第722回 2006-07フランスリーグ・フィナーレ(5) トロワが降格、メッス、カーン、ストラスブールが昇格
■1部復帰の昨シーズンはかろうじて残留したトロワ
前回までの本連載では5月9日に行われた第36節で2試合を残して2部陥落が決定したナントとスダンを紹介したが、今回は残る2部陥落チームとなったトロワと1部に昇格した3チームを紹介しよう。
トロワはシャンパーニュ地方オーブ県にある。ローマ時代から栄え、貴金属の取引で用いられるトロイオンスの語源となったように古くからの商業都市である。サッカークラブのトロワもその歴史は古く、1900年にトロワ・スポーツ連合と言う名で誕生している。その後様々なクラブと合併を繰り返しながら、このクラブは発展してきた。ASトロワ・サビエンヌ時代の1954年に1部に初昇格する。しかし1シーズン限りで2部に降格してしまう。その後も合併を繰り返し、トロワ・オーブ時代の1970年代に1部に定着をしている。1970年代に5季1部でプレーしたが2部に転落、そして1986年にトロワ・オーブ・シャンパーニュとなり、これが現在のクラブの原型である。1999年には現在のクラブとして初めての1部昇格を果たし、2000年にはトロワ・オーブ・シャンパーニュ希望スポーツクラブと改名している。1999-2000シーズンは14位、2000-01シーズンと2001-02シーズンは連続して7位に入っている。2部に落ちたこともあったが、2005年には1部に復帰、降格ぎりぎりの17位で残留する。
■18位が指定席となった今シーズン、2部に陥落
復帰2シーズン目となる今季はちょうどクラブ発足20周年と言う記念すべき年であったが、苦しいシーズンとなった。序盤から勝つことができず、一時期は19位にもなったが、前半戦を終了した段階で18位、後半戦になっても最高の順位は15位であり、18位が指定席であった。
ナントとスダンが2部に降格することになった第36節を迎える段階で18位、17位のニースとの勝ち点差は3であった。第36節でレンヌと対戦し、常に先手を取りながらレンヌに追いつかれ、2-2のドローとなり、勝ち点を1しか上積みすることができなかった。17位のニースは前回の連載でも紹介したとおり、パリサンジェルマンに勝利し、勝ち点の差は5と開く。第37節、第38節と残された2節でニースが連敗、トロワが連勝という厳しい条件でトロワの1部残留が決まる。
第37節はフランスカップ決勝もあり第36節の10日後の5月19日に行われた。トロワはこの日、パリでパリサンジェルマンと対戦する。前半23分に主将のベンジャミン・ニベが先制点、このまま逃げ切るかと思われたが、後半に入って71分にPKを与え、パウレタが決めて同点、さらに79分にはパウレタに逆転ゴールを許す。トロワは復帰1シーズンで1部を去ることになったのである。
■リーグ王者のリヨンに勝利、最終節ではランスに勝利
2部に降格したトロワであるが、意外な勝利でリーグを盛り上げた。まずは2月4日に行われた第23節のリヨン戦である。ホームで行われたこの試合、ロスタイムに入っても両チーム無得点であったが、93分にニベが決勝ゴールを奪い、王者リヨンを1-0と下している。そして2部降格が決まった後の最終節である。本拠地オーブ競技場で失意のトロワのイレブンを1万3000人のファンが迎えた。相手は3位のランスである。3位までに入れば来期のチャンピオンズリーグに出場できることからランスは必勝を期したが、そのランスに対し、トロワは今季最高の試合展開で3-0と勝利したのである。
■伝統ある3チームが1部に復帰
一方、2部からの昇格チームはいずれも古い歴史を持つチームばかりである。2部優勝チームはメッスである。1932-33シーズンから始まったフランスリーグの創設メンバーであり、これまでに1部で56シーズンプレーしている古豪である。ロレーヌ地方にあり、1940年にはロレーヌ地方がドイツに編入され、フランスリーグから離れるとともに、当時のドイツはプロチームを禁止していたためにアマチュアチームとなるという数奇な運命を持つチームである。リーグ優勝経験はなく、1997-98シーズンの2位が最高である。そして昨季は1部で最下位となり2部に陥落したが、圧倒的な強さを誇り、1年で復帰した。
また、2位のカーンは今年がクラブ創立110周年、最終節で昇格を決め、3年ぶりの1部となる。3位のストラスブールは2006年がクラブ創立100周年であり、ジャン・ピエール・パパンを監督に迎え、5年ぶりの1部復帰となった。(続く)