第557回 2005-06フランスリーグ・フィナーレ(5) 圧倒的な強さで最終戦を飾ったリヨン
■モナコに敗れ今季初めてアウエーで敗戦
フランスリーグの終盤戦ということで上位争いを紹介してきたが、今季のフランスリーグはリヨンの圧倒的な強さに尽きるであろう。リヨンは5試合を残して優勝するというこれまでにないスピード優勝を決めたが、優勝を確定した翌日のアウエーのパリサンジェルマン戦では1-0と勝つ。そのパリサンジェルマン戦の1週間後、すなわちリーグカップ決勝の行われる週末に、延期されていた第24節のモナコ戦がモナコで行われた。この試合はリヨンは元気なく、2点を先行され、試合終了直前の後半ロスタイムに1点を返すのが精一杯、アウエーで初めての敗戦となってしまう。
■ライバルのサンテエチエンヌにホームで大勝、勝ち点新記録
その翌週はリヨンに戻っての試合となる。相手はローヌ・アルプ地方のライバルであるサンテエチエンヌ、フランスを代表するダービーといえばリヨンとサンテエチエンヌの戦いである。これまでの連覇記録を塗り替えられたサンテエチエンヌの意地、サンテエチエンヌの4連覇を更新した新王者リヨンの意地、すでに優勝が決まってしまった後であるが、ファンは例年以上の関心を持ってジェルラン競技場に集まった。
このライバル同士の戦いは新王者リヨンが実力の違いを見せ付けた。リヨンは立ち上がりから緑の軍団を圧倒し、開始早々にオウンゴールで先制したのを皮切りに、4-0とサンテエチエンヌに大差をつけて勝利する。これだけの得点差の勝利は実に1962年以来のこととなる。さらにこの勝利によってリヨンは勝ち点を81に伸ばす。これまでのフランスリーグでの最多勝ち点は昨年、一昨年のリヨン自身の79であり、リヨンは2試合を残して新記録を達成したのである。
そのリヨンは第37節でリールと戦うが、全快の本連載で紹介したとおり、0-4と大敗してしまう。リヨンは優勝を決めてからそれまでは一度も負けていないアウエーで3戦し、優勝決定翌日にパリサンジェルマンを2-1と下しただけで、モナコ、リール相手には全くいいところがなく負けてしまう。
■昇格したナンシー、ルマン、トロワがそろって残留
そして5月13日に最終戦を迎えた。3位以下の争いに注目が集まったが、リヨンのファンにとってはこれからシーズンオフを迎えるため、無敵のイレブンの姿を当分見ることはできなくなる。したがって最終戦のルマン戦は前売りでチケットが売り切れ、ジェルラン競技場は満員の観衆で膨れ上がる。相手のルマンは日本の松井大輔を擁することから日本の皆様もよくご存知であるが、今シーズン2部から1部へ昇格して来たチームである。昇格してから中位をキープし楽々と残留を決めた。今季1部に昇格してきたチームはナンシー、ルマン、トロワの3チームであるが、いずれも残留を決めている。
■最終戦では今季最多得点で有終の美を飾る
その中でも最も成績が良かったのがルマンである。そしてそのルマンのフレデリック・アンツ監督はシーズン前にリヨンが優勝しないであろうと予想していた数少ない監督である。その監督の名誉のためにもルマンは超満員のジェルラン競技場で一泡吹かせたいところである。そして先制点はルマンが奪った。15分にブラジル人のグラフィテが先制点、リヨンの誇るブラジルカルテットのジュニーニョ、カサパ、フレッド、クリスの前で個人技からゴールを決める。
このルマンの先制点がリヨンに火をつけた。19分にフレッドが同点ゴール、27分にクリスが勝ち越しゴール、30分にはシルバン・ビルトールが3点目、39分にはフレッドがゴール、そして43分にはジュニーニョが得意のFKでゴールネットを揺らす。前半を終了して5-1と言うスコアになる。後半もリヨンは攻撃の手を緩めず、76分にフレッドがハットトリック完成となるゴールを決め、終了間際にはシドニー・ゴブー、ポルトガル人のティアゴが得点を重ね、最終スコアは8-1となり、今季最多得点である。
リヨンは最終的に25勝9分4敗、勝ち点84、得点73、失点31、得失点差+42という成績となる。勝ち点84、ならびに2位(ボルドー)との勝ち点差15は新記録である。ちなみにかつて勝利の勝ち点が2であった時代の成績を換算しても、この成績を上回るのは、勝ち点については1959-60シーズンのランス(Stade de Reims)と1965-66シーズンのナント(当時の勝ち点で60、換算すると96)、2位との勝ち点差については1969-70シーズンのサンテエチエンヌ(マルセイユに対して11ポイント差、現在の勝ち点に換算すると18ポイント差)だけであり、リヨンの強さが際立つシーズンであった。(この項、終わり)