昨年最後の試合が19節、天候の事情などにより延期された試合もあるが、ちょうど年が変わる段階で全日程の半分を消化している。年末年始を迎える前半戦終了時に首位に立っているチームには「秋の王者」という称号が与えられる。今シーズン、秋の王者になったのはディディエ・デシャン率いるモナコである。1試合未消化のモナコは18試合行い、13勝3分2敗と言う成績の勝ち点45で、4年ぶりの優勝を狙う。2位は昨年、一昨年のリーグチャンピオンのリヨンで勝ち点38(18試合消化)、そしてリヨンと同じ勝ち点には19試合消化したパリサンジェルマンも名を連ねている。
 モナコは本連載のチャンピオンズリーグの項でも紹介しているが、モリエンテスなどの大型補強が功を奏し、第7節以降は首位をキープしている。また、8月16日の第3節から12月14日の第18節まで12勝3分と3月にわたって無敗を保っている。昨年最終戦である12月20日にレンヌで行われたレンヌ戦こそ0-1で敗れたが、レンヌは今シーズンホームでは無敗であり、レンヌのホームでの強さを認めるとともに、2位に勝ち点7をつけて折り返すモナコの強さもまた認めなくてはならないだろう。

■秋の王者の優勝確率と大逆転劇

 過去の統計を見ると「秋の王者」がそのまま優勝する確率はほぼ半分。年が明けてからはフランスカップ、リーグカップという国内のカップ戦にも参戦することになり、チームのコンディションに微妙に影響を与える。そして秋の王者が2位との勝ち点が7もあって折り返したケースは過去にわずか1回、1995-96シーズンのパリサンジェルマンだけである。また、かつては勝利の勝ち点が2だったことを考慮すると、現行の勝ち点7は2勝1分に相当することから2位との勝ち点が5ポイント差があったことは第二次世界大戦後は5回しかない。不思議なことにこの6回のうち、秋の王者が優勝したのは勝利の勝ち点が2だった時代の勝ち点5差のケースだけで、現行の勝ち点ルールで勝ち点差が7あった1995-96シーズンのパリサンジェルマンは2位オセールに逆転されて優勝を逃している。このシーズン、パリサンジェルマンは年末年始の中断後もオセールと差を広げ、一時は勝ち点で10ポイントの差をつけたものの、シーズン終盤に自滅する。第32節でのオセールとのアウエーでの直接対決でパリサンジェルマンは0-3と大敗し、一方のオセールは10試合負け無しというような好調な成績をおさめ、最終的にはパリサンジェルマンに勝ち点4差をつけてリーグ初制覇、そしてフランスカップも獲得するという二冠に輝いたのである。
 パリサンジェルマンは1988-89シーズンにも大逆転を喫している。年末年始の中断時に勝ち点6の差をつけられていた2位マルセイユは首位パリサンジェルマンを逆転し、5連覇のスタートとなった。

■上位陣をごぼう抜きしたミラクル・ランス

 記憶に新しいのが自国でのワールドカップ直前の1997-98シーズンである。前半戦を終了した段階でトップはロベール・ピレスを要するメッス。2位以下にはマルセイユ、モナコ、パリサンジェルマン、ボルドーと続き、優勝したランスは首位とは勝ち点6差の6位であった。パリサンジェルマンが大逆転を喫したと言っても相手は2位であり、首位のチームが調子を崩し、2位チームが好調を持続すれば逆転は可能であるが、このシーズンのように上位にひしめくチームをごぼう抜きするというのはミラクルである。このミラクルがシーズン直後に行われたワールドカップでの代表チームの優勝につながったとも考えられる。

■国内タイトルに専念できるパリサンジェルマンに注目

 さて、今年のモナコは再開後最初の試合でいきなり2位のリヨンと直接対決となった。この試合の結果が今シーズンの行方を決するといっても差し支えない。ホームチームのモナコが3-0と大勝し、首位との勝ち点差が二桁になった前年度リーグチャンピオンは3位に落ちる。リヨンに代わって2位に浮上したのは今まで2回の大逆転を喫したパリサンジェルマンである。モナコよりも試合数が1試合多いが、勝ち点の差は7。ほとんどの上位チームはチャンピオンズカップ(1位モナコ、3位リヨン)、UEFAカップ(4位オセール、5位ソショー、6位マルセイユ、8位ボルドー)でも勝ち残っており、国内タイトルだけに専念できるパリサンジェルマンは首位との勝ち点の差を実際よりも少なく感じているはずである。新年最初の試合であるフランスカップのトロワ戦を大逆転劇で飾ったパリサンジェルマンの30日のモナコとの直接対決に注目したい。(この項、終わり)

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