第386回 2つのダービーマッチ (1) イストル-マルセイユ戦

■10月にファンの関心を集めた2つのダービーマッチ

 10月にフランス代表はワールドカップ予選を2試合戦い、欧州チャンピオンズリーグはグループリーグの第3節、UEFAカップもグループリーグの第1節が行われ、代表は不本意な成績だったが、クラブの欧州での戦いはまずまず上々の内容であった。しかし、この10月にフランスのサッカーファンを最も興奮させたのはこれらの国際試合ではなく、月初に行われた国内リーグ戦の2つのダービーマッチであった。
 10月最初の週末に行われた第9節、ちょうどフランス代表の試合が9日(アイルランド戦)と13日(キプロス戦)に予定されているため、次のリーグ戦は2週間後となる。そのため、ファンの関心も高いが、その10試合の中でも注目の2つのカードが今回から紹介する2つのダービーマッチである。すなわち、土曜日のイストル-マルセイユ戦、そして日曜日のサンテエチエンヌ-リヨン戦である。

■今季初めて1部に昇格したイストル

 イストルは今季から1部に昇格したチームであり、マルセイユとイストルはわずか60キロメートルしか離れていない。マルセイユ同様、イストルもサッカー熱の高い町であるが、イストルの住民はそのほとんどがマルセイユのファンである。イストルのチームカラーは紫であり、イストルを代表するサポータークラブである「ウルトラ・ビオレ」のメンバーの7割はマルセイユのファンであると言われている。これはひとえに今までマルセイユとイストルがリーグ戦でライバルになったことはなく、なんとイストルの70年にわたるクラブの歴史の中でリーグ戦でマルセイユと対戦したことは今までに一度もなかったのである。また、地理的に近い両チームの間の人材交流もあり、その中でも有名なのがアラン・ボゴシアンである。マルセイユに所属していたボゴシアンは1992-93シーズンにマルセイユからイストルにレンタルされている。当時のマルセイユは数多くの有力選手を抱えており、マルセイユでは試合出場の可能性が少なかったボゴシアンはイストルで試合に出場し、8得点をあげる活躍でイストルのファンを歓喜させ、その後マルセイユに復帰してからステップアップし、ワールドカップの優勝メンバーにまで上り詰めた。

■唯一の公式戦での対決はフリアニの悲劇の直前

 イストルはリーグ戦でマルセイユはリーグ戦以外の公式戦で一度だけ対戦したことがある。それは12年前のこと、フランスカップのベスト16決定戦でのことである。この時はマルセイユが2-1とイストルを下し、マルセイユはその後も勝ち進んだが、準決勝のバスティア戦で仮設の観客席が崩壊し、多くの死傷者が出るという「フリアニの悲劇」に遭遇することになる。

■ニームでの初対決はマルセイユに軍配

 人口わずか4万人のイストルのホームスタジアムのベルナール・ベルダンの収容人数は1万7000人であるが、ビッグゲームの際は収容人数がより多いニームのレ・コスティエール競技場を使用している。今シーズンも9月11日のパリサンジェルマン戦はニームで試合を行った。イストルのファンだけではなく、多くのマルセイユのファンが宿敵パリサンジェルマンを倒すためにマルセイユからニームに駆けつけた。このようにマルセイユの文化圏にあるイストルが1部に昇格したことによって初めてリーグ戦で対戦する両チームであるが、イストルはパリサンジェルマン戦に続いて、ニームで試合を開催することになった。両チームのファンは戸惑いを感じながらもニームへと駆けつけた。
 マルセイユはここまでリーグ戦4勝1分3敗で6位と上位につけているが、イストルはまだ1部では勝利をあげることはできず、4分4敗の19位である。しかし、9月以降のイストルは強豪チーム相手に接戦を続けており、イストルは記念すべきリーグ初勝利を地元の巨人マルセイユからあげるかどうか、注目のダービーマッチとなった。ところが試合はマルセイユが貫禄を見せて、前半18分に先制点、そして後半立ち上がりにも追加点をあげて2-0で逃げ切り、初の対決はマルセイユに軍配が上がった。紫と黒のイストルファンも残念ではあったが、マルセイユの好調ぶりも内心喜んでいるのであろう。(続く)

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