第848回 2007-08フランスリーグ・フィナーレ(5) ジブリル・シセの活躍でマルセイユが3位に

■チャンピオンズリーグ出場をかけた3位争い

 今季の優勝争いはリヨンがオセールに勝利して7連覇を達成したが、ファンにとって次に注目を集めたのがナンシーとマルセイユの3位争いである。前半戦の主役のナンシーが最終節を迎える段階で3位(勝ち点60、得失点差+15)、前半戦苦戦しながら後半戦に盛り返してきたマルセイユ(59、+12)は勝ち点1の差で最終節に望みをかける。
 3位争いは単なる順位争いだけではなく来季のチャンピオンズリーグ出場をかけた争いである。真夏の予備戦から戦わなくてはならないが、チャンピオンズリーグとUEFAカップのステータスに大きな差ができた現在、チャンピオンズリーグへの出場権は大きな魅力である。
 ナンシーは7位のレンヌ、マルセイユが19位のストラスブールをそれぞれホームに迎える。ストラスブールについてはすでに2部陥落が決定しており、マルセイユにとってはやりやすい相手である。一方のナンシーの相手のレンヌは5位チームとは勝ち点1の差しかなく、この最終戦にUEFAカップ出場の望みを託す。
 前回の本連載で優勝争いを紹介したが、残留をかけて戦うランス相手にボルドーが苦戦したことが、リヨンの優勝を後押ししたことは事実である。同様にナンシーも、相手のレンヌがUEFAカップをかけて戦うことから、マルセイユに対して優位に立っているからといっても楽観できない。

■ストラスブールGKが負傷、長いロスタイムの間にマルセイユが逆転

 ナンシーとマルセイユでの試合はめまぐるしい点の取り合いとなった。まず、先に得点をあげたのはマルセイユである。6分にママドゥ・ニアンが今季18点目となるゴールをあげて、ナンシーに心理的圧力をかける。ところがナンシーも7分にクリス・マロンガが得点をあげ、ナンシーが優位に立つ。さらに10分にマルセイユは同点に持ち込まれ、19分には逆転されてしまう。ナンシーも32分にレンヌの同点ゴールを許すが、依然として優位な立場である。
 ところが、45分にストラスブールのベテランGKステファン・カサールが負傷し、長い治療時間の末に、GKが交代する。このカサールの負傷によって生じた長い前半のロスタイムの間に形成が逆転した。マルセイユ-ストラスブール戦の前半のロスタイムは実に6分、まず48分にジブリル・シセが同点ゴール、そして50分にはサミール・ナスリが逆転ゴールをあげる。このナスリのゴールは目の前の試合だけではなく、3位争いを行うナンシーとの順位をも逆転することになったのである。

■ベロドロームを沈黙させたプロ2試合目の19歳

 さらに後半になってナンシーはついに逆転される。48分にレンヌのベテラン選手のミカエル・パジスが逆転ゴールを上げる。ますますベロドロームのボルテージは上がる一方である。54分にナンシーが追いついたものの、マルセイユに対して優位に立ったわけではない。ナンシーの同点もつかの間であり、同点ゴールの2分後に再びパジスに勝ち越し点を決められてしまう。
 そのマルセイユのベロドロームを一瞬沈黙させたのが、72分のストラスブールの同点ゴールである。同点ゴールを上げたのはシモン・ゼンケ、19歳のナイジェリア人選手である。成績不振のストラスブールはこの若いゼンケを前節のカーン戦に初めてベンチ入りさせ、試合が1-3と勝負がついた段階でピッチに送り込む。わずか8分間のプレーがゼンケのプロとしてのデビュー戦であった。そして最終節のマルセイユ戦では満員の観衆の前で65分に出場、その7分後にプロとしての初ゴールを決め、満員の観衆を沈黙させたのである。ナンシーが負け、マルセイユが引き分けに終わると、ナンシーとマルセイユは同勝ち点で並ぶ。しかしながら、得失点差でナンシーが優位に立っており、ナンシーの負けが僅差ならば、マルセイユの3位はない。ナンシーが失点を重ねるか、マルセイユの勝利がマルセイユをチャンピオンズリーグへ導くのである。

■今季の欧州カップで大活躍のジブリル・シセが勝ち越し点

 ベロドロームの5万5000人の大観衆の願いは通じた。シセがこの日2点目となるゴールでついに勝ち越す。マルセイユはこのまま4-3で逃げ切り、ナンシーは同点に追いつくことができず、2-3で敗れ、勝ち点でマルセイユが上回り3位になる。
 チャンピオンズリーグのチケットを獲得した原動力はシセの2ゴールであるが、シセは今季もチャンピオンズリーグで6得点、UEFAカップで4得点と欧州カップの成績は好調であり、来季のマルセイユのチャンピオンズリーグでの活躍を期待したい。(続く)

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